(ミシンの音)工房に響くミシンの音にぎやかな声。
13人の女性たちが切り盛りする小さな縫製工場。
工房で作られているのはあの人気キャラクターふなっしーの公式グッズ。
さらにこだわりの手仕事による製品作りで急成長中のファッションブランドミナペルホネンの小物製品の数々。
ここは東日本大震災で大きな被害を受けた港町ふるさと再生を目指して…。
(高橋さん)震災だから買ってもらうのではなく一つの商品としてきちんと仕上げようという事で…。
浜のかあちゃんたち。
地元に受け継がれる高い縫製技術で勝負に出た!いつまでも甘えてられないなあって感じがありますね。
妥協を許さないもの作りに立ち向かうのは…。
夫も驚くその心意気!私だってなんだっちゃ…。
目指すは縫製職人として一人前になる事。
ハハハハハ…。
思いはただ一つ。
どこに出しても恥ずかしくない立派な製品を作りたい。
『日本のチカラ』今週は東北の小さな縫製工場で夢を追いかける浜のかあちゃんたち。
その姿を見つめます。
東北は宮城県。
海沿いの小さな港町南三陸町歌津。
海からほど近い場所に縫製工場南三陸ミシン工房があります。
おはようございます。
朝9時エプロン姿の女性たちが工房に集まってきます。
地元南三陸町の女性たち13人。
一緒に工房を始めてから今年で3年目になります。
あれ?これで作ったや。
「がんばっぺし」でね…。
「がんばっぺし」で切ったら出来そうだ…。
これ1枚…。
(ミシンの音)
(一同の笑い声)スタッフが工房に入ったきっかけはボランティア団体が開催した「ミシンでお仕事プロジェクト」に参加した事が始まりでした。
その後ミシンで製品を作る仕事をしたいという人たちが集まり2013年3月に南三陸ミシン工房を立ち上げたのです。
震災の時に何が出来ないってやっぱり…自分が何もする事がなかった事ですごいうつ状態になっちゃうというか落ちちゃって「はあ…」ってなってた時にこのミシンのお仕事を声かけて頂いたのでこの工房の女性たちはちょっと変わった働き方をしています。
こちらのスタッフ三浦桂子さんは仮設住宅で93歳になる義理の母親の介護をしています。
家を空ける事が出来ないため仕事場はこの狭い台所。
家族を見守りながらミシンを踏む。
三浦さんにとっては理想的な環境だと言います。
ミシンがなかったら何も出来ないけどミシンでお金をもらえるっていう事は場所がちょっとのところでも出来たのでそれはすごく…。
稼げるんだな…というふうに思ったね実際に。
(スタッフ)そうですよね。
本当にこのスペースがあれば…。
港町南三陸町ならではのスタッフもいます。
工房で最も高い技術を持つといわれる本業は海の仕事漁師なんです。
(スタッフ)これはなんですか?海の町になぜ畠山さんのような縫製技術を持った人材がいるのでしょう?実は南三陸町は震災前から縫製工場が多い地域でした。
その歴史は江戸時代にさかのぼります。
南三陸町は仙台藩の養蚕業発祥の地であり昔から質のよい絹製品を生み出していた地域なのです。
ミシン工房のもの作りは地域の中で受け継がれてきた縫製技術に支えられているのです。
もの作りへの姿勢が最も表れるのが製品の仕上がりチェック。
例えばこのポケットティッシュケース。
ちょっと真っすぐくるように…。
角がほんの少しだけ飛び出しているのを発見。
すかさず…。
真っすぐに修正。
さらにこんなふうに曲がったタグも見逃しません。
全ての製品を一つ一つ厳しくチェックし時には縫い直しをして品質を保っているのです。
工房を束ねるリーダーの高橋かつ子さん。
ここまで徹底するのには理由があると言います。
ただただ縫えば最初の震災の時はそれでも買って頂けたんですね。
応援のために結構数は買って頂けたんですけど…。
それでは長く続かない。
震災だから買ってもらうのではなく一つの商品としてきちんと仕上げようという事でそれで検品を厳しくしていったんですね。
質のよい製品を作る事。
それがふるさとを再生させる唯一の方法だと考えているのです。
その証しがオリジナル商品に反映されています。
商品のタグには縫製を担当したスタッフの似顔絵と名前が記載されています。
それは製品一つ一つに責任を持つという工房の信念そのもの。
