昨年に使用した施設の料金を1年以上未払い状態にしていたのは、津フィルハーモニー管弦楽団であり、その責任者の私、伊東玲である。

これについては、申し訳なく思っており、一刻も早く払いたいが、この時期は特にまとまったお金がない。しかしこれはこちらの問題であって、当然、どうしても支払うのが筋である。

私個人はこれまでにも思わぬ方面にご迷惑をおかけしていたことがあとからわかり、大変な失敗をしたと強く反省してきた経験がある。

それで、年の終わりには、必ず、「未払いのものはないか」と確認することにしている。けれども確認して、「大丈夫」と答えがあっても、年が明けてしばらくすると、請求書が来る。何度も経験し、毎年、厳しく確認しているが、どうしても繰り返す。

実際のところ、昨年の夏過ぎに、あまりにもこのようなことが続くので、うちの者も自主的に専門医のところへ行った。すると、意外にもある種の精神的な病気であることが判明した。

こんな身内の恥をさらすのも、県文のやり方も、仲間であるはずの津フィルハーモニー管弦楽団の多くのメンバーも、本当にひどいとしか思えないからである。何人かの心ある人たちは事情を察して心配し、実際に未払い分の補充をしてくれている。が、ほとんど8割の者たちは、無視したままである。これまではいったいなんだったのだろう。

一方で、期日までには「法的手段をとる」と担当のNは言い、私の実印をうちの者に押させた。その写しを持っている。

このやり方、裁判になったら、どうなのだろうか。

先週、いきなり県文から電話がかかってきた。未払いをすぐに払えとの連絡であった。そのあと再び電話があった。

実印を持って来い、と言う内容であった。しかも、私本人ではなく、うちの者、つまり、代理でよい、とのことで、急ぎだからすぐに来い、と言われたそうだ。

私はよくわからなかったが、うちの者は、あわてて私の実印を持って県文に行った。精神的な病気があるので、一つのことで追いつめられると行動の制御が効かなくなる。

私は飛び出たうちの者に、せめて、実印を押した文書の写しをもらって来い、とだけ言うのが精いっぱいであった。それほど急なことであった。

うちの者は血相を変えて飛んでゆき、相手が「やさしいかった」とかの理由で、実印を押して帰ってきた。

実印というのはふつうは本人が押すべきものではないのか。私は押していない。うちの者が勝手に持ち出して勝手に押してきたのである。

それを命じたのは県文の担当者である。

今からこれをする、と言って立ち上がって、別のことを思いついたら本来の目的を忘れてしまう、ということは、ふつうの人間でも有り得るが、それが頻繁になったり、重要なことになったりすると、疲れや性格やクセやうっかりミスとは言えなくなる。

実際に、専門医からは、診断の結果、ある病名を告げられて治療中なのである。

それを相手にうまく説明できれば、こんなことにはならない。それが一つの病気であるとわかっていたなら、この数年間にわたって、相手の言いなりになって湯水のようにお金を出していない。私が大学を辞めた大きな理由の一つが、実はこれであって、家庭が何かおかしな状態になっていると感じてきたからである。

ただし、最初は性格や資質の問題であると考えて、家庭を立て直すために在宅の仕事を考え始めたのであるが、いっしょにいる時間が長くなればなるほど、尋常ではない状態が見えてくる。そしてとうとう夏過ぎたあたりで、本人から、一度病院に行ってみたいと言い出した。

名前は出さないが、県の医療担当者なら誰でも知っているような、その分野の権威的な専門医である。たぶん気のせいという診断だろうと私は思っていたが、その専門医からは、明らかな病気の状態である、という診断であった。

そのときは既に、家計は火の車で、病人や子どもたちをほって外に働きに行くわけにもいかず、家で様子を見ながら、仕事を考えるうちに時間がどんどん過ぎた。

世間は私が病気だと思っているかも知れないが、私は11年も前から主治医にしっかりと健診してもらっており、発作が起こったときの対処方法もうまくできるようになっている。確かに病気であったが、現在は、治癒状態、という診断を受けている。これもその道の専門医の診断である。

意外にも、私ではなくうちの者が病気であるということがわかり、それから毎日が大変で、だんだん外との交渉もなくなってきている。ただ、ある意味では呑気な病気で、身体は健康であるし、ふつうの日常生活はできる。

ただし、相手によって、ものすごく左右される。他人の言うことは、みんな正しいと信じてしまう。家で落ち着けと言ってもダメである。それでよくもめる。

大切な情報や資料をすぐになくす。一晩寝れば、もう忘れてしまている。半日や一時間で、その前に言っていたことと反対のことを言っていることもあるが、それを指摘しても、本人にはわからない。

