安倍首相:ネットで安保説明 政府・与党に危機感
毎日新聞 2015年07月06日 21時44分(最終更新 07月06日 23時14分)
政府・与党内で、安全保障関連法案への国民の理解が進んでいないことに危機感が高まっている。安倍晋三首相は6日から、自民党のインターネット番組「カフェスタ」に生出演し説明を始めた。与党は最短で15日にも衆院平和安全法制特別委員会で採決する構えで、直前まで国民に説明する姿勢を印象づけようとしているようだ。
毎日新聞が4、5日に実施した全国世論調査では、安保関連法案の説明が「不十分」との回答が81%を占め、与党内には「このまま採決までいけば支持率がさらに下がる」との見方が強くある。
首相は6日の政府・与党連絡会議で、ネット番組について「素朴な疑問にわかりやすく答えるものにしたい」と意気込んだ。同日の番組では「今やっている法律は、いざという時のためのもの。作っておけば安心」などと説明。7、8、10、13日にも出演する。
首相出演は官邸が先月29日ごろに提案したという。党関係者は「採決までの日程が見えてきたころで、首相が説明して理解を求めたという形にしたかったのだろう」と解説する。異論を挟まれて裏目に出ないよう、党の番組を選んだとの見方もある。首相は政府・与党連絡会議で「厳しい3年3カ月間の野党生活を経験した。政権与党におごりや油断が生じれば国民の信頼は一瞬にして失われる」と述べ、引き締めた。
与党が描くのは最短で15日の特別委採決、16日の衆院通過。採決の目安となる審議時間80時間は既に超えており、13日予定の中央公聴会を終えると採決の環境が整う。自民党の佐藤勉国対委員長は「過去の安保審議と比べても十分な質疑時間が確保できている」と強調する。
ただ、法案の中身への国民の理解が進んでいるわけではない。各報道機関の世論調査では、政府が「十分に説明しているとは思わない」との回答が多数を占める。
憲法学者の「違憲」表明や自民党の若手勉強会による報道機関への圧力発言も重なり、内閣支持率も下落傾向にある。毎日新聞の世論調査では支持率と不支持率が逆転し、与党内では「一つの潮目になるのではないか」と懸念する声は少なくない。
野党は15日の採決に反対している。野党が対案の十分な審議時間を確保するよう求め、採決日程がずれ込む可能性がある。【影山哲也、加藤明子】