ネットやイベントで商品を購入した人たちからも多くの声が届いています。
「きれいに縫えてました」とか「きちんと揃ってる仕立てになってました」とかっていうはがきを頂くので…。
様々な経歴を持つ13人のスタッフは2つのチームに分かれて仕事をしています。
Aチームは縫製職人としての経験を持つベテラン3人。
ファッションブランドミナペルホネンのバッグなどより高度な技術で作り上げる製品を担当しています。
一方初心者や経験の浅いスタッフで編成されるBチームは手順がシンプルな製品を担当。
最高齢72歳の工房に入った時は全くの素人でした。
(洋子さん)こうやって持って…。
洋子さんにとってAチームが作る製品は憧れです。
いつか?洋子さんは震災前地元で鮮魚店を営んでいました。
津波で家もお店も無くし希望を失いかけた時この仕事に巡り合ったのです。
(洋子さん)橋渡るとここに道路あったんですね。
ここに道路あったんです。
そしてその辺に何か立ってるあの辺かもしれない。
なんかどこがどこだかわかんなくなってきた。
多分昼間だからわかんだけど夜だったら全然わかんないかもしれないね。
隣町志津川が佐々木さんのふるさと。
震災後は仮設住宅に身を寄せています。
(洋子さん)こんな狭い汚い部屋を…。
こういう事して手危ないって言われるのね。
以前は夫婦でお店を切り盛りしていました。
夫の長平さん。
今は魚などの行商で収入を得ています。
(スタッフ)これお店の?前の。
(長平さん)違う違う違う。
(洋子さん)やっとこういうの見つけて…。
(長平さん)前掛けまで流したっちゃ…。
前掛けまで紛失したから…。
長平さん洋子さんの新しい仕事をどう思っているのでしょう?頑張んなきゃ…頑張ってもらわなきゃまだ…。
(洋子さん)ハハハ…そういう事まで言うか…。
帰って来るのが6時半から7時…。
(スタッフ)いってらっしゃい。
夫を見送った後が洋子さんの仕事の時間です。
縫っているのは私みたいに年取った人がこういう仕事やってるのかなと思うとちょっと気が引ける時もあるんですけども…。
やっぱりミシンの前に座ってこういう縫いものをしてるとなんとなくその…ホッとするっていうか…。
張り合いがあるっていうか…。
1週間後洋子さんは250個を縫い上げ工房へ。
Aチームのベテランたちが仕上がりを細かくチェック。
すると…。
これさ糸調子悪い。
あれ…ほどかなくちゃなんない。
それは厳しい評価でした。
(高橋さん)ネーム忘れてたのがまず一つでしょ。
その他にこの真ん中がずれてたよね?こっちに上がったりそっちへいったりね。
それがもう駄目でしょ。
あとその…。
はじかれた理由の一つは縫い目の不良。
左が正しい縫い目右が不合格。
縫い目が浮いていてきちんと縫製されていません。
結果250個全てが作り直しになってしまいました。
なのに…。
翌日。
様子見がてら。
今配達行くのに…。
がっかりしました。
厳しい指摘をした高橋さん。
洋子さんは必ず乗り越えられると信じていました。
(高橋さん)やっぱり恨まれ役ですよね。
でもやらなかったら進歩ないものね。
だってこのまま「じゃあもう洋子さんはこれは無理だからやめましょう」ってなったら洋子さんはずっとそれが出来ないじゃないですか。
70過ぎた人が改めて新しい仕事を覚えるっていう事もないかなとは思うんですよね。
「嫌だもう無理です」ってなるまではお互いに頑張ろうってなってるんですけど…。
私もやっぱり実際に…実際に縫ってるところを見たりしないとわからない。
そうだよね。
だからしっかり理解しないと駄目なんだよね。
縫うのにさ…。
縫製のベテラン私たち縫製工場に入った時は先輩の縫ってるところを見て勉強しなさいって言われたもん。
先輩の技術を盗みなさいっつう感じかな。
なんちゃって。
少しこっち側に。
そしてこの…。
そこには縫製技術を一から勉強し直す洋子さんの姿がありました。
(ミシンの音)
(洋子さんの声)皆さんの仲間に入れられた限りは辞めるわけにいかないって…。
やっぱり最後までこの製品を直して持っていかなきゃなんない…かなって一人で言い聞かせて…ハハハ…。
(洋子さん)頑張んないと駄目かなって…。
(ミシンの音)数日後。
(洋子さん)おはようございます。
(高橋さん)ご苦労さま。
終わった?