私に余裕があればなんとでもなるが、まず生活面で追いつめられてしまったので、余裕がない。子どもたちの世話をするのも、大変だろうなとは思うが、あれこれ言うとうまくいかない。

そういうところへ、いきなり、私の実印を今すぐ持って来いと県文は言い、そのまま押させた。

「本人でなければいけないのではないか」と私は尋ねたが、「奥さんでよい」と県文の担当者が言ったそうである。最初からわかっていて代理で実印を押させたのだ。

さて、日が立つにつれて、だんだん不愉快になってくる。

だいたい私はそのときも、実印を私が取り出してうちの者に「よろしく」と言って渡したのではない。県文の指示に従って、うちの者が私の実印を勝手に持ち出して、家を飛び出たのである。

そうするように、県文の担当者が指示をし、実印を持って来させて押させた。

法的処置はを受けるのはやぶさかではないが、このやり方は、法的に問題ではないのだろうか。いくら家族とは言え、本人に無断で実印を持ち出したことも確認もせず、本人が読んでもいない文書に実印を押させる。

こういうことは、公的機関なら許されるのだろうか。本当にそうか。

私が親の実印を無断で持ち出して何かの契約をした場合、これは家族だから問題にならないということなのだろうか。たとえ親子であっても、無断で持ち出して押した場合は、犯罪行為ではないか。

今回は未払いの支払いであるから、もともとの非はこちらにある。それが病気のせいであろうがなんであろうが、未払いは未払いであり、また、払いたくても払えない状態になったのも、相手から要求されれば支払わねばならないと思い込んでいるから、何の相談もなく払い続けた結果、底をついたのである。

私が手にしたのは、使い果たした残骸だけであった。これが昨年の真相である。

もっと早くから気づいておればよかったし、何度かおかしなことがあったので、そのときに、私が家の会計を管理しておればよかったのである。が、それができないのも病気のせいであるとのことである。自分が持っていないと落ち着かないのだそうだ。そして自分が使わないと納得できないのだそうだ。

何もかもなくなってから、持たせた者が悪い、と身内に言われたが、そこまで家族を信用しない訳にもいかないだろう。結果がこうなったから、やっとこれではいけなかったのではないか、と言えるのがふつうの心情だろう。最初から、お前は信用できない、と取り上げるなどと、根拠もなしにできるはずがないし、ふつうならふつうの感覚があると思ってしまうだろう。

そういう者を相手に、代理でよいから実印をすぐに持ってきて押せ、というのはあまりにも惨い話である。それに、そういう者でなくても、代理でよいから押せ、というものが実印であるとするなら、それを言っている公的機関の人間は、実印というものをそのようなものと考えているという証になる。誰が押してもよいのだ。実印なら、法的に効力を持つ。

これでは、悪徳商法の営業マンではないか。

そのようなNという男が、現実に県文にいて、しかも「県庁からの指示だ」と言ったというのである。ここで、本人ではなく代理に実印を押させることを最初から強要したのは、県庁だ、ということになってしまった。県庁の責任者は誰か。知事である。

知事が、実印を代理に押させよ、と言ったことになる。担当者のNよ、こういうことでよいのだな。出るところへ出てきちんと説明するときに、いい加減なウソを言うなよ。

ということで、私は知事の命令によって、代理である家族に実印を勝手に持って行かれて、私の知らない文書に刻印させられた。そして、この内容を不履行にすれば、法的処置をする、と伝言された。伝言である。

文書の複写は見た。私の実印が押されたあとの複写である。私が押したのではない実印がそこに押されている。それで法的に成立するのか。知事よ。そういうことなんだな。

期日までに支払う努力はしている。だが間に合うかどうかはわからない。とにかくでたらめな家計のやりくりがずっと続いていたので、その事後処理が、いつまでたっても終わらない。払いたくても払えない請求書が山積みになっている。

やさしい業者もある。本当にありがたい。値引きしてくれたり、待ってくれたり、たいていは事情を説明すれば、緩和期間をくれるし、そうなるとこちらもなんとかせねばと優先順位を考える。

もちろんそうでないところも多い。それが当たり前である。

それにしても、今回は、一番驚いてあわてたのが、かわいそうなことにうちの者であった。県文が、突然に今までとは全く違う態度で、しかも電話をしてきてその日に、代理に実印を押させるということをした。私が行くべきだと思ったが、うちの者は自分の責任だと感じているので、私に行かせなかった。けれど持って行ったのは私の実印である。

昨日も確認したが、勝手に持ち出して押してきたのだ。押せばそれで済んだと思ってしまう、というのが病気である。押したら私が責任を負うことになる。

そして片方では、本当に申し訳ないと思いながら、本位に反して、この際は津府ぃハーモニーのメンバーに助けてもらうしかない、創立時のメンバーまでさかのぼって、全員に公平に、すこしずつ負担してもらいたいという文書を出した。

