相棒傑作シリーズ一挙放送!!歴代“相棒”作品から厳選2本をお送りします!! 2015.07.04


(パソコンの起動音)
(女性の悲鳴)大丈夫ですか?大丈夫ですか?おい救急車!早く救急車!「今日午前8時過ぎ新宿の歩道橋の階段から通勤途中の会社員小倉健二さん40歳が転落し死亡しました」「死因は頭部を強打した事による脳挫傷で警察の調べによりますと小倉さんは誤って足を踏み外し階段を一気に転落した模様です」
(ドアガラスを叩く音)
(教授)日下くん。
日下くん寝てるの?
(教授)ああ…!
(パトカーのサイレン)
(伊丹憲一)殺しか?
(米沢守)あっ…。
(芹沢慶二)ご苦労さまです。
「ご苦労さま」という言葉は目上や年上に対して失礼に当たります。
といってそれに代わるいい言葉がないのが実情ですがあえて言うなら目上や年上には「お疲れさま」でしょうか。
絞殺ですな。
凶器ははっきりしませんが…。
まだ見つかってない?
(米沢)ええ今のところは。
ホトケさんここの先生か?理工学部の准教授の日下栄介さんです。
これ免許証です。

(杉下右京)おや?
(吉田一郎)しばらく。
あなたでしたか。
晩飯は?はい?晩飯これから?ええ。
俺にご馳走する気ある?喜んで。
(笛吹悦子)怒ってるの?
(悦子)ねえ。
(甲斐享)はぁ…。
勝手なまねすんなよ。
勝手なまねでもしないと前に進めないもん。
ちっとも紹介してくれないから。
親父は関係ない。
いや断られたら諦めるつもりだったけどちゃんと会ってくださるっておっしゃったから。
ね。
だからきちんと紹介して私の事。

(ピアノ)
(甲斐峯秋)すまない。
5分遅刻した。
初めまして笛吹と申します。
お電話では失礼致しました。
まあまあ堅苦しいあいさつはよそう。
座りなさい。
はい。
どうだ?最近は。
えっどうって?仕事だよ。
他に何をお前に聞くっていうんだ?プライベートはこうして充実してるようだな。
(携帯電話)失礼。
もしもし?「僕です」「もしよろしければ一緒に夕飯などどうかと思いましてね」「都合が悪ければ結構ですが花の里です」わかりました。
向かいます。
急用なんで…悪い。
享…。
どこへ行くんだ?仕事ですよ。
他にどこに行くっていうんですか?ちょっと…。
それでは現場の詳細を。
(伊丹)はい。
(伊丹)日下栄介。
凶器はいまだ発見されておりませんが首筋の鬱血形状および首に付着していたごくごくわずかな繊維痕から凶器はロープではないかと推察されます。
恐らくホシはガイシャが車に乗り込むのを待ち伏せしていて犯行に及んだのではないでしょうか。
(日下栄介)うぅ…あぁ…。
(伊丹)ガイシャは首に甲状軟骨が潰れるほどの強い圧迫を受け窒息死したと思われます。
どうも。
(月本幸子)いらっしゃいませ。
あれ?
(吉田)しばらく。
あっどうもその節は…。
えっ?いやぁ杉下さんがさご馳走してくださるっていうもんでね。
ああそうなんですか。
カイトくんも来ましたしそろそろお話し願えませんかね?えっ何が?あなたはそういう身なりをなさっていますが…。
どういう身なりよ?むやみに人に夕飯をたかるようなまねはなさらない。
つまりご馳走になる代わりに何かその対価となるようなものをお持ちのはずです。
違いますか?そして恐らくそれは我々にとって有益なものなのでしょう。
だからわざわざ現れた。
まあ…タダで教えてあげてもいいってなもんだけどね。
せっかくだから夕飯ご馳走になっちゃおうかなと思って。
ええ。
…で?カイトくんさ…。
はい。
ジグソーパズル好き?はい?俺は好きなんだよね。
ジグソーパズルに限らずなんかバラバラになったものを見ると無性に組み立てたくなっちゃうの。
元どおりにしたくなるというかね。
これ一種の癖というか…ひょっとしたら病気かもしれないね。
そうなんですか。
うん。
あっ…とりあえず俺ビールで。
ごめんなさいほったらかしで。
あっじゃあこちらもお代わりお願いします。
はいただ今。
で?えっ?うわぁすごくうまそうですね。
腕によりをかけてお作りしてます。
ありがとうございます。
だから一体何をお持ちなんですか?早く言ってくださいよ。
ええ早く言ってほしいですね。
うん早く。
早く…。
じゃあ早速…。
これなんだけどね…。
なんだ?この紙。
(吉田)新宿の歩道橋の脇のゴミ箱の中にあったの。
(吉田の声)銀色の折り紙みたいでなんかきれいでしょ。
ちょっと気になっちゃってね。
小倉健二…。
で回収してねぐらに持ち帰って修復を試みたってわけですよ。
ピース全部拾い集めたつもりが一部これ欠けちゃって悔しいったらないね。
普段ゴミ箱をあさってるんですか?そりゃあ俺にとっちゃゴミ箱は宝箱だからね。
何が出てくるかわくわくするっていうような…。
そんな事よりさこの小倉健二って人これ歩道橋の階段から落っこちて死んだ人でしょ?ええ。
ええ。
テレビでもねなんか足滑らせた事故だとか言ってたけど果たしてそうかな?名前に顔写真勤務先現住所。
おまけに1週間の行動パターンまで記されていますねぇ。
なんかにおわない?においますね。
におう。
においますね。
焦げ臭くない?焦げ臭い。
焦げ臭い。
焦げてますよ。
えっああ…いやぁ大変!なるほど。
単なる事故じゃないと思いません?確かに。
何者かが小倉健二さんを狙ってた感じしませんか?すなわち殺しですか?ええ。
可能性は大いにありますな。
ちなみにこれはいわゆるシークレットペーパーでしょうかね?シークレットペーパー?そう。
(コピー機の作動音)あっやはりそうですな。
ご覧のとおり複写の出来ない紙になってます。
すげえ。
わかりました。
とりあえず指紋を検出してみましょう。
よろしくお願いします。
あっこれ大学の准教授が殺されたってやつですよね?ええ。
捜査のほうは進んでいますか?今のところ有力な手がかりはなしですな。
シークレットペーパーか…。
普通の会社員の情報をシークレットペーパーに起こす。
普通じゃありませんね。
ええ。
(携帯電話)失礼。
はい。
(甲斐)「いいお嬢さんじゃないか」せっかくだからね食事をご一緒したよ。
「聡明で美人だ」あっいやそんな事はどうでもいい。
お前がどこの誰と所帯を持とうと俺は一切関知しない。
もっともお前も同じだろ。
どこの誰と一緒になろうと俺の許しなど必要ない。
そう思ってるんだろ?違うかね?そのとおりです。
それを聞いて安心したよ。
彼女にもそう伝えたものでね。
「あなたたちの好きになさいと」「これまでもそしてこれからも私は一切無関係だからと」話は以上だ。
あそこですね。
ええ。
ここから転落したんですね。
ええ。
監視カメラ。
ええ。
もっと端っこ。
あの…階段のところの映像ないっすか?
(映像技師)そこまでカバーされてませんね。
そっかぁ…。
あっストップ。
これ小倉健二さんですよね?あのここ拡大出来ます?ね。
間違いない。
ええ。
この階段の上が見たいんだけどなぁ…。
すみませんがもう一度最初からお願いします。
はい。
ちょっと止めてください。
(映像技師)はい。
この人拡大出来ますか?はい。
ブラッシュアップ出来ますか?この顔どこかで見た事ありませんか?この人…。
ええ。
(角田六郎)まあ天下の往来だからな。
誰がどこを歩こうと勝手だろう。
まあそうなんですけど…。
(角田)相次いで起こった殺人事件の被害者が2人よりにもよって同一時刻同一場所にいたとなると勝手だろじゃすまんか。
でしょ?東京のど真ん中ですよ。
そんな偶然あり得ない。
まあ一応一件は殺人と決まったわけじゃないですけどまだ。
殺人だよ。
もう決まりだ。
なんで?勘だ。
えっ?何しろ俺は冴え渡る勘を武器にここまでのし上がったんだ。
警部殿はどうだ?一応見解を聞いとこうか。
小倉健二さんの死亡が殺人によるものかどうかはいったん置いておくとしてこのおよそ偶然とは思えないニアミスについては大いに気になりますねぇ。
2人に何か接点が…。
ええ。
(携帯電話の振動音)おはようございます。
どうも。
どうも。
おはようございます。
これなんですけどもね…。
お二人の指紋と吉田一郎さんの指紋以外いくつか指紋が検出されましたがその中の一つがデータベース検索でヒットしました。
これです。
(米沢)社美彌子。
内閣情報調査室総務部門の主幹ですが本籍は警察庁ですな。
警察庁からの出向ですか…。
(米沢)ご存じのとおり我が国には情報機関と呼ばれるものがいくつもあります。
警察庁警備局外事情報部公安調査庁防衛省情報本部。
もちろん外務省も独自の情報収集活動を行ってますし。
そんな中で内閣情報調査室は日本政府の情報機関として存在し我が国の情報機関の代表という位置づけですがいかんせんトップをはじめ警察庁からの出向組が非常に多く霞が関では警察庁の出先機関と捉えられてますな。
そのために各省庁からの情報が集まりにくいとか。
(米沢)我が国はインテリジェンスも縦割りです。
だから国家安全保障会議が創設されたんですよね。
日本版のNSCってやつ。
(米沢)政府は今必死でインテリジェンス強化を図っているようですな。

