聞き手・守真弓
2015年7月6日20時46分
メディアを威圧する発言が出席者から相次いだことで批判を招いた自民党議員の勉強会「文化芸術懇話会」。本来は、文化人や芸術家を自陣営に引き込むための会だったという。文化・芸術と政治の関係のあり方について、文化批評にも定評のある千葉雅也・立命館大学准教授(哲学・表象文化論)に聞いた。
「政策芸術」という言葉を聞いた瞬間にアウトだと思いました。芸術というのは多様性であって、国家に奉仕するものではない。ナチスが「退廃芸術」と呼んでモダンなものを排除して、保守的でわかりやすいものを推進したことを想起させるし、国がプロパガンダとして特定の価値観の芸術文化を推進するということは、歴史的にナシだというのが文化史の常識です。国民がそれを知らないとでも思って言っているのか、それとも政権の人が知らないのか。文化史の常識に抵抗したいのでしょう。
言わずもがなのことが言わずもがなでなくなっている。「政策芸術」などだめだといちいち言わなければいけないというヤボさにうんざりです。一方で、ヤボに批判することが必要であると同時に、斜めからおちょくることも大事なのではないか。せっかくだから、美術界も「政策芸術」を皮肉る企画をどんどんやったらいいでしょう。国立新美術館あたりで、国民的アイドルの像を3Dプリンターで作って蔡國強に爆破させる美術展とかね。
人は一定の時間がたつときわめて深刻なことも忘れてしまうので、文化史を語り継ぐことは重要ですね。(聞き手・守真弓)
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