結果としては、ほとんど、無反応である。反応があっても、説明しろだの、明細書を出せだの、今になってごちゃごちゃと言う声しか聞こえない。

本当に、大変だろう、とか、これはよほどのことがあるのだろう、とか、察して出してくれた人は数名である。足りない。

県庁に手紙を書くか、県文に乗り込むか、あれこれ考えたが、公的機関、この場合は、知事になるが、知事が公文書のようなものに、本人でなくて代理でもよいから実印を押せ、というようなことを指示したというのなら、これは、これでよいのだろうか。

私は法律の専門家ではないので、さっぱりわからない。知事ならそういう指示もできるというのか。

県文のNは、うちの者が、担当者の印鑑や津フィルハーモニーの印鑑ではいけないのか、と尋ねたら、責任者の印鑑でなければならない、と答えたそうだ。責任者は確かに私である。

ならこの文書の責任者は誰か。同じ理屈で言えば、担当者でも担当部署でもなく、県庁の責任者である知事である。

知事の代理として、個人の実印を本人以外の人間に押すことを強要したことになるが、これはありか。

未払いを払えば終わり、という問題か。そうではないと思われる。それに、今のままでは払える見込みがないので、実印を押した文書内容を不履行ということで「法的処置」の対象になる。

そうなると、法律の専門家が登場することになる。未払いによる罰則は受けなければならないと覚悟している。それは当たり前だ。そこから逃げようとは思わない。

ただし、意図的に本人以外の者に緊急に実印を押させた、という事実と、それは県庁の指示であると説明したことは、払ったからすむ、と言う問題ではなさそうである。

さて、どっちがよいか。未払いで法的に訴えられてそこで争えば、被告として裁判の費用は相手が払うことになる。しかも、代理に実印を押させる、ということが法廷でどう判断されるのか、これは見てみたい。

一応、払える状態になったなら払っておいて、それから、こちらが今回のやり方を法律家に相談して、担当者を通して知事のやったことが正統なことであるのかどうかを問い質すというのもありかと考える。

何度も言うが、私本人を呼びつけて、問題の所在をはっきりさせて、私に責任を取るように、私に実印を押させた、というのではないのである。

私の知らないところで実印が勝手に動いて勝手に押されて、複写だけはもらってきたのである。そうさせたのは、明らかに県文の担当者である。

組織は怖いところだから、権威を傘に適当なことをやっていると、誰がそんな指示をしたか、と担当者が責任を取らされて切られることもある。

でも、今回、県文のNは大丈夫だろう。県庁の指示だから、と明言しているのだから。県庁の誰かがそうさせたのだろう。Nはうちの者と同じく、言われるままにしただけのことだ。

そうなるとこれは、私と県知事の争いになる。面白いじゃないか。

世界の常識ではどうなんだろう。諸外国では、本人の署名というものが有効になるのだろうか。それを代理が代筆した場合、しかも行政の責任者がわかっていて代理に代筆させた場合、それでも世界の常識では、代筆も本人ということになるのだろうか。これはなさそうな気がする。

印鑑は日本の文化だ。しかし、外国で言えば、実印は本人の署名と同じものだ。

代理に押させたということは、Nやその周りにいた者はみんな見ている。私が押したのではない。日本は、そういうことを行政がやってもよい国か。三重県はそれが通る地域か。

もうおわかりのように、来年は伊勢志摩でなんとかとかいう会議がある。なんとかとかいう会議に集まる国の人々は、代理署名は有効、というだろうか。

これ、精神的苦痛は、相当のものがある。うちの者はその手の病気と診断されているし、私は私であの手の病気の既往歴がある。子どもたちも4人いる。毎日、重苦しい。音楽仲間との人間関係も、もうずたずたになっている。津フィルハーモニー管弦楽団は事実上これで解散になる。心労著しい。

知らなかったから許される。事情があるからこういうことになる。その事情を察するような顔をしながら、Nは代理に私の実印を押させた。これが事実。

この件で、最悪の事態が起こった場合は、誰が責任を取るのか。私の責任は免れないだろう。でも、実印を代理で押すことを強要された者が、未払いを余儀なくされることが判明したときに、どんな行動に出るか。私には予想もつかない。

知らんぞ。県文のNよ。うちの者が、伊勢湾に浮かんでいたら、新しいせんべいを作って売らなければならないな。何せんべいにするか。せんべいよりも団子の方がいいな。

実印団子。

誰が押しても法的に効力を発揮します。来年のなんとか会議までに開発して売り出そう。

この文章、各新聞社にファックスして送ってやろうかな。Nを実名にして。いやいや、Nなんてどうでもいい。最初から、県庁の指示なんだから、相手は知事だ。

とりあえずこの文書は別のファイルに保存してから公開することにする。