(社美彌子)お待たせしてすみません。
こちらこそお忙しいところすみません。
杉下さんですね。
甲斐さん。
杉下と申します。
甲斐です。
社です。
早速ですが電話では話しづらい用件とはなんでしょうか?実はこれなんですけれども見覚えありますか?どこでこれを?実はそのレジュメにあなたの指紋がついていました。
ここに保管していたんですがありません。
ファイルごと。
ファイルごとというとこれと同様のものが束ねてあったという事ですか?ええ。
コピー不能の用紙だから現物を持ち出したんでしょうか?ここからファイルを持ち出せる人はどのぐらいいますか?室長をはじめ審議官参事官調査官分析官。
持ち出そうと思えば持ち出せる人は20人ほどいます。
(ため息)
(芹沢)横田さん。
横田小百合さんですね?
(横田小百合)はい。
ちょっとお伺いしたい事が。
どうぞ。
どうぞ。
あなた亡くなられた日下栄介准教授と親しい関係だったそうですね?我々も当てずっぽうで来てるわけじゃないんで無駄な抵抗はやめてくださいね。
(伊丹)どうしてわかったと思います?奥さんから聞いたんですよ。
奥さん何もかもご存じでしたよ。
親しい関係だったんでしょ?はい…。
いつから?去年です。
入学してすぐ…。
私疑われてるんですか?先生を殺したって。
あなただけを疑ってるわけじゃありませんから。
関係者全員を疑ってます。
だから殺害には無関係だっていう事を証明するためにも洗いざらいぶちまけちゃってください。
わかりました。
お金持ちだったから。
お金持ち?すごい美味しい。
(小百合の声)食事はいつも超がつくほど高級なお店だったし会う度に色々プレゼントしてくれて…。
私聞いたんです。
先生に直接。
大学の先生ってそんなに儲かるんですか?って。
そしたらなんて?先生笑って…。
(日下)僕にはね財布が2つあるんだよ。
ハハッ。
財布が2つ?
(伊丹)どういう意味?さあ…それ以上は何も。
大学准教授ってそれほど高給取りじゃないでしょ?
(伊丹)うんまあ何か割のいいバイトでもしてたのかな?預金通帳の入出金でももう一度洗い直してみますか?
(伊丹)ひょっとしたら隠し口座でも見つかるかもしれねえぞ。
(小百合)あの…。
ん?何?捜査の参考になるかどうかわからないんですけど…。
何?何?何?何?気がついた事があったら言ってみて。
私付き合い始めてしばらくした頃先生の家に行った事があるんです。
(伊丹)家に?大胆だね。
いやあの正確には家の近所なんですけど…。
どんな暮らししてるのか見たくなって…こっそり行ったんです。
そしたら…。
(小百合の声)先生んちに向かう途中の公園で先生の姿を見かけて…。

(伊丹)雑誌を渡して代わりに茶封筒を受け取ってた…。
はい。
会話も何もなく?はい。
私…見ました。
(小百合の声)先生が渡した雑誌の間にも茶封筒が挟まってたのを。
まるで映画で見たスパイのやり取りみたいでちょっと怖くなったのを覚えてます。
スパイねえ…。
(美彌子)彼はヤロポロク・アレンスキー。
ロシアンタイム誌の東京支局長を名乗って民間人として日本に滞在していましたが正体はロシアの諜報機関のエージェントです。
つまり対日工作員。
(美彌子)このヤロポロク・アレンスキーが先頃アメリカに亡命したんです。
なぜ亡命を?本国の彼の直属の上司が武器輸出に関わる大規模な汚職で捕まりその極東地区での担当者として彼の名前も挙がったようで…。
汚職の追及から逃れるためですか。
本人は身に覚えのない全くの濡れ衣であると主張しているようですがいずれにしても本国に帰れば処罰を受ける事は確実でもちろん日本にいても身の安全は確保出来ないという事で亡命に踏み切ったようですね。
なるほど。
その後アメリカのCIAから1通のリストが極秘裏に我々に送られてきました。
日本国内で彼に協力している人物のリストです。
いわゆる情報協力者ですね。
ヤロポロクの証言によるものです。
ふーんCIAから…。
我々内調は外国政府の情報機関の公式なカウンターパートですから日常的に情報交換を行っています。
(天野是清)何してんだ?レクチャーそこまで。
どちらさん?警視庁の杉下さんと甲斐さんです。
室長の天野です。
杉下です。
甲斐です。
天野です。
手短に事情を説明してくれ。
小倉健二が歩道橋の階段から転落して死亡した直後近くのゴミ箱からこれが発見されたそうです。
(天野)これは君が…。
(美彌子)ええ。
私が作成したものですがファイルごと消えていました。
なんだって?
(美彌子)誰かが持ち出したんだと思います。
レクチャーを続けても?ああよかろう。
送られてきたリストには7人の名前がありました。
7人?
(美彌子)小倉健二。
総合商社初芝交易勤務の商社マンです。
(女性の悲鳴)大丈夫ですか?
(美彌子)日下栄介。
慶明大学理工学部准教授。
2人には接点がありましたね。
ええ。
(美彌子)若島博文。
帝都新聞の政治部記者。
あっこれ上大塚で殺された新聞記者。
ええ。
以上3名はすでに死亡しています。
小倉健二が事故でないとなると3名とも殺害されたという事になりますね。
続いて生存している4名。
(美彌子)下山秀和。
ご存じかと思いますが与党民自党所属の参議院議員です。
(美彌子)伊勢光。
精密電子機器メーカー日本半導体技研の技術社員です。
(美彌子)矢部邦仁。
陸上自衛隊の自衛官。
佐々木宏。
東京都の職員。
以上です。
つまり何者かがリストアップされた7名を次々に殺しているという事ですか?まさかの連続殺人ですか。
残りの4人も当然狙われるって事っすよね?
(天野)彼らには個別に警告を出した。
はい?命を狙われてる恐れがあるので十分注意するようにと。
もっとも誰も取り合わなかったがね。
そりゃそうだ。
誰もそう簡単にロシアの工作員に情報を流していたなんて事は認めないよ。
公務員など特定の職業に就く者には情報漏えいを処罰する法律はあるが…。
(ため息)立件はハードルが高い。
ええ。
たとえ機密文書を持ち出したとしてもそこにマル秘の判が押してあるだけでは秘密漏えいにはなりませんからねぇ。
確かにそれが機密である事を立証しなければならない。
ああ。
実質秘主義ってやつだ。
やっかいだね。
本気でスパイ防止法でも作って包括的に取り締まれるようにでもしなければいつまでたっても日本はスパイ天国だよ。
背後にロシアの諜報員が絡んでいるとなれば我々も黙っているわけにはいかないですね。
(内村完爾)ならばあなた方公安に殺人犯が捕まえられますか?何?事実殺人が起こりしかもそれは連続殺人として継続中の事案なんですよ。
(内村)犯人確保を優先しないでどうします?
(内村)ここは邪魔立てしないで我々に任してもらいたい。
しかしですね…。
いいですか?お宅たちが下手な邪魔立てをして犯人を取り逃がすような事があった場合いや犯人を取り逃がすだけならともかくさらなる犠牲者が出たらあなたどうやって責任を取りますか?その首かけられますか?私は常にこの首をかけて仕事をしてますよ。
言い換えれば命懸けなんだ。
(内村)話は以上だ。
しばらくはおとなしくしていてもらいたい。
特命係のご両人〜。
どうも。
どうも。
相変わらずご活躍のご様子ですね。
はい?びっくり仰天です。
連続殺人になるとは夢にも思いませんでした。
ああ聞きましたか。
手口が3件とも全く違いますからねぇ。
(女性の悲鳴)あぁ…。
連続殺人を疑えというのは無理な相談ですよ。
ちなみに4件目は?次は誰なんです?警部殿の事だからもう目星は付いてるんじゃありません?フフフ…ご冗談を。
そりゃ残念。
まだ隠し球とかあるかと思って来てみたんですけどね。
あれ〜?合同捜査に切り替わりました?もちろんですよお坊ちゃま。
(舌打ち)警部殿!
(捜査員)お見えになった。
(中園照生)このヤロポロクの情報協力者は7名いるそうだがそのうちの3名はすでに死亡した。
(中園)そしてその3件が連続殺人であった事が判明したわけだ。
犯行の手口がそれぞれ異なっているために連続殺人には思い至らなかったがこうして事件の背景を知れば3件の手口が異なっている事も十分理解出来る。
恐らく何者かの指示によって動いていた犯人つまり実行犯が複数いるという事だ。
そしてここからが重要だがこの連続殺人はまだ終わってはいない。
なぜなら犯人のターゲットと考えられる人物がまだ4人残っているからだ。
(中園)その4人がこちらだ。
(中園)連続殺人。
それも無差別ではなく標的がはっきりしている連続殺人がいまだ終わってはいないという事は我々にとって非常に有利である。
言っている意味はわかるな?標的をおとりに使えるという事だ。
ありがとうございます。
今部長がおっしゃったとおりだ。
つまりすでに犯行を完遂して逃亡を図っている犯人を確保するよりも何倍も楽な仕事になるはずだ。
楽だからといって気を抜くな。
餌だけ取られて獲物を逃がしたんじゃ目も当てられん。
ありがとうございます。
今部長がおっしゃったとおりだ。
それから本案件の性格上公安がしゃしゃり出たがっているが邪魔はさせん。
重ね重ねありがとうございます。
とにかく心してかかれ!いいな?
(一同)はい!
(米沢)凶器はまだ発見されてませんが恐らく刃渡り15センチ以上のナイフで左脇腹上をひと突きされたようですな。
傷は肝臓にまで達してました。
出血多量による死亡です。
じゃあ刺されてからしばらくは息があった?ええ。
即死というわけではありません。
すぐに発見されればあるいは助かった可能性もなきにしもあらずというところでしょうか。
しかしほとんど人が通らない場所ですからね。
若島博文さんはどうしてそんな場所へ行ったのでしょうねぇ?さあそれはよくわかりません。
しかしなんの用もないのに入り込むような場所じゃありませんからね…。
はいあなた。

(伊丹)矢部某って自衛官だろ?
(芹沢)みたいですね。
(伊丹)しかも陸上自衛隊だろ?駐屯地にいなくていいのかよ?こんなとこに住んでて。
結婚とかすると駐屯地の外に住めます。
へえ…でも矢部は独身なんだろ?独身でも階級によっては外に住めます。
あっそう。
…ってかお前詳しいね。
実は…いとこが自衛隊にいるもんで。
へえ…フッそれはそれは。
日夜国防ご苦労さまって伝えといてくれよ。
しかし矢部もなまじ外に住んだりするからロシアに情報売ったりしちゃうんですかね?海外の諜報員だって誘惑しやすいですもんね。
フッ…国賊が。
あっあそこっすね。
ええ。
どうも。
ここですね。
ええ。
特に何もありませんね。
そうですね…。
君ならどんな用事でこういうところへ入りますか?いや普通は入らないでしょ。
暗いし。
つまり人目にはつきませんねぇ。
人殺しはしやすいかな。
ええ。
あっ!はい?急に催したら入るかな。
通りのすぐ向こうにコンビニがありますよ。
ああそうっすね。
いずれにしても若島さんが用を足した形跡はなかったようですしとどのつまりは誘われてここへ入った…そう考えるべきでしょうかねぇ。
誘われて…。
ええ。
犯人に?あるいは待ち合わせしていたとか。
犯人と。
進んで入るようなところではないとすると誘われたか待ち合わせたかそう考えるのが自然じゃありませんかねぇ。
なるほど。
という事は犯人とは顔見知りだった…。

