今から50年ほど昔の台本です。
懐かしくないですか?その11ページに…。
M78星雲の宇宙人からその命を託されたハヤタ隊員…。
皆さん驚かないでくださいね。
『美の巨人たち』ですよ。
これが必殺技のスペシウム光線。
ウルトラマンの姿を日本で知らない人はいないでしょう。
では今回『美の巨人たち』で取り上げるわけは…。
実は彼こそひとつのアート作品であることを知る人は少ないと思うからです。
ひと言でいうなら美しい。
描いたのはあの番組の美術スタッフであり彫刻家成田亨です。
そして今日の作品は彼の手による彫刻。
ほらすごいでしょ。
この造形に秘められた彫刻家の溢れる思いとは何か…。
あ笑ってる…。
今日の作品は青森県青森市にあります。
お目当ての美術館へはおなじみのキャラクターたちが道案内をしてくれるんですよ。
あバルタン星人。
カネゴンもいる。
あウルトラマンだ。
彼らの案内に従って進むと青森県立美術館に到着します。
なぜあのウルトラマンが青森にいるのか。
理由は後ほど。
3体の彫刻が佇んでいます。
そのなかの1体が…。
今日の作品…。
高さおよそ40cm。
樹脂で作られた彫刻です。
私たちが知るウルトラマンの姿とはかなり印象が異なりどこか荒々しさを感じませんか?それでも均整のとれた肉体の美しさ。
何かをつかむかのように突き出された右腕。
右肩から左脚への流れるような体のラインは宇宙人といえども一個の生物であると主張しているかのようです。
そしておなじみの顔。
威圧しているのか?憂いているのか?それとも微笑みなのか?見る者の心を映すような深い表情。
そこにヒーローとアートの間に佇むウルトラマンの美があるのです。
あくまでも彫刻的な視点で制作をされた作品で彫刻家の手の痕跡といいますかマチエールですね。
実際この彫刻作品を見ると成田亨は新進気鋭の彫刻家であり当時美術界でも高い評価を受けていました。
彼がウルトラマンを生み出したのは36歳のとき。
間近で見ていた奥さんは…。
子供の番組だから…。
大人の番組よりもはるかに子供番組が大事だってことが本人の中にしっかりありましたのでね。
では当時の子供たちはどのようにしてその日を迎えたのか?本日はこの少年とともに…。
よろしくお願いします!あら!鈴木福くん?シュワッチ!あそうか!昭和の子供に変身した福くんは…。
もうあと10分だ急がなきゃ!ただいま!《昭和41年7月。
僕はご飯を食べるのも忘れてテレビにかじりついた》ちょっとススムご飯だよ!《この前まで夢中で見てた『ウルトラQ』が終わったのは残念だけど今度は怪獣をやっつけるヒーローが出てくるらしい。
しかもカラー放送だってんだけど僕んちのテレビはまだモノクロだ》ねぇお母ちゃんカラーテレビ買おうよ。
まだ映るだろ?チェッ!あ始まる!あれ?『ウルトラQ』のまま?うわっ!『ウルトラマン』?《僕はびっくらこいた。
テレビの中には今まで見たこともないヒーローがいたんだ》もう30分テレビに釘付けです。
ウルトラマンはなぜこれほどシンプルで美しい造形なのか。
その完成までには…。
えぇ?ほほう。
う〜んこれは。
果たしてヒントはこの2つ。
生前成田はこう語っていました。
さあ参りましょう星々の旅へ。
人々が空を見上げていた時代です。
日本は東京オリンピックの熱狂と興奮をそのままに高度経済成長の坂を駆けのぼっていきます。
そんな時代に彼は現れたのです。
遠い宇宙M78星雲の彼方から。
この頃子供たちの間で一大ブームとなった番組があります。
『ウルトラQ』は円谷プロ制作の本格テレビ特撮もの。
その制作現場に美術スタッフとして参加していたのが成田亨。
番組に登場する怪獣のデザインを担当していました。
ユニークで魅力的な彼らの姿はあるルールをもとに作られています。
それが…。
成田の言葉です。
この三原則を守りつついかに魅力的な怪獣を生み出すか。
キーワードは意外性と抽象化。
生物や物質絵画までも組み合わせ再構築することで新たなフォルムを作り出したのです。
