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【中高生のための国民の憲法講座第94講】
現実離れの議論生む9条の制約 奥村文男先生
この度の安保法制の整備で、従来の問題点は相当改善されることになりますが、9条の制約は依然として強く残っていることになります。中国の軍備増強や北朝鮮の核武装化により、わが国を取り巻く安全保障の環境はますます厳しくなっております。尖閣諸島沖に中国の公船が来ない日はほとんどありません。国際社会の治安もテロ活動の頻発で大きく揺すぶられ、日本人が被害に巻き込まれるケースも増大しています。
しかし、憲法のテキストを開くと、相変わらず憲法9条解釈の中心を占めているのは、自衛戦争は認められるかという現実離れした論争であり、自衛隊に対する国民の評価とはかなりずれております。今私たちが真剣に考えなければならないことは、まず、わが国の平和と安全をどう今後とも維持していくのかということと、国際社会の安定と秩序の維持にどう関与していくのかということです。
現在、政府与党が安保法制の整備を急ぐのはこうした背景があります。法整備自体必要であり、望ましいことですが、政府の憲法解釈は集団的自衛権の解釈変更を除けば、基本的に従前の政府解釈を踏襲している以上、安保法制の整備にも限界があります。