悪質システム開発会社に気をつけろ!要求機能を満たさず逆に負荷増、開き直り高額請求

悪質システム開発会社に気をつけろ!要求機能を満たさず逆に負荷増、開き直り高額請求

  • Business Journal
  • 更新日:2015/07/05
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「Thinkstock」より「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、数多くの企業の裏側を知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない「あの企業の裏側」を暴きます。

2012年11月13日付本連載記事『何もせずに高額料金をふんだくる!? 詐欺SEO業者の手口』において、SEOコンサルティングを手掛ける一部の大手企業が、「SEO対策をするといっておきながら、やらない」という手口で詐欺行為を働いている実態を告発した。

特にIT・システム関連のビジネスにおいては、情報格差を土台にした詐欺が成立しやすい。技術知識を持たない発注者にとって、業者が提案する専門的な話はなんとなくすごそうに聞こえるものだし、自分たちの知識不足が露呈することを避けたいがために、あまり質問をしたがらない傾向にある。よくわからないまま業者側の説明を鵜呑みにしてしまう企業が多いのだ。

筆者のもとにも日々被害報告が寄せられているが、今回はその中で特徴的なケースを紹介しよう。もちろん、世の中の多くのウェブ制作事業者は真摯にビジネスに取り組んでいるのだが、中には顧客のこうむる迷惑など意に介さない、独善的な会社も存在する。そしてこのような被害は、いつあなたの身に起こるとも知れず、対岸の火事ではないことを認識されつつ読み進めていただきたい。

不十分なシステムしかつくれないウェブ制作会社

A社は、スポーツチームやサークルのユニフォームをオーダーメイドで製作するサービスを展開し、自社でもECサイトを運営している。

受発注や顧客管理、販売管理など、それぞれの場面で異なるソフトウェアやシステムを利用していたため、管理が煩雑という課題を抱えており、システムを一新することにした。それは11年秋のことだ。

A社の経営者であるB氏から相談を受け、最初にシステムのリニューアルを請け負ったのがビズソフトだ。同社は「ツカエルシリーズ」というブランドで企業向けソフトウェア(「ツカエル会計」「ツカエル青色申告」など)の制作・販売を行っているが、システム開発も受託している。

ビズソフトは、A社に対して「これまで複数のシステムで管理していた業務とデータを一元化するバックエンドシステムを開発しましょう」と提案し、「購入サイトと顧客管理、受注管理システムが連携する」旨を明記した提案書を提示した。A社の希望にも合致しており、「1年で完成させる」との発言にA社側は、「提案書通りの機能が実現し、システム管理が少しでも楽になるなら」と期待して発注した。契約金額は約1000万円。

そして約束の1年後、ビズソフトから成果物が納品された。しかし実際に運用してみると、打ち合わせの際に要求していた機能の7割程度しか実装しておらず、業務を一元管理できないことが判明し、従前のシステムを併用せざるを得なかった。

提案書に記載してあるにもかかわらず、実装されていない機能は次の通りだ。

・過去の注文データを取り込めない…リピート客が「以前作成したユニフォームと同じデザインで注文したい」と希望しても対応できない

・発注書の編集ができない…顧客ごとに仕様が異なるオーダーメイド商品のため、細かい指示入れが必要だが、新システムには発注書の編集機能がなく指示入れができない

・ユニフォーム以外の商品管理ができない…ソックス、Tシャツ、ポロシャツなど、ユニフォーム以外の商品管理ができない

・掛け売り管理ができない…卸売などの顧客管理ができない

確認したところビズソフトは、ECサイトが運営するパッケージシステムを開発したことはあったが、A社のようにオーダーメイドに近い、オプションが豊富な注文形式のシステム開発については充分なノウハウを持ち合わせていなかった。

開き直るビズソフト

残り3割程度とはいえ、使えないシステムでは業務が回らないため、A社は代替システムを使用せざるを得ず、想定外の負担を強いられる事態となった。つまり、ビズソフトは当初の提案内容を満たしておらず、債務不履行といえる。

A社はビズソフト側に即時対応を依頼した。システムが使いものにならず、しかもそのシステムに対しても保守運用費が発生しているのだ。ビズソフト側から謝罪やシステム改修ができるまでの対応があるものと期待したが、それは見事に打ち砕かれた。

ビズソフト担当者からの返答メールには、このように書かれていた。

「当初から、対応できない旨の共有がなされていた」 「当社が対応できると言っていたと主張するのであれば、その証拠を提示してほしい」

B氏は、ビズソフトの開き直りとも取れる対応に憤慨した。実際に、プロジェクト当初の打ち合わせ時点で対応できないという話が出たことはなく、ビズソフトがA社に提出した提案書にも「希望の機能はすべて対応できる」旨が明記されている。「対応できない機能がある」とは、その可能性も含めて一言も書かれていない。