(店員)いらっしゃいませ。
(店員)いらっしゃいませ。

(伊丹の舌打ち)
(舌打ち)何買ってんだよお前。
いえ小腹が…。
(芹沢)よいしょ。
いかがですか?まだどこの餌にも食いついてねえみたいだな。
標的がわかったんだからあと順番もわかると都合いいですけどね。
何言ってんだお前。
フフフフ…。
…ったく。
(ガラスの割れる音)お前ここに残ってろ!はい!
(ガラスの割れる音)
(捜査員)今の音は!?矢部の部屋だ!
(ドアを叩く音)
(伊丹)矢部さん!
(矢部邦仁)ううっ…ああ…。
おいっどうした?何があった?襲われた…。
(伊丹)襲われた?ああ…。
マジかよマジかよこの野郎。
(荒い息遣い)そっち!はい!
(芹沢)何事ですか?おう。
ここから誰か出てこなかったか?いや…誰も。
そんなバカな!コンビニから戻ったら部屋に潜んでた?はい。
鍵を閉めて出なかったんですか?近所ですから。
で帰宅したところ襲われたわけか。
ええ。
いきなりです。
犯人の顔は覚えてます?ええ。
こんな感じですか?ああ…もう少し眉毛が太くてつり上がってる感じでした。
はい。
どうも。
何かご用ですか?襲われたと聞いたものですからね。
だから?怪我は大丈夫ですか?はい。
これが犯人ですか?えっ…外国人?ええ。
あなたを襲ったのは外国人なんですか?そうです。
乱闘の末撃退なさったとか。
撃退なんて…。
さすがです。
だてに日頃から体を鍛えてるわけじゃありませんね。
この絵からは国籍まではわからないが恐らく状況からみてロシア人…あるいはそれに関係した人物である事が推察出来る。
どうも。
こいつだ。
えっ?外国人か…。
ええ。
ロシアが送り込んだ刺客って事か?捜査本部はその線も視野に入れて対処をしていくようですな。
しかし…ロシアが刺客に素人を送り込みますかねぇ?
(角田)ああ?もし本当にロシアが絡んでいるのであれば当然プロの刺客をよこすはずです。
そしてプロならば標的を仕留め損ねる事はまずありませんよ。
たとえ相手が鍛え抜かれた自衛官だとしても。
つまり…。
ええ。
似顔絵が明らかに外国人でしたからねぇ。
ロシアの関与を疑うのは致し方ありませんがそこにこだわりすぎるのはよくないと思いますねぇ。
ねえ。
うん。
来た。

(携帯電話)
(伊勢光)もしもし。
あっ!
(エンジンをかける音)
(発車ベル)
(捜査員たち)ああっ!
(中園)まかれるとはどういう事だ?
(4人)すみません。
突然降りるとは思わなかったもんで。
(警報音)報告しろ!
(捜査員)はい!
(捜査員)参事官!ああ。
中園だ。
ああご苦労。
何?まかれた!?早朝に車で出発したんでついてきたんですが踏切で振り切られました。
なんなんだ一体?
(携帯電話)もしもし。
中園だ。
様子はどうだ?現在議員宿舎を出た車を追跡中です。
注意を怠るな。
今こちらでは予想外の事態に見舞われてる。
すでに2人にまかれた。
まかれた?まかれたってなんですか?
(パトカーのサイレン)ちょっとすみません。
(運転士)なんですか?あれ?下山議員さんは?乗ってませんよ。
なんだって?全員姿を消したというのか?はあ。
全て尾行を振り切られました。
なぜだ?わかりません。
どこ行ったんだ?わかりません。
何かわかる事はないのか?わかりません。
何!?あっすみません。
勢いで…。
どこまで行くんでしょうねぇ?ええ。
あっ!僕の勘違いだといいんですけど気づかれたんじゃありません?どうやら君の勘違いではなさそうですねぇ。
おやこんな場所で奇遇ですねぇ。
おはようございます。
おはようございます。
おはようございます。
おはようございます。
どちらまで?その質問そっくりそのままお返しします。
実は例の4名がどこかへ行ってしまったそうなんですよ。
生き残りの4人ですか。
その言い方…。
行き先をご存じないかと思いましてね。
私が?どうして?あっそうそう。
なぜ我々がつけているのがわかりました?先日お見えになった時車をお見かけしました。
特徴あるカラーリングの車ですからね。
ああなるほど。
おしゃれだと思いますよ。
それはどうも。
全く私の趣味じゃありませんけど。
ああ恐縮です。
どうもありがとう。
どういたしまして。
彼らは示し合わせたようにマークしていた捜査員をまいてどこかへ行ってしまったそうなんです。
誰かの指示でもなければそんな事は起こらないでしょうからねぇ。
私が指示したと?全員が捜査員をまいてますからねぇ。
はい?つまり彼らは警察の監視がついている事を知っていた。
なおかつ彼らに警察の監視を伝えそれを振り切る方法を指示出来る関係者となると非常に限られてきますからねぇ。
社さんあなたと室長の天野さん2人ぐらいしか思いつきませんでした。
あなた方が指示したのではありませんか?おっしゃるとおり警察の監視がついている事を伝えました。
けれどそれは命を狙われているあなた方を警護するためではないと。
あくまでも目的は犯人検挙です。
いわばあなたは釣餌。
獲物がかかるのを待っているんですよ。
仮に不審人物があなたの前に現れたからといって捜査員は直ちに動きません。
あなたが襲われて初めて動く。
その理屈わかりますよね?犯人は現行犯逮捕されるでしょう。
でも伊勢さん…。
(美彌子)「襲われたあなたに命のある保証はどこにもありません」どうすればいいんですか?とりあえず安全な場所を提供しますから警察をまいてそこに避難してください。
まくって…どうやって?方法は教えます。
それほど難しくありません。
警察もまさかあなたにまかれるとは夢にも思っていないでしょうから。
なるほど。
そうやって4人を誘導したわけですか。
で今4人はどこに避難してるんですか?
(天野)みんな同志ではあるが初対面だろう?自己紹介でもしたらどうだ?
(ため息)
(天野)ここは先生から口火を切ったら?
(下山秀和)フフ…。
よろしい。
では僕が代わりに紹介しよう。
(天野)まずこちら。
下山秀和。
付けられていたコードネームはヴィローナ。
ロシア語でカラスという意味だ。
それからこちらは伊勢光。
コードネームはジャーバラナク。
ヒバリだね。
ああ…。
そしてそちらが…。
佐々木宏。
コードネームはヴァラビエーイ。
スズメだ。
そして矢部邦仁。
コードネームはラースタチカ。
ツバメだね。
同志だろ君たちは!ハハハ…。
なるほどねぇ。
そういえば杉下さん…。
はい?花の里というお店に毎晩のように通っていらっしゃるそうで。
ええそれが?美人女将だそうですね。
月本幸子さん。
月本幸子さんには前科がありますね。
それが何か?ご存じでしたか。
もちろん。
彼女とはその事件をきっかけに知り合いましたから。
ご存じでしたなら結構です。
もしご存じなければお知らせしておくべきかと思って言ったまでですから。
それはどうもご親切に。
どういたしまして。
君のお父さんて堅物ですよね?はい?ここだけの話にしてください。
何度かお目にかかったけれどすごく緊張する。
仲悪いって本当ですか?なんでもよくご存じなんですね。
彼女の事も把握していますよ。
笛吹悦子さん。
日本国際航空のCAでしょ?ご結婚の予定は?決まったらご招待しますよ。
それは結構です。
ガスはたっぷりですか?はい?少し遠出になります。
ご心配なく。
じゃあついて来てください。
どう?似合う?あ…。
とてもお似合いですよ。
あっありがとう。
どう?うんすげえきれいだよ。
(享の声)やめるって結婚を?
(悦子)うん。
どうして?ちゃんと祝福してもらいたいの。
2人で好き勝手にどうぞなんて悲しすぎるじゃない。
結婚は二人だけの問題じゃないの。
いや仕方ないだろ。
親父はああなんだから。
享のほうが折れればいいでしょ。
え?仲直りしてお父さんと。
いやそれは無理だよ。
無理無理無理…無理なの。
さすがというかなんというか…。
はい?社美彌子。
プライベートな情報までしっかり把握されてましたね。
我々の情報を急きょ収集したのでしょうかねぇ。
「蛇の道は蛇」とはいえいささか薄気味悪いですねぇ。
プライベート情報までいとも簡単につかまれてしまうのは。
どうしてお二人が?すっかりお見通しだったようです。
なかなか鼻が利きますねぇ。
恐れ入ります。
特命係か…。
はい?警視庁内では非常に特殊なポジションだそうですね。
嫌われつつもジワジワと実績を上げ今や無視する事の出来ない知る人ぞ知る存在だとか。
紹介しておこう。
警視庁の杉下さんと甲斐さん。
そして彼女は初対面になるだろうが実は諸君もよく知ってる…。
社です。
お怪我は?お怪我はいかがですか?かすり傷ですよ。
20針以上も縫っといてかすり傷はないんじゃないですか?あっ似顔絵は役に立ってますか?ええ捜査員が活用しているはずですよ。
外国人に襲われたって事は犯人はやっぱりロシアかな?
(佐々木宏)なんで私たちがロシアに命を狙われるんだよ?だって…。
(佐々木)そもそも私たちはスパイじゃないぞ。
確かにあなた方はスパイではありません。
スパイの協力者。
金銭と引き換えに祖国を裏切ったいわば売国奴ですね。
社くん。
ほんの軽い気持ちでしょうか?それとも思想的な理由があっての事ですか?どちらにせよ他国のスパイに情報を流した事は事実。
その情報がその時はささいな取るに足らない情報だったとしてもやがてそれが国を滅ぼす事になるかもしれないんですよ。
そういう事を少しでも考えた事がありますか?あなた方のした事は決して許す事の出来ない重大な裏切りです。
好きだなあ…。
は?僕は君みたいな勇ましい女性が大好きだよ。
口を慎め。
(下山)君こそ慎みたまえ。
ハハハ…。
しかしだなロシアに命を狙われてるなんて笑止千万だよ君。
でも…。
僕もそれには同感ですねぇ。
一連の殺しの手口を見てもとてもプロの仕事とは思えません。
1件目は階段から突き落とし2件目はロープで絞殺。
3件目はナイフによる刺殺ですが死因は出血多量。
つまりとどめを刺していないんです。
もう少し人通りのある場所だったならば助かった可能性すらある。
プロならばもう少しスマートで確実な殺し方を選びますよ。
そのうえ1件目に至っては殺害現場に手がかりを残すようなヘマをしています。
ええ例のレジュメですよ。
あんなものを残してしまうのはどう考えても素人です。
無論人殺しなど生まれて初めての。
おそらく犯行後一刻も早く捨て去ってしまいたかったんじゃありませんかねぇ。
じゃあ誰が命を狙っているっていうのさ。
ええですから今それを捜しているところなんですが。
もしもロシアが関与して人殺しを送り込んだのだとするとロシアはわざわざ素人を使って殺させたと考えざるを得なくなるものですからねぇ。
さすがにそんなバカバカしいまねはしないでしょうし。
あなたを襲ったのは確かに外国人でしたか?ええ。
似顔絵は明らかに西洋人でしたがね。
何が言いたいんですか?それがまるで幽霊みたいなんです。
(矢部)え?全く手がかりがないそうです。
逃走を図ったとみられるベランダも犯行当時捜査員がしっかり監視していました。
ここから誰か出てこなかったか?いや誰も。
でもその捜査員は全く犯人の姿を見ていない。
ベランダから逃走する犯人を見逃すはずはありませんしねぇ。
かといって他に逃走経路も見当たりませんし…。
自分が嘘をついているとでも?とんでもない。
その怪我は尋常じゃありませんからねぇ。
僕らはただ犯人の手がかりが欲しいだけです。
だから確認してるんです。
ええ。
ここは安全なんだろうな?こうして警察の方が一緒ですから。
警察は私たちの命を守ってくれない。
あんたそう言ったでしょ?私たちは犯人を捕まえるための釣餌だって。
それは言葉のあや。
もし今襲われたら守ってくださいますよね?もちろん。
だが犯人確保が優先だろ?だからってみすみす見殺しにはしませんよ。
いやに落ち着き払ってると思いません?下山議員ですか?好きだなあ…。
は?僕は君みたいな勇ましい女性が大好きだよ。
杉下さんもそう思います?少なくとも命が狙われているというおびえはみじんも感じさせませんねぇ。
天野室長に対しても高圧的だし他の連中とは明らかに違います。
単に肝が据わっているだけでしょうかねぇ。
まあ国会議員なんで偉そうなのは仕方ないにしても…。
ええ。
いささか気になりますねぇ。
フッこの柵…。
うん誰でも侵入出来ますね。
ええ。

