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【中高生のための国民の憲法講座】
第96講 自国の姿をイメージできるか 長尾一紘先生
戦後の日本人は、自国の姿について明確なイメージを持ちえなくなっているようです。その原因が日本国憲法制定の特殊な事情にあるということについては、前回説明しました。
今回はもう一つの原因をみることにしたいと思います。
◆国家相対化論について
冷戦の終結後、ヒト、モノ、カネの国境を越えた動きが活発になり、「グローバリゼーション」が語られるようになりました。
西側陣営は、政治的には民主主義を、経済的には市場原理を基礎にしていました。したがって、冷戦の終結後においては、民主主義と市場原理が一元的に世界を支配するようになると思われていました。そして、このような楽観主義はエスカレートして「国家の役割はしだいに小さなものになっていく」との主張もなされるようになりました。国家相対化論が主張されるようになったのです。
日本においては、これがさらにエスカレートして「地球市民論」が主張されるようになりました。その論者はつぎのようにいいます。
外国人も日本国民も同じく「地球市民」だ。したがって、参政権も平等に与えるべきだ。地方選挙権だけではなく国政選挙権も外国人に与えるべきだ。
このような主張の内容が憲法に違反することは明らかです。国民主権に反するからです。