例えばガラモン。
発想の原点は魚のコチです。
正面から見た口の形がおもしろくそこに愛嬌のある目と鼻を加えました。
お金を食べるカネゴンの頭はがま口。
お腹がぷっくり膨れているのは当時妊娠中だった奥様を見ての発想なんだとか。
会心の作と自負するケムール人はエジプト絵画のシンクロナイゼーションから。
1つの頭部に正面の顔と横顔が同居する摩訶不思議な姿です。
それが成田怪獣の大きな魅力だと思います。
《ビックリ仰天とはこのことだよ。
それまでのヒーローっていえば人間がマントに覆面をして拳銃をパンパン撃つだけだったもん》でもウルトラマンは違ったのね。
とにかくでっかかったんだ!何よりも大きく美しくそしてかっこよかったのです。
ウルトラマン。
そのシンプルな美にたどりつくまでは難関の連続でした。
最初のデザインです。
全身を鎧で覆ったような戦闘的な姿。
続いてのデザイン。
いまだ洗練とは言い難い姿です。
突破口はギリシャの哲学者プラトンの唱えた混沌であるカオスに対する秩序たるコスモスという概念です。
さまざまなパーツを合成する怪獣がカオスならヒーローは単純で美しいコスモスでなければならない。
そのコスモスとして生まれたのがこの姿です。
単純化を極めた頭部には光り輝く眼。
筋肉の流れに沿って引かれた赤いラインが生命感をみなぎらせています。
それはまさに究極の肉体。
ウルトラマンを演じることになる古谷敏さんの思い出は…。
顔が出ない俳優なんてのは俳優じゃないから僕は嫌だったんですけど成田さんは背が高くて痩せてて敏さんしかいないから。
口説きにかかって…。
古谷さんが扮したウルトラマンを見た成田は…。
僕が思ってたイメージと一緒だ!って。
そういうふうに言われて僕は感激した。
そんなときがありました。
そして放送が始まるや…。
フォッフォッフォッフォ!出たなバルタン星人!《僕たちはあっという間にウルトラマンの虜になった》やられた〜!さあ次は僕がウルトラマンな!ダメダメまだ俺がウルトラマン。
《みんなウルトラマン役をやりたがったけど…》キミは違ったの?だって怪獣もウルトラマンに負けないほどかっこよかったんだもん。
レッドキングはブロック状の体表を上にいくほど小さくすることでそびえ立つ巨大感を表現しました。
古代怪獣ゴモラは戦国武将黒田長政の兜からの発想。
みごとな角にアレンジしたのです。
ペスターは並べたヒトデにコウモリの顔。
2人で演じることで生まれたユニークな姿。
でも…。
《不思議だったのはウルトラマンが微笑んでいたこと。
どんな相手と戦ってもかすかに笑っているように僕には見えたんだ》そうこの微笑みにこそ成田亨の明確なイメージがあったのです。
弥勒菩薩像にもみられる古代ギリシャの彫刻を源流とした表現です。
成田はウルトラマンに使ったわけを…。
今日の作品『MANの立像』は成田自身の手による彫刻です。
ギリギリまで研ぎ澄まされた肉体表現。
力強い右腕。
アルカイック・スマイルの口もと。
ところがよく見てください。
何かが足りないと思いませんか?そうカラータイマーです。
あの胸に輝くパーツがなぜないのか?これこそが成田亨のウルトラマンに込めた想い。
今日の作品『ウルトラマン』放映終了後20年を経て制作された彫刻です。
荒々しく仕上げた顔。
彫刻家の指の形がそのまま刻まれた表面。
この立像こそ成田亨が歩んだ彫刻家とデザイナーという2つの道の結晶なのです。
成田亨は1929年兵庫県武庫川に生まれています。
その身に悲劇が起きたのはわずか8か月のとき。
赤く燃える輝きを美しいと思ったのでしょうか?生涯左手は不自由なまま。
このことが成田の作品にどこか優しさや切なさをまとわせたのかもしれません。
傷を負った少年を支えたのは絵でした。
師と仰いだ洋画家阿部合成の薫陶からは本物を描く力を学びました。
画家を目指し武蔵野美術大学に進むも立体的な造形に魅力を感じ彫刻の世界へ。
力強いフォルムは高い評価を受けます。
