実際にはそんなに効率よくいかないだろう。技術者たちにしても、何十時間も働き続けることはできない。現実としてはこの倍の80時間以上閉じ込められる人も出てくるはずだ。これは大阪や他の大都市でもあまり変わらない。
その間に火災に巻き込まれる可能性もある。シャフトやワイヤが切れて、落下する事故も考えられる。
では、エレベーターを常に利用する住環境にある場合、どのような自衛策があるだろうか。
長時間閉じ込められて最も困るのは、水分補給とトイレ。常にペットボトルやポリ袋を持ち歩くようにすべきだ。考えられることはそれくらい。あとはエレベーターをなるべく使わないことだろうか。
エレベーターの利用が不可欠であるタワーマンションの場合、たとえ閉じ込められなくても困ったことになる。エレベーターが動かなければ自分が帰宅することや、あるいは水や食料確保のために外出するにも不自由だ。
ここに停電が加わればトイレも流せなくなる。1日や2日なら我慢できるかもしれないが、3日以上は辛い。常に非常用の水や食料を備えておかなければいけない。
このようにタワーマンションは、大地震に対して著しく脆弱だ。これはあまり認識されていない。だから、地震後は資産価値が急落することも想定される。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。