(2015年7月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米国はEU諸国に対し、ギリシャ問題で妥協案を打ち出すよう要請してきたが、聞き入れられなかった (c) Can Stock Photo

 左派の悪魔学では、米国は力と権利を同一視する尊大な超大国だ。米国は他人の問題に立ち入り、自分の思うままにする。ギリシャ以上にこの見方が間違っている場所はない。ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)の陰謀論者はすべての木の後ろに新帝国主義者の策略を見て取るかもしれないが、現実は大きく異なる。

 オバマ政権も国際通貨基金(IMF)――米国の世界的な財力の手段――も、欧州の債権者を相手にギリシャを擁護する用意があった。

 だが、SYRIZA政権のふざけた態度は、ギリシャの友人をにっちもさっちもいかない立場に立たせた。

 米国は長らく欧州に対し、構造改革と引き換えにギリシャの債務の一部を減免するよう要請してきた。だが、努力は無駄だった。欧州については、米国は強くもなければ間違ってもおらず、弱くて正しかったのだ。

ギリシャの運命に対して米国が持つ利害

 米国はもっと大きな影響力を駆使することができるだろうか。その答えはイエスであるべきだ。米国はグレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)を阻止することに2つの重大な利害を持つ。

 1つ目は経済的な利害だ。ギリシャ経済の規模はオレゴン州程度しかなく、人口はオハイオ州と同じだが、全面的なデフォルト(債務不履行)は米国の主要貿易相手国の成長を弱める。グレグジットは米国の輸出の伸びを鈍らせるうえに、世界市場に波及する恐れもある。

 どのように、どの程度波及するかは誰も予想できない。だが、グレグジットの伝染のリスクは米連邦準備理事会(FRB)に重くのしかかる。FRBの正常な金利への回帰を巡る最大の疑問は、エーゲ海にあるのだ。