「PRESENTATION」。
それはあなたのアイデアや提案を説明する事。
プレゼンに求められるのは結果。
採択される事。
そこに発揮されるのがプレゼンの力です。
世界最大のプレゼンの場はオリンピック・パラリンピックの招致へ向けたプレゼンだと言われています。
その成否の影響は計り知れません。
これまで国際舞台で目にしてきたどのプレゼンよりも印象的で感動的だったとすら言える日本チームのプレゼン。
お・も・て・な・し。
おもてなし。
その結果2020年のオリンピック開催地は…。
(アナウンサー)いよいよその時です。
(歓声)東京への招致が成功した大きな要因の一つに日本の招致チームのプレゼンの成功があったと言われています。
これを舞台裏で演出したプレゼンのスペシャリストが「白熱教室」に登場します。
東京への招致のプレゼンをその構成演出更にスピーカー選びまでその全てに舞台裏で関わり成功させたのです。
バーリー氏のスポーツコンサルタントとしての大きな第一歩はロンドンへの招致成功でした。
立て続けにオリンピック招致を成功に導いたのです。
そして…今回の「プレゼン白熱教室」に参加してくれたのは慶應義塾大学ビジネス・スクールに在籍する学生たちです。
専門はさまざまですが多くに共通しているのが一度社会に出てから再びスキルを高めるべく学んでいる事。
今回は特別ワークショップでバーリー氏が出す難題に取り組んでもらいました。
実際にチームに分かれプレゼンを行ってもらいその過程で何がプレゼンにとって重要なのかどうすればよりよいプレゼンができるのか共に学んでいきます。
私がお伝えするプレゼンテーションのテクニックは世界規模の舞台での経験から得たものです。
それは皆さんが日常生活で出会う全ての機会でも生かせるコミュニケーションのツールにもできます。
仕事の面接や顧客へのプレゼンなど。
その技術を学んでさあプレゼンの達人になりましょう。
(拍手)こんにちは皆さん。
今回の特別ワークショップに参加してくれてありがとう。
まず皆さんにひと言日本語で言わせて下さい。
ドウモアリガトウゴザイマス。
Thankyoutoall.今回のワークショップでは「プレゼンテーションの秘けつ」をつかんでもらおうと思っています。
どんなプレゼンでもまず何を伝えようとしているのかどんな順で進めるのかまた目的も説明する事が大切です。
先に全体のロードマップを示すべきです。
そこから始めましょう。
まず簡単に私の事を紹介して次にプレゼンの具体的な技術について。
そして最後に私も皆さんも楽しみにしている課題について発表するという流れで進みましょう。
私と審査員がジャッジします。
ではまず少し自己紹介しましょう。
かつて私はスポーツジャーナリストでした。
最近はプレゼンテーションのコーチ役。
台本作りからリハーサルまで指導しプレゼンで使う素材のプロデューサーもしています。
これから学ぼうとしているプレゼンの技術はこれまで大統領や首相といった重要な地位にある人たちに指導してきたものです。
しかもオリンピックの開催地を決めるような国際的にも大きな舞台でのプレゼンのためにです。
しかしその技術は皆さんの日常生活やキャリアの中で度々あるであろう機会でも応用できるものです。
例えば今後仕事に関わる面接や社内でのプレゼンあるいは株主へのプレゼンといった機会に生かされるかもしれませんね。
では始めましょう。
まず基本は計算から始める事。
プレゼンの基本3つの内の1つです。
その計算の最初は「話す速さ」です。
もし15分のプレゼンならどんな速さで話すべきか。
プレゼンをスムーズに進められるように話せる量とその速さは?「速さ」という計算。
時間を計りどんな速さで話すのか決める事。
これまでよく目にしてきた失敗は例えば時間が20分というプレゼンで60枚ものスライドを用意しているケースです。
簡単に計算できますよね。
