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【中高生のための国民の憲法講座 第95講】
憲法で国家の姿が思い浮かぶか 長尾一紘先生
この憲法前文を文言どおりに解釈すれば、日本という国家は「文化的共同体」でもなく、「防衛共同体」でもない、というだけではなく、「罪の共同体」だということになってしまいます。このような立場から日本国の自画像を描くことは困難です。このような解釈は正しいといえるでしょうか。結論からいえば妥当ではないと思います。
「国家」というものが「文化的共同体」であり、「防衛共同体」であるということは、すべての独立国家に共通する属性とみることができます。日本国も独立国である以上、当然に、日本文化を保持するための「文化的共同体」であり、また、日本国民の安全保障のための「防衛共同体」であると考える必要があります。日本国を「罪の共同体」とみることにも問題があります。日本国が「罪の共同体」であるならば、アメリカをはじめ、ロシア、中国、イギリス、ドイツ、フランスなど、世界の主要国のほとんどが「罪の共同体」だということになってしまうでしょう。
日本国憲法は日本国を「普通の国」として描いているのです。独立後、60年以上を経た現在において占領軍の当時の思惑に従った解釈をする必要はまったくないのです。