新たな安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会の参考人質疑が、那覇市で開かれた。

 米軍基地が集中する沖縄の人々は、この問題に、とりわけ複雑な視線を向けている。

 安倍政権のもとで、沖縄はいま、二重、三重の押しつけを受けているからだ。

 多くの沖縄県民の反対に耳を傾けようとしない名護市辺野古への新たな米軍基地建設、一内閣の強引な解釈改憲に基づく新たな安保法制、そして自民党の議員らによる沖縄県民や地元紙に対する侮辱的な発言……。

 これらは結局、同じ根をもつ問題ではないか――。野党推薦の稲嶺進・名護市長の指摘を、政府も、国会議員たちも重く受け止めるべきである。

 「法案が成立し、戦争に巻き込まれれば、米軍基地が集中する沖縄が『いの一番』に狙われる」「沖縄県民は70年前の戦争で、一番よく知っている。当時の日本軍部は本土防衛の防波堤、いわゆる『捨て石』として徹底抗戦を命じた」「もし有事となれば沖縄が真っ先に狙われ、70年前の二の舞いになる」

 野党推薦の大田昌秀・元沖縄県知事は「沖縄ほど憲法と縁のないところは全国どこにもない」と語った。

 沖縄は1952年に日本から切り離され、米軍の軍政下に引き続き置かれた。憲法が適用されたのは72年に日本に返還されてから。平和憲法にあこがれ、大切にしたい思いが強かったのに、いざ本土復帰したら「平和憲法ではなく、日米安保条約のもとに返されてしまった」。

 自民党議員らの侮辱発言について大田氏は「あまりにも沖縄を知らない」と嘆く。

 沖縄への無理解に対するいらだちに似た思いは、与党推薦の参考人も共通する。

 法案に賛成の立場の古謝景春(こじゃけいしゅん)・南城市長は「本土の方も、しっかり沖縄の基地問題を考えてほしい」と語る。

 いまや沖縄の経済は米軍基地に依存していない。中国をはじめ近隣国からの観光や物流の拠点として発展しつつある。

 古謝氏が「憲法9条は平和国家日本として守っていかねばならない」「平和外交の努力をもっとしっかりやってほしい」と求めたのは、多くの県民の思いと重なるはずだ。

 今回、与野党の国会議員たちが沖縄を訪ね、率直に意見を交わしたことは意味があった。

 参考人質疑は法案の衆院通過のための「儀式」ではない。沖縄の歴史と民意に思いを致し、議論を深めるための契機としなければならない。