(矢部)おたくは金のため?え?金のために奴に協力したの?それとも思想的な何か?いいじゃないか。
もう黙ってても気詰まりじゃない。
なんか話しましょうよ。
私は金だ。
100パーセント金。
思想的な事はなんにもない。
そういうあんたどうなの?自分ですか?金のためと言ってくれ。
(矢部)え?国防の要の自衛官がロシアシンパなんて背筋が寒くなるからな。
ならば先生は金ですね。
先生こそ思想的にロシアに協力してたなんて悪い冗談ですよ。
当たり前だ。
僕は与党議員だよ。
親米さ。
しかしねアメリカは金をくれない。
ロシアが気前よかっただけだよ。
ハハハ…。
杉下さん。
杉下さんはキャリアでしょ?はい?しかし現在階級は警部だ。
どこをどうするとキャリア組がその階級でとどまっていられるのか非常に興味があります。
そうですか。
機会があればその話はゆっくり…。
それよりも彼らをここに集めてどうするおつもりだったんですか?う〜ん…どうするとは?避難させたというのは当然方便でしょう。
そもそもここが安全な避難場所だとは到底思えませんからねぇ。
無防備すぎるんです。
避難場所としては最悪。
ええ。
何をするおつもりだったのか非常に興味があります。
情報収集です。
情報収集?そうですね?ああ。
まあ有益な情報が取れるかどうかわからないが彼らは長年ロシアの対日工作員であるヤロポロクと接してきた。
時には世間話もしただろうし場合によってはこっそり内緒話を耳打ちされたかもしれない。
まあとにかく出来る限りの情報を取りたいと思ってるんだ。
さっき社くんが言ったように一見取るに足らない情報でも角度を変えて見ればこのうえない有益な情報になる事もあるからねインテリジェンスの世界では。
彼らを一堂に集めるのにいい機会でした。
いい機会って?連続殺人がです。
危機感を感じた彼らを避難という名目で集合させる事が出来ましたから。
なるほど。
(ドアが開く音)僕は帰る。
駅まで送ってくれ。
何言ってるんだ。
拘束されてるわけじゃない。
そうだろ?こんな茶番はやってられんよ。
あんな連中と一緒もご免だ。
虫唾が走るよ。
戻ってください。
聞きたい事が山ほどありますから。
待ってください。
離せ!何か?間近で見ると結構な美人だな。
ますます好きになった。
ハハハ…帰るのはよそう。
しかしよりによってあなたと同室とはねぇ。
仕方ないでしょ。
くじ引きで決まったんだから。
昔からくじ運悪いんだ。
私もくじ運悪いんだよ。
思い出した…。
どこかで見た顔だと思っていたがようやく思い出したよ。
(雷鳴)先生は?やっぱり帰っちゃったんじゃない?ややこしい奴だ。
国会議員なんて身勝手だから。
見てきます。
あっ我々もご一緒しましょう。
はい。
(ノック)これ下山議員のでしたよね?ええ。
じゃあまだ別荘にいるって事か。
すげえ雨。
扉が開いてますね。
俺閉めましたよ。
傘ありますか?
(美彌子)はい。
(雷鳴)はい。
懐中電灯。
はい。
まさかこの雨の中で…。
表の通り見ましょうか。
カイトくん!はい!下山さん!死んでます。
(パトカーのサイレン)警視庁の伊丹です。
芹沢です。
(富樫)話は聞いてます。
とりあえず現場を見せてください。
(富樫)こちらです。
(富樫)撲殺です。
頭部を強打されてました。
(富樫)凶器は手近にあった岩ではないかと。
(芹沢)岩ですか。
(富樫)ええ。
手頃なのがいくつも転がってますから。
(伊丹)凶器そのものはまだ発見されてない?
(富樫)ええ。
ホトケはもう解剖にまわしました。
凶器の岩は投げ捨てたのかな?かもしれませんね。
死亡推定時刻はわかりますか?午後5時から6時の間だそうです。
いずれにしてもこの…夜からこの雨で現場を含めて辺りがすっかり洗い流されてしまったのが痛いですよ。
(パトカーのサイレン)伊勢さんは午後5時から6時の間ずっとお部屋に?いましたよ。
荷物をほどいたあと夕飯まで特にする事もなかったからくつろいでました。
あなたは伊勢さんと同室でしたね。
くじ引きでそう決まりましたからね。
一緒にお部屋にずっと?私は寝てましたから。
(伊勢の声)ええ佐々木さんはすぐ寝ちゃってそのまま夕飯まで…。
だから部屋にはいましたけど伊勢さんが一緒にずっといたかどうかはわかりませんね。
ちょっ…ちょっと待ってよ。
一緒にいたよ。
僕はずっと本読んでた。
だから私は寝てたからさ。
あんたがずっと部屋にいたか途中で抜け出したかわからないよ。
僕は間違いなく部屋にいましたから。
ずるいよあんた!私は正直に言ってるんだ!本当ですよ。
僕ずっと部屋にいましたから。
わかりましたわかりました。
落ち着いてください。
なんなんだ…!矢部さんその時間はずっとお部屋に?はい。
その時間はもちろん下山議員はいなかった。
つまり部屋にはあなた1人だったわけですよね?そうです。
社さんは?私は食堂で夕食の準備をしていました。
お一人で?ええ。
天野さんは?僕はそこで本読んでました。
もちろんお一人で?
(天野の声)ええ。
なるほど。
あのね私たちのアリバイを調べてどうなるわけ?この中の誰かが下山を殺したとでもいうの?そうだよ俺たちは命を狙われてる側だよ。
下山だって俺たちの命を狙ってる奴に殺されたんだ。
おっしゃるとおり僕もそう思いますよ。
だろ?感づかれたんだよここが。
私たちの命を狙ってる奴に。
矢部さんを襲った奴かもしれない。
さあそれはどうでしょうねぇ。
え?
(ドアが開く音)失礼しますよ。
警部殿ちょっと皆さんに事情聴取したいんですが。
ああいいところへいらっしゃいました。
は?あなたではなく芹沢刑事。
は?似顔絵の外国人について何か手がかりはつかめましたか?ああ…いいえまだ。
あなたがしっかりベランダを見ていればこんな事にはならなかったかもしれませんねぇ。
いやいや…。
見てましたよちゃんと。
誰も逃げ出してません見逃すはずないでしょ。
しかし逃走経路はあそこしかありませんからねぇ。
となるとあなたよそ見でもしてましたか?はあ?してませんよ。
しかし犯人がまさしく幽霊のごとく消えてしまうなんてありえませんからねぇ。
それは…。
なんですか?反論があればどうぞ。
あなた嘘ついてません?おい!本当に襲われたんですか?20針以上も縫う怪我を負ってんだぞ!そこつかれるとつらいんですけど…。
いや20針以上も縫う怪我を負ってまでも自作自演をしなければならないほど切迫していたとも考えられますよ。
狂言だっていうんですか?ずばり今回の一連の殺人事件その実行犯はあなたなんですよ。
わざわざ殺害の手口を変えていたにもかかわらず1件目のちょっとしたヘマによって事件の背景が明るみに出てしまった。
自らの犯行の発覚を恐れたあなたは捜査をかく乱するために存在しない殺人者を仕立て上げる事にしたんです。
自ら被害者となって警察の追及をかわすというのは切羽詰まった真犯人がよく使う手です。
何を言ってるんだ…。
連続殺人犯として検挙される事を思えば20針の自傷など軽いものではありませんか。
とんだ濡れ衣だ。
そうでしょうか?僕はこの考えにかなり自信があるんですがねぇ。
下山を殺したのも?ええもちろん彼ですよ。
ふざけんのもいい加減にしろ!自分は誰も殺してない!誰の指示だったんですか?え?あなたはあくまでも実行犯。
あなたに殺害を指示した人物がいるはずです。
まさかこの期に及んでロシアからの指示だったなどとは言いませんよね?ちょっと待ってくれ。
ご承知のように殺害を指示した人物は教唆犯としてあなたと同等の罪を負う事になります。
ここまできてあなただけが罪をかぶるなんてバカらしいですよ矢部さん。
確かに指示を受けた…。
誰から?けど人殺しじゃない…。
誰からですか?それは誓って言う。
本当に…。
余計な事は結構!誰からの指示だったか聞いてるんです。
この男です。
天野室長ですか?
(矢部)ええ。
けど人殺しの指示じゃない。
(矢部の声)襲われたふりをしろって…。