(高橋さん・洋子さん)ハハハハ…。
洋子さんが作り直したポケットティッシュケース250個。
果たして製品チェックは…?これは合格?不合格?少しずつ…でも着実に上達している洋子さん。
どうにか依頼先に発送する事が出来ました。
んー…なんて言うのかな。
このミシンにすがって縫うと本当に気持ちが…。
「これが私の仕事だったんだ」って…。
(スタッフ)本当。
うん。
一方ベテランのAチーム。
人気ブランドミナペルホネンの縫製作業が進んでいました。
依頼を受けてから1年。
信頼を得るために懸命に取り組んできました。
直営店ピース。
ここに南三陸ミシン工房が縫製した商品が並んでいます。
被災地という表示はありません。
内側にミシン工房のタグだけ。
浜のかあちゃんたちの手仕事。
ここでは上質な商品として輝いています。
そんなある日。
工房はいつもと雰囲気が違っていました。
今日は大事なお客様を迎える特別な日。
ミナペルホネンのデザイナー皆川明さんがやって来たのです。
ブランド設立から20年。
生地のデザインから服の仕立てインテリアの製作まで手がけチームで日本の手仕事の美しさを追求するブランドとして注目を集めています。
訪問の目的は新工房の建設。
ミシン工房のスタッフによりよい環境で働いてもらいたいという理由からでした。
新しい工房が出来るに当たり…まだそれは11月ぐらいのようですけれどもそれまでにより安定的なお仕事を僕らもお願い出来るようにして…。
さらに工房全体のレベルアップを目指し新しい製品作りも依頼しました。
こういう仕事っていうのは気持ちを入れてやらなければいけないんで最初に来た時に縫ってる様子とかは…。
ミシンから離れた時の朗らかな感じとミシンに向かってる時の真剣な感じっていうのがすごく印象的でしたけれど…。
ここと出会ったという事をきちんと形にしていきたいなというほうが大きい理由でしょうかね。
この日は作業場が食卓に変身。
新鮮な地元の食材を使った心づくしの料理。
浜のかあちゃんたちのおもてなしです。
これは中を食べる…?はい。
どうでしょう?ハハハハ…そんな事ないんですよね。
なかなかなかなか皆さんに追いつけなくて泣きながら…。
新工房のテーマは喜びを感じながら誇りを持って仕事が出来る。
そんな空間作りです。
そのまなざしは小さな港町南三陸から広い世界に向かっています。
震災から5年目。
ふるさとに一日も早く活気を取り戻そうという人々の思いが形になろうとしています。
(拍手)
(高橋さん)夢はね私たちがこのまま長く続けられる事が一番の目標です。
ここの縫製はきちっとしてるよねってわかってもらえるように…。
どこに出しても恥ずかしくないような商品を作っていきたいとは思ってるんですけど…。
より高い縫製技術が求められる仕事。
大きな挑戦です。
洋子さんにとっても…。
理解するまでちょっと程遠いんだけどね。
がんばっぺし。
ハハハ…先輩について行く…。
こう…少しこういうふうにやったほうが…。
(洋子さん)これ縫ってこの製品が…みんなに使われてみんなが街の中を持って歩かれたらねすごくいいかなって…。
南三陸町ミシン工房の夢。
その思いは世界へ飛び立とうとしています。
2015/07/05(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本のチカラ[字]
宮城県南三陸町の小さな縫製工場…地元の女性13人だけで、ふなっしーの公式グッズや人気ブランドの製品を手がけています。最高齢はなんと72歳!夢と感動の物語です。
詳細情報
◇番組内容
震災がきっかけで設立された工房ですが、被災地の応援商品としてではなく、品質の良さを追求してきました。それこそが、ふるさとの再生に必要だと考えているからです。工房をリードするのは、震災前、縫製工場で働いていたスタッフたち。経験の浅いスタッフたちを根気強く指導しながら、工房全体のレベルアップを目指しています。番組では、最高齢72歳の女性が失敗を重ねながらも、技術の向上にひたすら突き進む姿を追いかけます。
◇番組内容2
ポケットティッシュケースを250個作り終えるまでの、涙と感動の物語…72歳にも関わらず最後まで諦めない心意気…それに応えるように工房の仲間たちは厳しくも温かく見守ります。被災地の浜の母ちゃんたちが、夢を諦めずに広い世界に向けて前進する姿…ついには難易度の高い人気ファッションブランドの製品作りを任されるようになるまでを描きます。小さな港町から生まれた工房が、広い世界へ羽ばたく第一歩、その記録です。
◇番組内容3
全国各地の「魅力あふれる産業」を通して、地域の歴史や文化・人々の英知や営みを学び、日本の技術力・地方創生への道・温かいコミュニティー、生きるヒントを描き出す、教育ドキュメンタリー番組。
◇ナレーション
石川太郎(東北放送アナウンサー)
◇音楽
高嶋ちさ子「ブライト・フューチャー」
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:東北放送
協力:文部科学省/中小企業基盤整備機構
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.minkyo.or.jp/
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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