とはいえ彫刻だけで食べていくことはできません。
飛び込んだのが映像の世界。
そして円谷プロに招かれたのです。
スペシウム光線!《毎回ドキドキしちゃうよな〜。
でも…》お母ちゃんなんでウルトラマンはカラータイマー鳴る前にスペシウム光線撃たないのかな?知るもんかい。
そしたら楽勝なのに。
今日の作品『MANの立像』には毎週子供たちをハラハラさせたカラータイマーがありません。
いったいなぜ?演出を担当した樋口祐三さんは…。
カラータイマーっていうのは要するに制限時間のことですよね。
リミットがなければ何してもいいってことでもうウルトラマンが出てきたらこれで終わりっていうことになってしまうわけなんで。
そこで3分間っていうリミットを設けてサスペンスものには何だってそういうものはあるじゃないみたいな。
カラータイマーは演出上の意図として付け加えたものだったのです。
ウルトラマンは自分のデザインで完成しており手を加える余地はない。
輝きのない胸こそ彫刻家成田亨の誇り。
『ウルトラマン』の最終回です。
ウルトラマンありがとう。
ウルトラマンさようなら。
光の国に帰るんだ。
外に出たら見えるかな。
さようならウルトラマン!ウルトラマンは少年たちの前から去っていきました。
そして成田自身もまた帰る場所を求めていたのです。
円谷プロを去って3年後1971年に制作した彫刻です。
もう飛び立てないであろう硬い翼。
大地に刻まれた人面の窪み。
英知を失い滅んでしまった人類の化石です。
それは科学万能主義への疑問と当時の美術界への失望。
いったん決定したら迷いなく前へ進む人でした。
その名が再評価されたのは1980年代。
原動力となったのは『ウルトラマン』を見て育ったかつての子供たち。
円谷プロを離れたあとも成田の仕事は彼らの中に生き続けていたのです。
そして再び向き合ったのです。
純粋な彫刻としてのウルトラマンを作ろうと。
突き出された右手は何をつかんでいるのか。
肉体の美しさ。
ヒーローとしてのあり方。
そのすべてを凝縮させた姿。
口もとには薄い微笑みを浮かべて。
その美術館へは彼の描いたキャラクターたちが案内してくれます。
現在成田亨のデザインは芸術作品として青森県立美術館にて常設展示されています。
とこしえのヒーローであり不滅のアートです。
ウルトラマン遠い光の国M78星雲の彼方から。
成田亨作『MANの立像』。
その造形に夢と希望をのせて。
いつかは一戸建のマイホーム。
しかも便利な都心なら最高。
2015/07/04(土) 22:00〜22:30
テレビ大阪1
美の巨人たち 成田亨『MANの立像』ヒーローにしてアート!ウルトラマン誕生秘話[字]
毎回一つの作品にスポットを当て、そこに秘められたドラマや謎を探る美術エンターテインメント番組。今日は、懐かしの人気キャラクターSP第1弾!成田亨『MANの立像』
詳細情報
番組内容
人気キャラクターを芸術の視点でひも解く“懐かしの人気キャラクターSP”。今日は、誰もが知るヒーロー!ウルトラマンの彫刻作品、成田亨『MANの立像』。美術スタッフとしてウルトラマンを生み出し、新進気鋭の彫刻家としても評価が高かった成田。この彫刻は放送終了後20年を経て制作されました。なぜこれほどシンプルで美しい造形に辿り着いたのか。その答えは「プラトン」と「弥勒菩薩」にあり!?
番組内容の続き
また成田が生前語っていた「単純化した生命感」とは?大きく、美しく、かっこいい、芸術品としてのウルトラマン誕生秘話に迫ります。
ナレーター
小林薫
蒼井優
音楽
<オープニング&エンディングテーマ>
辻井伸行
ホームページ
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趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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