(ガラスが割れる音)
(ガラスが割れる音)
(ドアを叩く音)
(伊丹)矢部さん!矢部さん!どうした?何があった?襲われた…。
(伊丹)襲われた?
(矢部)ああ…。
それだけ…信じてくれ!人殺しはしてない!そんな指示は受けてない!そうだよな?おい。
何とか言えよ!本当なんですよ。
ええそれは最初からわかっていました。
天野室長から殺人の指示を受けていたのは日下栄介若島博文そして下山秀和。
そうでしょう?こいつがみんなを殺させてたって事か?ええ。
それぞれが順番に天野室長の指示を受け凶行に及んだんですよ。
最初の犠牲者である小倉健二を殺害したのは日下栄介でした。
(小倉健二)うわあ!
(女性の悲鳴)リストアップされた人物のうちの2名のニアミスともに殺人事件の被害者である事にとらわれるとあり得ない偶然に思えますが片方が被害者で片方が加害者だと考えればごく自然な光景ですねぇ。
ええ。
そのように自然に考えた時に一連の流れが見えました。
つまり…。
「死因は頭部を強打した事による脳挫傷で警察の調べによりますと小倉さんは誤って足を踏み外し階段を一気に転落した模様です」日下栄介を殺したのは3番目の被害者である若島博文なんですよ。
ああ…。
ああ…!ではその若島博文を殺したのは誰か。
リストアップされた7名の中に犯人がいるとなるとその答えは簡単でした。
犯行現場から考えると若島博文と面識のある人物。
ええ。
下山秀和ですよ。

(若島博文)うっ…!ああ…。
片や政治部記者片や国会議員。
2人は顔見知りの間柄でした。
犯行現場で待ち合わせをしたのでしょう。
だから先生が4番目の犠牲者に…。
そっかそういう事か。
そうだよね?殺した奴が殺されてそのまた殺した奴が殺されるわけだから。
確かに順番どおりではあります。
しかし…。
なぜ下山1人だけを殺したのか。
ええ殺人事件が発生すれば警察が駆けつけますからねぇ。
となるとあなたの計画が遂行出来ない。
違いますか?計画とは?ここでみんなをいっぺんに。
(佐々木)ストップ!ちょっと待ってよ。
みんなをいっぺんにって…いっぺんに始末するって事!?でしょ?ゴミ箱から発見されたレジュメによって連続殺人が警察の知るところとなったためあなたは当初の1人ずつ順番にという計画の変更を余儀なくされ残されたメンバーを1か所に集める事でその目的を果たそうと考えた。
違いますか?矢部さんに犯人をでっち上げさせたのも警察の捜査をかく乱するためだった。
万が一標的とされるメンバーの中に犯人がいる事がわかれば計画が破綻してしまう。
そのためにも幻の犯人が必要だった。
その幻の犯人によってここに集められたメンバーが皆殺しとなるわけですよ。
じょ…冗談じゃないぞ!この人たちの言ってる事は本当なのか?
(天野の笑い声)
(伊勢)何がおかしい?お前たちのした事は…万死に値する。
情報を売り渡すという事は国を売り渡す事と一緒だ!まさしく売国奴!なのに法律はお前たちを裁かない。
だからこの私が。
思い上がりも甚だしい!確かにあなたの言うとおりだよ。
はい?下山は3番目の加害者であり4番目の犠牲者になる男。
だから死んだんだ。
つまりあなたが直接手を下したと?そうだ。
しかしそれではあなたの決めたルールから外れていますね。
何事もルールどおりにはいかないものさ。
不測の事態は常に起こる。
日下若島下山に殺害を指示したのは僕だ。
そして下山を殺したのも僕だ。
いい気になるんじゃないぞ。
認めるよ。
さあ行こう。
(伊勢)おい!ふざけんなよ。
どんな理由か知らないけどいくら命じられたって人殺しなんかするもんか!ああ!それはどうかな!人はみんなそれぞれ弱点を持ってる。
地位だったり名誉だったり家族だったり場合によっては金だったり。
弱点つかれると人は案外もろいもんだよ。
とことん追い詰められたらなんだってするのさ。
あなたをそこまで思い上がらせた理由はなんなのでしょう?法律が裁かなければ自分が。
警視庁公安部長警察大学校校長など数々の重職を歴任してこられたあなたが法治国家の根幹をないがしろにしてまでそんな思いに駆られた理由ですよ。
確かに思い上がった行動に見えるかもしれないね。
やっとゆるゆるの機密保護の制度にも楔が打ち込まれようとしているのにまだまだ不十分だ。
そうだろ?そういう不十分な法制下で味わう無念は並大抵じゃないよ。
無念ですか。
(天野)僕が警視庁公安部の課長時代だ。
内調のとある人物が某国のスパイと通じているという情報が入った。
定期的に報酬をもらって情報を流していたんだ。
ノンキャリの内調プロパーだった。
そこそこ仕事も出来て出世もしてた。
僕はその人物を守秘義務違反で立件しようとしたんだ。
だが法律実務の壁に阻まれて立件は成功しなかった。
無念だったよ!情報を売り渡し国を危うくしてる奴が何も罰せられないんだからね!つまりその無念を晴らすために?法律の整備を待ってたらこの国は滅んでしまうよ。
(天野)だからその前に…。
あなたが法律になり代わって罰を下した。
誰かがやらなければならない事だからね。
それがあなたの大義であり正義ですか?そうかもしれんね。
ゆがんだ大義と思い上がった正義は始末に負えませんねぇ。
伊丹さん。
了解しました。
同行してもらうぞ。
下山殺害の凶器が供述どおりの場所から発見されたそうです。
そうですか。
天野室長が下山を殺したのは間違いなさそうですね。
ええ。
しかしなぜ殺したのか?下山は4番目の犠牲者になるべき人物だったから殺したという供述は納得出来ませんねぇ。
私がですか?ええ僕が別荘で天野室長にみんなを集めた理由を聞きましたねぇ。
その時室長は一瞬言いよどみました。
彼らをここに集めてどうするおつもりだったんですか?う〜ん…どうするとは?その時あなたは助け船を出した。
情報収集です。
情報収集?そうですね?あなたも室長の計画に加担していたとも考えられるわけですよ。
考えすぎでしょうかね?いえ加担はしていませんが疑いは持っていました。
一連の事件に室長が関与しているのではないかと。
もしそうだとしたら説得してやめさせようと思っていました。
だからあの場面であなた方に余計な追及はされたくなかったんです。
だったらそもそも俺たちを別荘に連れていかなければよかったじゃないですか。
歯止めです。
えっ?もし疑いのとおりだったとしたら別荘で殺人が起こる可能性がある。
でもお二人を連れていけばそう簡単に事件は起こせないだろうと思って。
しかし予想に反して殺人事件が発生しました。
それも下山のみが殺された。
おかしいですね。
あなたもそう思いますか?ゆうべおっしゃっていたとおり「殺すなら残り全員をいっぺんに」…。
私もそうだと思います。
そうじゃなければ計画の完遂は危うくなりますから。
ええ。
なんで下山1人が殺されたんだと思います?さあわかりません。
心当たりは何もない?ええ。
そうですか。
もうよろしいですか?ミーティングがあるものですから。
お忙しいところすみませんでした。
お邪魔しました。
あっ!もう1つだけ。
下山議員とは面識がおありだったのでしょうか?はい?別荘であなたが下山議員を引き留めた時なんとなくそんな感じがしたものですから。
待ってください。
離せ!何か?間近で見ると結構な美人だな。
ますます好きになった。
前にどこかで私を見かけたらしくあとでそれを思い出したっておっしゃっていました。
ちなみにどちらで?はっきりとはおっしゃっていませんでしたけど…。
相手は国会議員ですからどこかですれ違った事があるかもしれません。
なるほど。
死者の名誉に関わる事なのでここからはオフレコでお願いしたいんですけど…。
はい?実はあのあと下山議員に口説かれました。
口説かれた?愛人にならないかって。
で?もちろんお断りしましたよ。
一昨日来やがれって。
なぜあんなまねを?売国奴に与えられる免罪符は死のみだよ。
(天野)国を危うくする連中をどうして生かしておく必要がある?そもそもこの国は寛容すぎる。
だからああいう連中がのさばるんだ。
何度も繰り返させないでくれ。
他に質問は?最後の質問です。
ああなんだね?どうして下山を殺したんですか?計画が頓挫する事を覚悟で。
君には感謝されると思うよ。
あんなゲス野郎のために君のキャリア人生が終わってしまうのが忍びなくてね。
私は内調への出向を打診された時あえて転籍を条件にした。
もう警察庁に戻るつもりはなかった。
ここが僕のキャリア人生のゴールと思ったんだ。
これ以上は望めないと。
しかし君は僕よりずっと優秀だ。
これからもっと輝かしいキャリア人生を歩んでいくはずだ。
こんなところでみそをつけて潰れてしまっては警察庁にとっても重大な損失となるじゃないか。
だからだよ。
僕は君を信じてる。
君は絶対国を裏切らない。
そうだろ?僕は僕の出来る事をした。
わかりました。
あっ…。
異動する事になりました。
異動?今回の一件で内調に対する世間の風当たりが強いので人事刷新だそうです。
警察庁へ戻るのかい?いえ警視庁へ出向です。
警視庁…そう。
何かいるものはありますか?言ってもらえれば差し入れします。
いや結構だ。
もう来なくていいよ。
わかりました。
ああ。
それじゃあ。
元気でやりたまえ。
室長も。
いつか返せる時が来たらご恩返しします。
君ヤロポロクとはどういう関係だ?プーケットのリゾートホテルで随分仲むつまじくやっていたね。
去年の春だったかな?人違いでは?いいや君だ。
シラを切るならばそれでいい。
僕のルートで徹底的に調べさせる事だって出来るよ。
内調の人間がロシアのスパイと繋がっていた事が公になると厄介な事になるんじゃないのかな。
フフッ。
安心したまえ。
それで君をどうこうなんて野暮なまねはしないから。
Yeah.
(ヤロポロク・アレンスキー)「Bye」白紙。
どうしても白紙?うん。
親父と仲直り?それが条件。
(ため息)最大の難問だな…。
日村と申します。
手島と申します。
よろしくお願いします。
(日村)よろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
よろしく。
せがれと?ええ。
ひょんな事でお目にかかりました。
ああそう。
やはり親子ですね。
お顔立ちがどことなく。
そうかねぇ?まあ新天地で頑張りたまえ。
君には色々な意味で期待しているよ。
ありがとうございます。
今さらこんな事を声高に言うのも気恥ずかしいんだがね僕は女性がどんどん要職に進出すべきだと思っている。
とりわけ警察は男社会だからねそれが必要だ。
(甲斐)「そういった意味からも支援を惜しまないから何かあったら遠慮なく言ってきたまえ」はい。
では失礼します。
ああ特命係だがね…。
(甲斐)「使い方次第では役に立つから親交を深めておくのも悪くはない」だが注意しないと思わぬところで足をすくわれる。
融通というものが全く利かない連中でね。
ご忠告ありがとうございます。
あっどうも。
その節はご苦労さま。
どうも。
聞きましたよ。
広報課長なんですって?ええ。
完璧にコースに乗ってますね。
私が決めたわけじゃありませんから。
どちらへ?東京拘置所まで。
室長ですか。
下山殺しの動機がどうしても納得出来ませんからねぇ。
手ごわいですよあの方は。
わかってます。
杉下さんも相当手ごわそうだけど。
恐縮です。