20分で60枚という事は1分で3枚という事になりますよね。
1枚につき20秒。
速すぎる。
これでは聴衆は何も理解せず何一つ記憶に残らない。
また重要なのはいわゆる第2言語自国の言葉でない言語で話す時にはゆっくり。
例えば皆さんが英語で話すならずっとゆっくり。
聴衆が確実に理解できるようにするためです。
2番目に計算するのは「キャスティング」です。
自分たちの中で誰が一番うまい話し手なのか見極める事が重要だ。
最も情熱が表現できるのは誰か。
誰が一番力強くスピーチを締めくくる事ができるのか。
プレゼンの内容に合わせて検討する。
それがキャスティングです。
ブエノスアイレスで行われた東京での開催を訴えたプレゼンテーションに向けて我々招致チームの間で一番長く時間を割いて話し合い検討したのがプレゼンに登場する順番でした。
キャスティングです。
誰がどんな順番で話すべきか。
日本で一般的で伝統的な話す順番はまず年長の人がそして次の人と年功序列で話す事が多いんじゃないですか?しかしこの順でのスピーチは国際的な場特にイスタンブールやマドリードといった都市と対抗して競っているような状況では最悪の並びです。
国内向けならそれでもいいでしょう。
文化的なものに根ざした順ですからね。
しかし国際的な場では間違いです。
発想を変えてベストな話し手をトップに持ってくる。
若くエネルギッシュな人が口火を切ってやがて真ん中辺りに落ち着いた人をといった流れも考えられる。
そういった組み合わせを考える事。
プエノスアイレスで行われた東京チームのプレゼンでは若い女性のスポーツ選手から始めたんです。
そのスタートのしかたは会場ではっきり感じられるほど聴衆に驚きをもたらしました。
聴衆がちょっと身を乗り出して椅子に座り直したかのような感覚。
「おっ何か違うな。
どうも想像とは違うプレゼンだぞ」といった具合です。
そうやって聴衆を惹きつける事ができた。
文字どおり聴衆はもう手のひらの上に乗ったも同然。
だからこそキャスティングに時間をかける。
それが重要なんです。
例えばプレゼンのメンバーがもう決まっているとか限られている時はどうしたらいいんですか?僕はあるメーカーで働いてきましたがチームで動く事も多い。
そういった場合なかなか誰が良くて誰が下手だとか言いにくいですよね。
そういう場合どうすればいいんでしょうか?キャスティングと言った時それは登場順の事でもあるけどチーム全体を見て誰が登場し誰が話さないかという選択もある。
全員が話すという必然はないからね。
そのチームにはどんな人がいて誰がベストでどんな順番で話すべきか考える事こそがキャスティングなんだ。
キャスティングをどうするかはプレゼンの内容をメンバーの個性にどう合わせるかでもある。
誰しもが最高のプレゼンターとは限らないからね。
当然の事だが誰もがプレゼンに慣れているわけじゃない。
では次に重要なポイントは数字「3」の力だ。
3でまとまる事なら膨大な例がある。
皆さんがよく知っている例から見てみよう。
知ってるね?3つだ。
フランス革命については歴史で学んだ事があるね?革命のスローガンは…これも3つだ。
3つのスローガンではこれが最初に掲げられたとされている。
…が他にもたくさんある。
3つの言葉に集約される事柄がいかに多いのか。
キリがないほど見つかるだろう。
これは東京の招致チームが行ったプレゼンに使われた3つ。
東京が約束した3つの強みです。
これも3つでした。
なぜ3つが良いのか疑問に思うでしょうね。
これはよく知られた理論でコミュニケーションにおける鉄則でもあるのです。
プレゼンで例を挙げる時は3つがいい。
もし短い文章を組み立てるならあるいは何かグラフを使うにしても3でまとめるべきだ。
必ずうまくゆくはずだから。
これらの技術的な事を3つまとめて「まず計算から」とします。
確かにいろいろな事が「3つ」という数字で捉えると分かりやすいというのもよく分かります。
