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【中高生のための国民の憲法講座 第100講】
憲法改正に向けての課題は? 百地章先生
しかし、戦後の西ドイツの歩みは、大変参考になります。
◆緊急権と9条2項
「緊急事態条項」は、当時、ドイツに駐留していた米英仏3国から「緊急権」を取り戻し、「主権」を回復するためでした。そして「軍隊の保持」と「緊急権」の導入によって、西ドイツは名実ともに「独立国家」となったわけです。
この点、わが国でも昭和27年の講和独立後、真っ先に唱えられたのが軍隊保持のための憲法9条改正でした。そして国会であと数議席というところまで行きながら、厳しすぎる憲法改正手続きの壁に阻まれ、実現できませんでした。
他方、現在、「緊急事態条項」は憲法改正の焦点の1つとなっています。ドイツの例から考えても、憲法第9条2項の改正と並んで、緊急事態条項の重要性がよく分かるのではないでしょうか。
戦後70年もたつのに、いまだに憲法改正ができない日本とドイツが異なるのは、真の「主権と独立」を回復するためのスピードだけではありません。ドイツでは、軍隊の保持や緊急権といった重要な憲法改正に際しては、保守党のキリスト教民主・社会同盟と社会民主党という二大政党が協力したり、大連立内閣を組むことによって、国家的大事業を成し遂げてきたことです。