(美彌子)あっ来てるんだ。
おかえりなさい。
おいで。
ママ。
いい子ね!今日は何して遊んでたの?うん?
(ため息)社美彌子…気になりますねぇ。
ええ。
兵庫県尼崎市のマンションで、酩酊状態のため警察官に保護されていた男性が暴れだし、3階から転落して死亡しました。
午前1時前、尼崎市のマンションで、「入り口付近で男女がけんかしている」と管理人が通報しました。
警察官が駆けつけると交際相手の女性ともめていた40歳ぐらいの男性会社員が過呼吸状態になっていて、上司に介抱されていました。
男性は、3階の自宅に戻りましたが、「コルク抜き」を握りしめるなど危険とみられる行為をしたため、警察は保護が必要と判断。
警察官3人がかりで警察署へ連れて行こうとしましたが、部屋を出たところで男性が突然暴れだし、手すりを乗り越えて3階から転落。
病院へ搬送されましたが死亡が確認されました。
警察によりますと男性は酩酊状態だった、ということです。
尼崎南警察署は、「必要な対応はしていたと考えている」とコメントしています。
京都・祇園祭で去年、150年ぶりに復活した「大船鉾」の装飾品が新調され、完成披露会がありました。
新調された大船鉾の正面を飾る「前かけ」・「紅地雲龍青海文綴織」は縦2メートル28センチ、横65センチで、二頭の龍が色鮮やかに描かれています。
去年の山鉾巡行では150年前の「前かけ」が使われましたが、巡行の際に破損する恐れがあるため、およそ10ヵ月、1500万円をかけて、新たに作られました。
このほか一面に金箔が押された格天井や、天井を支える柱の周りに飾られる天水引房も新調されました。
大船鉾は今月24日、後祭の山鉾巡行で最後尾を務めます。
サッカー女子・ワールドカップの決勝を前に、イルカたちがユニークな「PK占い」をして、なでしこの連覇に太鼓判をおしました。
サッカー女子・ワールドカップの決勝戦で、日本は、2大会連続でアメリカと顔を合わせます。
日本時間のあさって午前の「決戦」を控え、和歌山県太地町にある「くじらの博物館」がイルカショーを開催。
日本代表とアメリカ代表に分かれてPK合戦をし、勝敗の行方を占いました。
結果は見事、4対1で、日本の勝利です。
(読経)
(芹沢慶二)秋山…。
(秋山孝之)芹沢か。
お互い東京に出てきてるのに近いとかえって会わないもんだな。
(芹沢)彼女同じ会社の子だったよな?
(秋山)そのうち結婚式に呼んでやるつもりがまさか葬式が先になっちまうとはな…。
驚いたよ。
人間あんなことで死ぬんだな。
それでは最後の別れ花です。
最後のお別れをお願いします。

(ため息)
(杉下右京)おや珍しい。
しかもお1人となるとなおさら珍しい。
ここへ来たことは内緒に…。
特に伊丹先輩には絶対に内緒にしてください。
わかりました。
でご用件は?ちょっとどう思うか訊いてみたいことがあって。
一課じゃ取り合ってもらえなかったんです。
まずこれ見てもらえますか?どうかと言われれば似ていると思いますよ。
はい!?これ伊丹刑事ですよね?今のも内緒にしてください。
わかりました。
これです。
髪切り事件ですか。
(芹沢)知ってますか?ええ。
ちょうど1年ほど前でしたかねぇ…。
埼玉県近郊で相次いで3人の女性の殺害死体が見つかりました。
手口はそれぞれバラバラでしたが被害者の髪が1房ナイフで切り取られているという共通点がありました。
この事件は犯人と目された男の自殺という形で幕を閉じたと思っていましたが…。
それが犯人は他にいたんじゃないかっていう噂があるんですよ。
確かそんな噂を流していた週刊誌もありましたねぇ。
無実の人間を自殺に追い込んだ警察が事件を終わらせるために捜査を打ち切ったとか。
で訊いてみたいというのはそのことですか?ああ実は昨日葬式に行ってきたんです。
ええ。
高校の時のダチがいるんですけど。
ダチが?ああすいません。
友達が。
ええ。
そいつの彼女が亡くなって…。
お気の毒でしたねぇ。
出棺の前にお棺をのぞいたら切り取られてたんですよ。
彼女の髪。
おやおや。

(米沢守)死亡したのは文光印刷社員の三村奈津子さん。
所轄の判断では事件性はないと見なされ解剖もされませんでした。
浴室で溺死ですか。
意外と思われるかもしれませんが風呂というのは思いのほか危険な場所です。
例えば42度以上のお湯に入ると人間の体は危険だと判断して血圧がガンと上がります。
熱いお風呂は体によくないといいますねぇ。
そうです。
そしてしばらく湯船に浸かっていると今度は安全だと判断して血圧がガンと下がります。
この急激な変化についていけずに場合によっては失神してしまうことがあるのです。
死亡推定時刻は2月15日午後6時から9時半の間ですか。
それが所轄の見解です。
この手の指にしもやけというのは?しもやけに熱い風呂…冷え性だったんですかねぇ?女性にはありがちですが…これです。

(電話の呼び出し音)杉下です。
うう〜。
(三浦信輔)おいどうした?すんませ〜ん腹が〜。
(ため息)
(伊丹憲一)大げさな野郎だな。
さっきトイレ行ったばっかりだろうが!昼に食った牡蠣があたったのかもしれません…。
ああ?てめえ何1人で昼間っから牡蠣なんか食ってんだよ!病院行ってきていいっすか?おい…。
うう〜。
牡蠣あたるとやばいぞ。
早く行ってこいよお前。
よく大丈夫でしたねぇ。
何がです?一課の方々。
何と言って出てきたんですか?もちろん捜査ですよ。
単独捜査。