でも「A」「B」「その他」といつも3つに分けられるわけでもないと思うんです。
どうやったら3つにまで絞って考えられるんでしょうか?他の数じゃ駄目なんでしょうか?教えて下さい。
う〜ん私が思うのは…日本では組織的に動くとか規律に従わせるのがうまいですよね。
ですからこんなふうに整理したらどうでしょう。
例えば6つ重要だと思われる点があったとしたら?その場合2つに分けたらどうでしょう。
プレゼンするのにどうしても6つ核にしたい事があったとします。
その場合まず3つ重要な点があり加えて3つ注目すべき内容があるとしたら?ちょうど「ケーキをどうやって切り分けるか」。
捉え方しだいですね。
こんなことわざがありますよね。
3つだったら話した事を全て覚えてもらえる可能性が高い。
ですから絞り込むための努力を惜しまない。
少しくらい数が多くてもいいじゃないかと押し切られないでより少ない数まで論点を絞り込む事です。
私の経験でもそうだ。
2020年に向けての招致活動で3つのキーワードを作ったあとからでも何度も言われた。
「その3つはなかなかいいけれどあと3つ足したらどうか。
いやあと6つ増やそう」。
そういった意見に対して「いえいえこの3つでいいんです」といつも繰り返していたんだ。
プレゼンではこの「3」という数字にまで勇気を持って絞り込んで。
何度も繰り返して言っているけどつまりまさに「3」。
これを試してみて。
とにかく3つにまで絞り込む事。
前の席の人どうぞ。
3つ伝えたい事があって重要度合いがそれぞれ違っている場合にやはり一番伝えたい事は後ろに持っていくんでしょうか?それとも場合によっては前に持っていくという事はあるんでしょうか?プレゼンで伝えたい一番重要な事は冒頭にそして最後にも話すべきだと思う。
プレゼンの技術の一つは「繰り返す」事。
どんなプレゼンでもまず聴衆に何を話そうとしているのか伝える事だと言いましたね。
そしてそれを話したあともう一度確認してもらう。
何を話したのか念を押すようにする。
私の最初のアドバイスが「プレゼンのロードマップを示す」でしたね。
ですから強く推したい点重要な3つの点についてはまず冒頭にくるべきです。
もし必要なら中ほどで繰り返して確認する事もいいでしょう。
ですが最後に繰り返して聴衆があなたが言う最重要ポイントはそこにあるとはっきり示すべきだ。
もし一度しか言わなかったら聞き逃されているかもしれない。
言いかえればプレゼンの準備は何が最重要なのか見つける事でもある。
他の何を置いても重要というその一点を見いだす事だ。
ありがとうございます。
アメリカ大統領バラク・オバマの写真だね。
今演説のうまさでは世界でもトップだろう。
50年前のマーティン・ルーサー・キング以来じゃないかな。
なぜそれほどまでに巧みなのか。
それはプレゼンテーションのテクニックを全て使っているからだ。
彼の声はある時は大きく次には下げる。
またペースも自在に操っている。
重要な点ではそれこそゆっくりと話しそして強調する時には間合いをとって聴衆が耳を澄ますとそこで最も重要な事を告げる。
これが彼のスピーチの技術だ。
まさに最高のプレゼン術の持ち主だがそこで使われているのが「3」の持つ力だ。
オバマ大統領の演説のしかたで私たちにも使えるような基本的なテクニックがありますか?優れたプレゼンターはどうやってその技術を身につけたんでしょうか?オバマ大統領が使うスピーチのテクニックの中でまたキング牧師にも共通する事はスピーチで聴衆をイマジネーションの世界へといざなう事ができる事だ。
キング牧師の世界で最も有名なプレゼンテーションの一節を思い出してほしい。
「私には夢がある」。
そう告げた時100万人の聴衆をまだ存在しない世界に導いたんだ。
未来へと連れ出しその未来に暮らす事を想像させた。
どんな暮らしになっているのかと。
オバマの演説もよく似ている。
