コメや麦など、田畑で作物を育てる「土地利用型農業」を強くするには、細切れの農地を集めて整え、大規模化を進めることが欠かせない。

 そのために発足したのが、都道府県ごとに置かれた農地中間管理機構である。農地の所有者と利用希望者の間に機構が入り、農地が有効に使われるよう動かしていく役割を果たす。

 政府の目標を達成するには、毎年度14万ヘクタールの農地の流動化が必要になる。ところが、機構の活動初年度だった14年度の実績は、全国の合計で貸借が2・9万ヘクタール、売買が0・7万ヘクタールの計3・6万ヘクタールにとどまった。

 機構は、もともと各県にあった法人を衣替えした。ビジネス感覚を備えた組織になったか。県主導の機構は農地に関する情報に精通する市町村と連携できているか。課題は多いが、まだ手付かずのテーマがある。

 遊休農地への課税の強化など、税制の見直しだ。例えば固定資産税では、農地は住宅地など他の用途と比べて税負担が低く抑えられている。そうした仕組みは、少なくとも農業をしていない土地では改めていくべきだ。

 農家の高齢化と後継ぎ不足は深刻で、耕作放棄地を含む遊休地は増える一方だ。先祖代々の土地への思いが強い農家は多く、売却はおろか賃貸にも二の足を踏む例が少なくない。

 かと思えば、道路やショッピングセンターなどの建設計画が持ち上がると、田畑をあっさり売却してしまう農家も目につく。転売で得られる利益への期待は根強いようだ。

 農業の適地を農地として使っていくことは、食料や飼料の多くを輸入に頼る日本の自給力を下支えするほか、景観の保全にもかかわる大切な課題だ。農地や関連施設に多くの税金を投じてきただけに、現状のまま手をこまぬいてはいられない。

 各県の機構が農地の借り受け希望を募ったところ、昨年9月末時点で約3万の個人や企業から23万ヘクタールに及ぶ応募があった。農業に可能性を認め、経営の拡大や新規参入を目指す動きはけっして小さくない。

 耕作希望が寄せられているのに応ぜず、かといって自らも農業を再開しない。まずはそんな農地への課税を強化してはどうか。機構などに農地を出せば税負担を軽くするといった仕組みもあっていい。

 農水省は昨年度にそうした税制改革を要望しており、与党が「総合的に検討する」と先送りした経緯がある。具体的な制度作りを始めるべきだ。