(芹沢)特に変わったところありませんね。
それにしても整然としていますねぇ。
ここで殺害されたのならばもう少し抵抗の跡があってもいいとは思いませんか?そのことも事故死の根拠になったらしいです。
おや洗濯物は入ったままですね。
脱いでそのまま洗濯機に放り込んだんじゃないですか?俺よくやりますよ。
ちょっと…まずいっすよ。
これでは洗濯ネットの意味がないと思いませんか?はあ…。
カビ?いえ油脂分が浮き出ているんです。
革靴というのは濡れるとこのようになるものなんですよ。
ほう〜。
ここしばらく雨降ってませんよね?あれっこれひょっとして見落としました?だってもう21時30分の映像過ぎてますよ。
おやまたですか。
これさっきもありましたね。
芹沢君戻していただけますか?あっはい。
(リモコンの操作音)あっここですね。
ええ。
20時45分…。
何なんですか?これ。
あっこれねバイクか何かが止まってたんだと思いますよ。
バイク?ああよくあるんですよ。
カメラがねほら駐車場のほう向いてるでしょ?ああ〜。
それで。
でもこれじゃ人が通ったかもわからないですね。
バイクのライト…。
待てよ…車のライトの可能性もあるぞ。
車のライトがパーッ。
…すいません。
結局奈津子さんが通ったところは映ってませんでしたねぇ。
でも部屋で亡くなったわけですからあの光が当たってる間に通ったとしか考えられませんよね。
だとするならば考えられるケースは3つ。
1つ目は奈津子さんご自身が通ったケースです。
その場合奈津子さんは事故死。
1人で帰ってきて1人で亡くなったってことですね。
2つ目は奈津子さんと何者かが一緒に通ったケース。
その場合そいつに殺された可能性がある。
最後は犯人だけが通ったケース。
犯人だけ?正確には奈津子さんの遺体を持った犯人がです。
スーツケースなどを使えばできない芸当ではありません。
それって外で殺されたってことですか?外で溺死して運ばれたとすれば靴が濡れていたことにも納得がいきます。
洗濯ネットを使っていなかったのは入れたのは奈津子さん本人ではないからでしょう。
なるほど…。
勉強になるなぁ。
当日の足取りを追いましょう。
洗濯ネットか…。
あっはい!
(秋山)15日の奈津子?
(芹沢)うん。
確か4時くらいまでここで仕事をしてから共映撮影所に行ってそのまま直帰したはずだけど。
撮影所?うちは映画やテレビの台本印刷も扱っていて奈津子は手書き原稿のデータ起こしとその校正を担当してたんだよ。
なるほど。
お部屋にあった原稿はお仕事のものでしたか。
(秋山)それか奈津子が書いてたものかのどっちかだと思いますよ。
ああ自分でも書いてたんだ?
(秋山)あいついつか自分で映画の脚本書くのが夢でな。
この会社に入ったのも仕事でいろんな台本が読めるからだって。
勉強も兼ねていたということですねぇ。
時々コンクールに応募していてつい最近もその締め切りが近いって寝る時間を削って何か書いてたんです。
仕事で疲れてるのわかってるのに…。
こんなことになるなら叱ってでも休ませればよかったよ。
撮影所へはどなたに会いに行かれたのでしょう?川島敏夫っていう映画監督です。
奈津子昔から大ファンだったらしくて随分喜んでたんですが…。
(ブザー)だからこれは懺悔なんかじゃないんです。
俺がそんなに鈍感だと思ってたのか?知ってたんですか?ああ。
おお…これ見てないと引っかけちゃいそうですよ。
最初は許せなかった。
本番中のようですよ。
俺は本気です。
そうか…。
ごめんなさい。
あなた…ごめんなさい…。
(中川香織)はいカット!監督。
監督?はい。
もう1回くださーい。
(長澤浩一)おーい!もう1回いくぞ!本番もう1回いきます!はいもう1回いきます!はい本番いきまーす!監督ですかね?
(ブザー)お仕事中ちょっとお邪魔します。
警視庁の杉下と申します。
芹沢です。
(浅井至)警視庁?我々今文光印刷の三村奈津子さんのことで事実確認を行ってまして。
ご協力願えますか?当日撮影所に来てらっしゃいますよね?はい。
何をしに?差し込み台本を届けに来てくれたんです。
差し込み台本とは?撮影中に変更があった時なんかにそこだけ新しく刷ってもらう台本のことです。
なるほど。
彼女無理な納期にも対応してくれたりして熱心だったのに…。
何時頃帰られたかわかりますか?さあ…こっちも撮影中だったんで…。
たぶん6時ぐらいにはもう帰ってたんじゃないでしょうか。
あっスタッフルームここですね。
川島監督はこちらにいらっしゃいますか?
(多田信也)ああ監督でしたらさっき出かけちゃいましたけど。
あっ私プロデューサーですが監督が何か?警視庁の杉下と申します。
今文光印刷の三村奈津子さんのことで事実確認を行ってまして。
まだ撮影中のようでしたが監督は何か急用でも?ああ…急用も何も一杯引っかけに行っちゃったんですよ。
一杯ってあの一杯ですか?帰ってくるといつもほろ酔いでね。
それはまた大胆な方ですね。
(舌打ち)ここだけの話なんですがもうダメなんですよ。
はい?監督といっても6年間も撮れずに田舎で腐ってたような監督ですし。
てっきりもう足を洗ったと思ってたんですけどね。
それがまたどうして突然新作を?監督が持ち込んできたんですよ。
この作品前に1度撮りかけて失敗したらしくて。
どうしても雪辱戦がしたいからって自分で文化庁の助成金まで取ってきたんでじゃあ考えてみようかって…。
いざ始まってみたら現場は抜けるわ本番中に居眠りするわで…。
幸いカメラの長澤さんと美術の浅井さんとは監督とも長いんで何とかなってますけどね。
奈津子さんはいつもその監督と会ってたんですよね?ええ。
来るといつも2人でスタッフルームにこもってましたよ。
原稿の確認とか言ってましたけどね。
何をそんなに話すことがあるのか…。
2月15日も?15?ああどうですかねぇ?何せその日も帰っちゃいましたから。
2月15日途中で帰ったって言ってましたね。
言ってましたねぇ。
撮影所を抜け出して奈津子さんと会ってたって考えることはできませんか?撮影所からすぐ後を追えば犯行可能だ。
これは一気に監督攻めたほうがいいかもしれねえなぁ。
思ったより早く解決するかもしれねえなこれ。
君はブツブツが多いですねぇ。
ははっすいません。
一課の先輩が先輩なもんですから。
(角田六郎)ヒマか?あれっ川島敏夫じゃねえの。
ご存じですか?おお。
代表作の『無情の涙』俺好きなんだよなぁ。
川島作品ってさぁ地味だけどテーマが通ってるところがいいよな。
今新作映画の撮影をしているようですよ。
そうなの?へえ〜。
もうてっきり撮れなくなったと思ったけど。
おやそれはまたどうしてでしょう?ああこの監督さ1度撮影中に事故起こしてね。
エキストラが1人死んでるんだよ。
事故ですか…。
うん。
海辺の撮影だったんだけど潮に流されちゃったんだって。
(ため息)あれ何てタイトルだったかな?ひょっとして『微睡』ではありませんか?そうそう!確かそんな名前。
で結局制作中止になって監督もそれをきっかけに映画から足を洗ったって聞いたけど。
なるほど。
雪辱戦とはそういうことでしたか…。
うわ〜見たいなぁこれ。
(ため息)俺もヒマになりたい。
(ため息)どうしました?あの川島って監督怪しいです。
はい?6年間田舎で腐ってたって言ってたじゃないですか。
で調べてみたところ川島の出身埼玉だったんです。
もしかすると髪切り殺人と関係あるかもしれません。
探せば何か接点出てくるかもしれませんよ。
出てこない可能性のほうが高いと思いますよ。
何でですか?過去の3件と今回では手口が違うからです。
手口なら過去の事件だってバラバラでしょ?大事なのは髪が切られてるってところなんじゃ…。
まさしくその髪の切られ方が違うんです。
過去の3件ではナイフで切られていました。
ゆえに切り口はまばらだったはずです。
しかし今回は整った直線でした。
おそらくハサミを使ったのでしょう。
じゃあ犯人は別の目的があって奈津子さんを殺害しあえて髪を切ることで過去の事件に見せかけようとした…。
まだ何とも言えませんが少し気になることがありましてね。
これは川島監督の過去の脚本を本にしたものです。
未完成だった『微睡』の脚本も載っています。
そして…こちらは新作『微睡』の脚本。
秋山さんに送っていただきました。
ええ。
脚本では台詞以外の部分をト書きというそうです。
ここ…見てください。
「正雄凍えた窓を見ている」これ古い脚本ですね。
ええ。
しかし新作『微睡』では「凍てついた窓を見ている正雄」となっています。
微妙にこれ表現違いますよね?はいはいはい…。
さらにこの場面を示す部分があるんですがこれをハシラというそうです。
ほう。
ええ…昔の脚本では台詞ごとにハシラが立てられています。
しかし新作『微睡』では…ここ。
ああ〜はいはい。
こっちは何かこうバツバツバツでこうつながってますね。
それから…。
こちらは奈津子さんの書いていた脚本です。
似てるんですよ。
うん?新作『微睡』に。
ああっ!奈津子さんは賞の締め切りに追われていた。
秋山さんはそうおっしゃってましたねぇ。
はいはいはいはい…。
しかし調べたところその期限に締め切りのある賞はありませんでした。
ああ奈津子さんが書いていたのは…『微睡』の台本!芹沢君。
はっ?行きましょう。
あっはい。
堂々としましょう。
はい!
(職員)確かに今年度助成対象になっていますね。
拝見します。
仮に脚本を書いたのが別の人間だったらどうなります?
(職員)その場合は規約違反ですから取り消しになります。
そうですか。
ええ。
この作品にその疑いがあるんですか?いえいえそういうわけでは…。
ああここもうちょっと流しておいて。
はい。
これは当分やみそうにないなぁ。
(長澤)どうするの?この雨じゃラストシーン撮れないよ。
撮れなくても撮影期間は延ばせませんからね。
台本書き換えてもらうしかないです。
それはまずいだろう。
監督が書いた本なんだから。
特にラストは前撮影中止の原因になったシーンだろ?そのシーンをあえて変えてないってことは相当思いがあるんだよ!現場の事情で台本変えるなんて誰だってやってることでしょう。
私監督説得します。
失礼。
川島監督はどちらに?スタッフルームでカット割りしてますけど…。
そうですか。
どうも。
あの…何かあったんですか?いえ大したことではありませんので。
(川島敏夫)煮詰まった時に頑張ってもろくなアイデアが出ないんでね。
そういう時はいっそのこと気分を変えに行くことにしてるんです。
それに始終現場にいて指示を出さなくてもスタッフは何をすればいいのかはわかってますよ。
撮影も美術も私が育てた連中ですから。
監督がですか?18でこの世界に入って50年撮影も美術も映画に必要なパートはひと通りやってきました。
なるほど。
杉下警部そろそろ本題に。
どうぞ。
川島さんあなた時々現場を抜けるそうですね。
2月15日はどちらに行かれてました?なぜそんなことを訊くんですか?実は三村奈津子さんの死に疑惑がありまして…。
疑惑?場合によっては殺された可能性もあるんです。
まさか…何かの間違いでしょう。
ともかくどこへ行っていたか教えていただけませんか?ゴールデン街に「飛翔」というバーがあります。
そこのマスターに訊いてもらえますか。
(マスター)川島監督ですよね?ええちょうどその時間いらっしゃってましたよ。
(芹沢)間違いないですか?間違いも何も…。
監督は週にどれぐらいいらっしゃるんですか?2〜3回ですかね。
バーボンをお飲みになるようですが1度にどれぐらいお飲みになるのでしょう?まあ…2〜3杯は。
水割り?ストレート?ストレートですけどそんなの聞いてどうするんですか?なるほど。
普段バーボンなんていつ聞いたんですか?聞いてませんよ。
ただそこにあるものですからねぇ。
ボトルを入れてから2か月近く経っていますねぇ。
おっしゃるとおりのペースならばもうとっくに底をついているように思えるのですがね。
本当のことを教えていただけませんか?悪いがそれはできない。
改訂でもあのシーンだけは変えなかった。
変えるわけにはいかないからです。
でも予報だと向こう1週間雨なんですよ。
まだどうなるかわからないでしょう。
セットに変更するパターンも準備しておいたほうがいいと思います!すいません…。
用意周到なのは結構ですがあまり心配しすぎないほうがいい。
心配でつく嘘というのは下手な嘘になりがちです。
下手な嘘というのは時々映画を壊してしまう。
あのマスターも口が軽くなったもんですな。
なぜ嘘をおつきになったのでしょう?本当はどちらへ?人には言いたくないこともある。
事件かもしれないというだけでそこまで協力しなければならんのですか?
(芹沢)じゃあはっきり言います。
あなた疑われてるんです。
私が?なぜ?なぜって…。
アリバイで嘘をついたうえに動機もある。
芹沢君。
条件そろってますよ。
動機ですって?新しい『微睡』の台本ですが以前とは随分書き方が違っていますねぇ。
まるで別人が書いたような印象を受けました。
随分奈津子さんの脚本に似てますよね。
書いたのは私ではなく三村君だった。
…と言いたいのですか?違うんですか?文化庁に出すための台本を刷るのに印刷会社に行ってそこで彼女と知り合いました。
最初は単なる校正の確認だったのですが中身の話になると三村君指摘がとても的確でね。
何より私の作品をよく理解したうえでの意見でした。
それで何度か話すうちに私の案を元に彼女が書くようになったんです。
でも台本に奈津子さんの名前はなかった。
文化庁もあなたの名前だけで申請していますよね?そのことで奈津子さんともめたんじゃないですか?それは違う。
私も三村君の名前も載せようとしたんです。
最後の原稿には脚本家として彼女の名前も書いて渡しました。
それが…。
これはどういうことです?
(三村奈津子)私はお手伝いしただけです。
これはあくまで川島敏夫の作品ですから。
いやしかしあれは手伝いなんてもんじゃ…。
私監督の復帰作は川島脚本で見たかったんです。
監督のファンはみんなそうだと思いますよ。
私学生時代に監督の作品見て自分も脚本を書きたいって思ったんです。
この映画の完成楽しみにしてますから。
(川島の声)印刷会社に行けば原稿が残ってるかもしれません。
そこに私の字で「三村奈津子」と書いてあるはずです。
そこまでお話しいただいても2月15日どこにいらっしゃったのかお聞かせ願えませんか?三村君とは会っていません。
そうですか。
芹沢君行きましょう。
えっ?ありがとうございました。
まだ訊いてないですよ。
(川島)あの…。
三村君は本当に撮影所に来てたんですよね?当日彼女を見た方がいらっしゃいます。
そうですか。
いや…私に会いに来たのに会わずに帰るなんて彼女らしくないと思って。
(宮部たまき)芹沢さん何飲まれますか?僕はウーロン茶で。
(たまき)はい。
でどうでした?あっ川島監督の言ってた原稿文光印刷にはありませんでした。
もう処分されちゃったみたいです。
だとすると監督の言ったことは本当なのかどうか確かめようがありませんねぇ。
アリバイの時と同じで嘘ついてるんじゃないですか?それにしても気になりませんか?あの話。
あの話?奈津子さんが会わずに帰ってしまったという話。
なぜその日に限って会わずに帰ってしまったのでしょう?自分を無関係に見せようとしてるんでしょ。
もしも!はいもしも。
奈津子さんは帰らずに監督を待っていたとしたらどうでしょう?ほう…えっ?帰らなかった?
(芹沢)ちょっとどうしたんです?行きますよ!明日雨でも決行するって?正気なんですか?監督。
たぶん現地で晴れるのを待つっていう意味だと思うんです。
現地に行って晴れなかったらどうするんですか?またまた失礼いたします。
あっどうも。
また何か?先日奈津子さんがお帰りになった時間をお尋ねした時に6時頃だとおっしゃいました。
それは確かですか?撮影中なのでわからないって言ったはずですが。
多田さんはいかがでしょう?私はもともと来たのも知りませんでしたから。
なるほど。
あの…。
あんまり気軽に出入りされると困るんですが…。
ごもっとも。
どうも失礼しました。
…ああ!また何か?もう1つだけよろしいでしょうか?あちらは…。
何をなさっているのでしょう?これはヨゴシといいましてね撮影美術独特の技術です。
こうやってコーヒーなんかで汚して生活感を出すわけです。
ああそうですか。
どうもありがとうございました。
なるほどなるほど。
水ですか?ええ。
2月15日に水を使っていたところなんですが…。
ああちょっと待ってください。
ええと…。
ええ…許可が出ているのはあっ佐藤組の15スタで放水シーン。
ああ…あと川島組の11スタジオでも使用許可出てますね。
川島組で?ええ。
まあただここのは飲食店セットの装飾だし水ったってそんなに使ってませんよ。
ちょっといいですか?すいません。
(芹沢)川島組川島組…。
あっ18時5分から停電15分後復旧。
この停電というのは?ああこれブレーカーが落ちただけですよ。
水ありますね。
深さはあまりないようですねぇ。
でもこれなら十分こう上から押さえつければ犯行可能ですよ。
芹沢君。
(芹沢)はい。
1つお願いがあります。
あの…何なんですか?こんな時に。
皆さんお忙しいところ申し訳ありません。
少々お付き合いください。
芹沢君。
はい。
(浅井)おいおい…セット勝手にお前…。
撮影所の許可は取ってありますので。
あっ!1つお訊きしておきたいことがあります。
中川さんは現場ではヒールのある靴はお履きになりませんよね?現場でそんなの履いてたら仕事になりませんよ。
そうでしょうね。
だとするならばここにある靴跡は一体誰のものでしょうか?この靴は奈津子さんの部屋にあったものです。
ぴったりと一致するんですよ。
つまり奈津子さんはここで亡くなったんです。
溺死なんて…水は何センチも入れてませんよ。
ええ普通ならば考えられませんね。
誰かが押し付けたとでも言いたいのですか?我々もそれを疑いました。
しかし靴跡を見る限り争った形跡はまったくありません。
つまり奈津子さんはこの水の中に1人で入り溺死したんです。
1人で?あの…言ってる意味がよくわからないんですけど。
例えば奈津子さんは通電した水に触れてしまったためにそのショックで気を失い水の中に倒れてしまったとは考えられないでしょうかね?奈津子さんがこのケーブルに引っかかった時にライトが水に落ちたとしたら…。
キャッ!奈津子さんが亡くなったのは事故だった。
しかし問題はその後です。
なぜ撮影所で亡くなった奈津子さんがご自宅の浴室で発見されたのか。
それはこういうことではないでしょうか?この作品は6年前に1度事故で中止の憂き目を見ています。
スタッフの皆さんのどなたかがまた中止にならないように奈津子さんの死体をご自宅まで運んだんですよ。
足跡だけでそこまで決めつけられるのですか?いいえ足跡だけではありません。
今回の犯人は死体を運び込む際に監視カメラにライトを当てるというトリックを使っているんです。
それからもう1つ。
先ほど教えていただいたのですがこれはヨゴシというそうですねぇ。
撮影美術特有の技術だとか。
(多田)そのヨゴシが一体何だっていうんですか?なぜか奈津子さんの部屋にも施されていたんですよ。
監督の代表作である『無情の涙』のポスターが貼られていなかったんですよ。
いささか不自然に思い改めて壁を見直してみるとちょうど間にもう1枚ポスターが貼ってあったようなスペースに気がついたんですよ。
日焼け部分を拭き取ってみたものです。
しょう油でした。
破いてしまったかあるいは汚したか何らの理由でポスターを外さなければならなくなりその跡を隠すためにヨゴシを施したのではないでしょうかねぇ。
つまり犯人はヨゴシの技術を持ちカメラの知識に詳しい者ということになります。
その両方ができるといえば私しかいない…でしょう。
確かに監督ならば可能ですね。
昔同じ失敗をしている。
また事故なんかで邪魔をされたくなかったんです。
私の人生には映画しかなかった。
だからこそこの作品を完成させたかったんです。
たとえ罪を犯してでも…。
ラストシーンを頼む。
あきらめずに天気を待つんだ。
まいりましょう。
芹沢君。
(香織)待ってください!私です。
私が…死体を隠しました。
(長澤)おっブレーカー落ちてるな。
(香織)長澤さん!
(長澤)えっ?
(香織)溺れたんですかね?
(浅井)馬鹿な…こんな浅いところで。
(長澤)おいこれ!
(香織の声)消え物用の冷蔵庫がありました。
死体はそこに隠しました。
そして撮影が終わると死体を運び出した。
おっイタッ!イテッ!ああ…。
あとは私がやります。
(浅井)はい。
(芹沢)事故死に見せかけようとした。
だったらどうしてわざわざ髪なんか切る必要があったんです?そんな顔するな。
俺達が殺したわけじゃないんだ。
死んだ場所が変わっただけだよ。
そうじゃないんです。
えっ?これって凍傷ですよね?大丈夫だろ。
これぐらいなら警察も見逃すよ。
でもお風呂で溺れたのに凍傷だなんて…。
どうするんだ?今さら元に戻すってわけにはいかないんだぞ。
(香織の声)考えた揚げ句警察が凍傷に気がつかなければ事故死。
もし気がつけば髪切り事件の真犯人による犯行と見えるように筋書きを変えました。
浅井さんその手…。
えっ?あっ…。
はがしましょう。
ああ。