B氏は憤りを隠さず、次のように語る。

「私たちは、ビズソフトの当時の経営者と細かく打ち合わせし、それに基づいて見積もりをしてもらって発注しています。私たちが要求した機能は当然すべて盛り込まれているものと期待しているわけだし、何かしらの制限事項や対応できない部分があると最初からわかっていれば、そもそも発注しませんでした。それなのに、『最初から対応できないと言っていた』と言うのは悪質です」

A社はビズソフトに対して引き続き対処を要求しているが、交渉は進展していない。

さらに追い討ちをかける電警

A社の窮状に際し、救いの手を差し伸べてきたのが電警だ。B氏は、自社に勤務していたスタッフの紹介で電警の経営者N氏と引き合わされた。電警は、A社とビズソフトのプロジェクトが膠着状態になり始めた頃から、A社側のプロジェクトメンバーとして打ち合わせに参加するようになっていた。

ちなみに電警の主力事業は、インターネットのセキュリティや不正対策に関するコンサルティングとシステム開発である。同社のウェブサイトには次のような文言が並ぶ。

「業務範囲は上流から下流まで…弊社の業務範囲はコンサルティング領域だけでなく、実業務の請負、特殊業務を行う人材の派遣、データ分析、システム設計開発など、ニーズに合わせた組み合わせが可能です」

「実体験に基づく提案…弊社からのご提案に汎用的なパッケージ商品はなく、顧客企業がお持ちの課題・問題に対して最適と思われる対策を、すべてゼロからオーダーメイドで企画しご提案しています」

N氏は、ビズソフトとの進展しない打ち合わせに参加した後で、B氏にこう声をかけた。

「ビズソフトは、のらりくらりと話を引き延ばそうとしていますが、結局のところ対応するのが難しいのでしょう。それでいてゼロから再度開発するのも面倒で、放り出したのです。弊社なら対応できますから、任せてください」

これまでの経緯を把握しているN氏からの提案は、オーダーメイドにも対応可能で、受発注情報の一元管理もでき、過去注文履歴も閲覧可能な、まさにA社の期待に沿えるものであった。B氏は電警に業務バックエンドシステム設計開発、および運用コンサルティングを任せることとし、13年5月に契約を結んだ。

しかし、結果的に電警はまったくシステム開発に対応できず、それどころか仕上がりはビズソフト以下だったのだ。

当初、電警側が提示した提案書では、「開発期間はおおむね8カ月程度」「6カ月を経過した時点で納品報告がなされる」旨の記載があった。A社はそのスピードに期待して発注。費用は約600万円であったが、電警側の「諸般の事情によって」という要求に従い、システム完成前の13年11月時点で全額支払った。

しかしながら、電警からは半年後の納品報告もなされず、8カ月目でシステムが完成することもなかった。発注から11カ月を経過した14年4月の段階で電警側から納期遅延の申し入れがあり、結局、機能の一部が納品されたのは14年7月だ。

取り急ぎシステムをテスト導入し、機能のうちの一部、「受注情報データの取り込み」については完了した。しかしそのわずか3カ月後、当該受注機能にエラーが発生し、現在に至るまで業務での使用ができない状態が続いている。

前述のとおり、A社としては単に顧客からの受注情報のみならず、営業管理、工場への発注、販売管理、入金管理まで多岐にわたる情報すべてをまとめるデータベースの作成を依頼していた。しかし、電警が納品したシステムは、単に受注情報をデータベース化しただけで、エクセルのデータと変わらなかった。その程度であればビズソフトのシステムでのほうがましで、この程度で約600万円という高額であれば発注するわけはない。

困惑したB氏は、N氏と会って状況を直接確認した。しかし、N氏の返事はにべもないものであった。

「全体の開発進捗は93%完了している」 「今回のシステム開発は、そもそも業務範囲を定めておらず、最低要件は完成している」

納品されたシステムは、N氏が当初提出した提案書類と見積書に記載されている内容と大きく食い違っており、93%という数字はなんの根拠にも基づかないものであったため、B氏はさらに追及するとN氏はこのように回答した。

「提案書記載の成果物は想定リストであり、すべて納品するという内容ではない」 「納品したシステムが動いていないのは、追加改修対応が発生しているため」

現在A社は弁護士を立てて電警に対して支払済代金の返還を求めている。

A社からの告発を受け、筆者はビズソフト、電警両社の経営者と関係者に取材を試みたが、期日までに返答を得ることはできなかった。 (文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)

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新田 龍(にった・りょう):株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業2社で事業企画、人事戦略、採用コンサルティング、キャリア支援に従事。現在はブラック企業や労働問題に関するコメンテーター、講演、執筆を展開。首都圏各大学でもキャリア正課講座を担当。

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