より明るい世界に連れていってまるでそこにいるかのように感じさせる。
試してみよう。
「想像してみて下さい」という言葉を使う。
「これがどういう事なのか想像してみて下さい」と言ったら?例えばここ東京郊外の大学の一室に座っている皆さんに「さあ想像してみて下さい」と呼びかけ聴衆を全く別の場所にいざなう事ができる。
聴衆に別の場所を想像させるこうしたトリックもプレゼンテーションでは有効な手だてなんです。
さて次のポイントが最も重要だ。
「聴衆を知る」。
今日ちょっと私は不安に思っている事がある。
それは皆さんについて全く知らないという事。
どんな点が皆さんのツボをくすぐるのか。
皆さんの背景といったものも知らず白紙でここに来た。
皆さんを全く知らずにここに立っている。
話し手にとっては弱点だ。
聴衆を知らないと何を話していいのかすら分からない。
ですから聴衆がどんな人たちなのか知るのが何より重要です。
こちらの映像を見て下さい。
何とも不思議な組み合わせの人たちが並んでいますね。
これは東京が2020年をプレゼンした時の世界中から集まった聴衆つまり審査員たちです。
アメリカからジンバブエに至る各国のスポーツ選手20人ほどと中東を含む世界中から来た70歳代80歳代の王室関係。
どうやったらこの人たちの事を知る事ができるでしょうか。
もし皆さんが東京招致チームのメンバーの一人ならどうしますか?どうやって相手を知りますか?これらのバラバラの何のつながりもない人たち。
彼らが興味を示すだろう点を見つけ出す事ができるでしょうか。
どんなプレゼンをする時にもしなければならない事。
例えば何か製品をプレゼンする時プレゼンする相手のメンバーは?誰がマーケティング担当なのか名前を知るだけではなく性別や出身言語あるいは何を求めているのかなど。
相手を知る事で初めて何を話すべきか何を言えば相手の心に響くのかなど分かる事ができるからです。
前の方どうぞ。
プレゼンテーションの前どのくらいの時間を相手を知るために割くべきなんでしょうか?実は相手を知るためにかかる時間は意外に少ないものなんです。
これはどうです。
私の会社で新人が入ってきた時に禁止する言葉があるんです。
それは1つだけ全てのミーティングで禁止しているのです。
その言葉は「恐らく」。
「恐らくこのくらい」とか「恐らくこうだ」という臆測でものを言う事は禁止。
決して推測してはなりません。
例えば相手がオーストラリアの人だからといって「多分クリケットが好きだと思う」なんて考えてはいけません。
全く外れているかもしれません。
聞けばいいんです。
ネットにも情報があるでしょう。
相手の事を調べて下さい。
鍵となるのは質問する事です。
決して臆測する事なく相手に聞く調べる。
とにかく相手の事を調べてみましょう。
意外に費用はかからないものですよ。
前列の女性どうぞ。
プレゼンの焦点はどうやって絞ったらいいんでしょうか?例えば聴衆もいろんな意見を持っていると思うんですがどの人に焦点を当てるべきなんでしょう。
相手の中で重要な人向けにプレゼンするのがいいのか全体を狙ってするのがいいのかどちらですか?答えはシンプルです。
それはまた聴衆を知る事から答えを導く事ができるはず。
たとえ20人いたとしてもその中で決定権を持つのが1人ならば聴衆はたった1人という事。
他の19人は対象外。
もし全員が同じような力決定権を持って1票ずつの投票で決まるというのであれば全員に向けてプレゼンするべきですね。
そういった意味でも聴衆を知る事がやはり重要になるわけです。
プレゼンの対象がおのずと絞れるでしょう。
では君。
ネガティブ・キャンペーンというものがありますよね。
時にはジョークにまぶされてとかありますけど。
しかしとても難しい。
やり過ぎると逆効果だしかといって対抗しなければ痛手も受ける。
どう対応できますか?それはより高度なテクニックですか?そうですね。