(香織)これ…。
(浅井)ああ?おいしょう油持ってこい。
はい。
つまり防犯カメラには撮影の壁には美術のそして事態に対するとっさの対応には助監督の経験が生かされた。
まさに撮影チームならではの隠蔽工作でしたね。
(香織)私だってできれば他殺の可能性なんか残したくありませんでした。
あの凍傷さえなければ…。
あなた方は勘違いをなさっています。
凍傷やしもやけは熱を逃がさないように血管が収縮し血液がめぐらなくなることによって起きる生理現象です。
死体に起きることなどありえません。
あなた方の行った工作は殺人ではないとはいえ死者を冒涜するものですよ!申し訳ありません。
(芹沢)申し訳ない?ただ死んだ場所を変えただけ?あんた達にとってはそうかもしれないけどな身近な人間を失った人の気持ち考えたことあるのか!芹沢君。
しかしあなた方はどうしてそうまでして事故を隠そうとなさったのでしょう?この作品だけはどうしても完成させたかったんです。
6年前私のせいで中止になった作品ですから。
6年前の事故って…君のせい?その時亡くなったウインドサーファーの方は波が強くて危険だと私におっしゃってたんです。
なのに私が無理に頼んで海へ入ってもらったんです。
それで沖へ流されて…。
でも監督は全部自分の責任だと…。
今回のことは全部私が言い出したことなんです。
長澤さんと浅井さんは私に力を貸してくれたに過ぎません。
今回はあの時とは違う。
完全に不慮の事故だ。
撮影をやめてまたやり直せばよかったんだ。
それくらい君なら考えついたはずだろう?なのにどうしてこんな下手な嘘を…。
それでは監督が間に合わなくなると思ったんです。
中川さんはやはり気がついていたようですねぇ。
スタッフルームにお邪魔した時に僕も気になりましてね。
薬を調べてみたところどうやら抗がん剤のようですねぇ。
時折監督が撮影所を抜け出すのは病院へ行くため。
そして戻ってくる度に酩酊状態にあったのはモルヒネによる痛み止めのため。
そう考えれば納得がいきます。
監督ががん?どうして言ってくれなかったんですか?いつ倒れるかしれない人間に監督なんてやらせますか?そうか…知ってたのか。
監督…。
助監督の一番の仕事は監督を理解することです。
モルヒネを二日酔いだなんて…監督こそ嘘が下手ですよ。
嘘が商売の人間がそろいもそろってか…。

(内村完爾)馬鹿者!よりによって特命係を頼るとは何たる心構えだ。
貴様それでも捜査一課か!さすがに今回は私達も開いた口がふさがりません。
同感です。
(中園照生)馬鹿!これはお前達の管理責任でもある。
一緒に反省しろ!はっ!いらしてたんですか?ラストシーン晴れたんですねぇ。
おかしなことがあるもんですよね。
次の日急に雨が上がったんですよ。
監督が言ってました。
映画の神様が味方してくれたって。
今じゃ自分が神様になっちゃいましたけど。
完成の翌日に亡くなられたそうですねぇ。
よせばいいのにあの体で無理して仕上げして…。
自分の人生には映画しかなかった。
そうおっしゃってましたねぇ。
でもいい作品になりました。
映画に魅せられた人々がその光の中に思いのすべてを投じる…。
作品はかかわった人々それぞれの人生そのものなんですねぇ。

正義のミカタ拡大2時間スペシャル
2015/07/04(土) 12:00〜15:20
ABCテレビ1
相棒傑作シリーズ一挙放送!!歴代“相棒”作品から厳選2本をお送りします!![再][字]

▽「ファントムアサシン〜幻の殺人者は二度死ぬ!?〜協力か対立か…VS国家機密を握る女」
▽「髪を切られた女」

詳細情報
◇番組内容1
ある日、右京(水谷豊)のもとにホームレスの一郎(松尾貴史)が訪ねてくる。ゴミ箱から、歩道橋から転落死したと報じられた男性の詳細な個人情報が書かれたレジュメを拾ったという。それが何らかの事件であることを察した右京と享(成宮寛貴)は、独自の捜査を開始。
鑑識の結果、レジュメから内閣情報調査室の社美彌子(仲間由紀恵)の指紋が見つかる。国家機密を握る部門に所属する情報機関のスペシャリストだ…。
◇出演者1
水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹、真飛聖、石坂浩二
川原和久、山中崇史、六角精児、山西惇、小野了、片桐竜次 ほか
【初回ゲスト】仲間由紀恵、羽場裕一
◇番組内容2
捜査一課の芹沢がコソコソと特命係へ。級友の同僚女性が連続髪切り殺人事件の犯人に殺害されたのではないかという。右京(水谷豊)は彼女の死を芹沢と調べると死亡した当日彼女は映画監督の川島(秋野太作)と接触していた。撮影中も不審な行動をする川島監督だが…。
◇出演者2
水谷豊、秋野太作、益戸育江、山中崇史、川原和久、山西惇、六角精児

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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