私もネガティブ・キャンペーンがある事は認めます。
特に政治の世界では頻繁に行われます。
だがプレゼンの場合で考えてみると例えばそれが今回皆さんにチャレンジしてもらう課題でも人生の中で出会うプレゼンの機会でもそこにあるリスクを考えるとできるかぎり避けた方がいい。
逆にそれが思った以上にはね返ってくるからかえってあなたが安っぽく見えダメージを受ける。
むしろポジティブな面に集中して下さい。
対抗する相手の欠点があなたの提案をより強調するという事はあるでしょう。
東京のプレゼンをもう一度考えてみると確かに東京の財政的な強みについては多くを語りもしました。
対抗するマドリードスペインの財政状況はどん底でしたしイスタンブールの財政基盤も弱かった。
だがあなたの強みは相手の欠点をつかなくても十分主張できるはずだ。
そこが重要なポイントだと思う。
いいアドバイスでした。
例えば演説がうまいとされるオバマ大統領でさえネガティブ・キャンペーンとまでは言わないが相手をけなすジョークは使いましたよね。
ひと言だけでしたが当時対抗馬だったジョン・マケインに対して。
またITの世界では皮肉をぶつけるといった事がよくあります。
そういったテクニックも使えるんでしょうか?ユーモアというのはものすごく力のあるツールだ。
なぜユーモアにそれほど力があるかというと一瞬にして人々の心の壁を取り払えるからだ。
聴衆はまず身構えているものです。
「さあ何を話す気だ。
話してみろよ」といった具合。
それがジョークを一つ聞いた途端に心を開く。
そして話し手の言葉を聞くようになる。
プレゼンの場ではショートコントをすればいいかもしれないが言葉でユーモアを活用しようとするとなかなか難しいと思う。
イギリス人と日本人あるいはアジア人アメリカ人とではユーモアのセンスは全く違うでしょう。
感覚も違う。
ユーモアは難しい。
成功させるには確かな言語能力文化的にも適切な範囲でという自信も必要だ。
誰かにとって失礼にあたらないか調べる必要すらある。
Thankyou.では次へ。
「インパクトを作れ」。
これはアーネスト・ヘミングウェーだね。
作家としては申し分ない実力だというのは誰もが認めるね。
ここに登場してもらったのはある逸話からだ。
あるバーでこんな挑戦を受けた。
「10以下の言葉で物語が書けるか。
100ドル賭けようじゃないか」と。
彼はこう答えた。
「よし受けた。
簡単さ。
物語を書こうじゃないか」。
ヘミングウェーが書いたのがこれだ。
これで6語。
これで皆さんをとりこにできますね。
この靴にはどんな背景があるんだろう。
赤ちゃんはどうしたのだろうか。
人を惹きつける物語がそこにはある。
もちろん100ドルはヘミングウェーが勝った。
これほどシンプルな言葉がいかに人を惹きつける事ができるか知ってほしかったから例とした。
プレゼンではまず人々の注意を引く事が肝心。
興味を抱かせるそれだけがプレゼンで聴衆の関心を惹きつけ続ける事ができるからだ。
次のポイントは「インパクトを持続させる事」。
ここでグラフを見てもらおう。
これは音の波形だ。
いろいろな音を出してそれを操る必要がある。
これはひどい音の例だ。
言ってみればひどいプレゼンもこんな感じ。
強烈に始まったかと思うといきなり崖っぷち。
だんだん良くなって再び盛り上がったかと思うとまた崖。
聞いているのも苦痛になる。
良いプレゼンはこんな感じ。
音の波形でいうと古典的な形だね。
次第に盛り上がっていってピークを迎え徐々に下がったところでは基本的な情報が説明される。
また徐々に盛り上がって力強く訴えかける。
この内容は一人の話し手に当てはめてもいいしまた何人かがそれぞれ役割を持ってもいい。
全体のプレゼンテーションの流れで考えてもいいだろう。
最初のピークは1人目で下がったところは2人目の説明次の3人目へとつなげる。
こうしてプレゼンの中に光と影を作っていく事も重要だ。
にぎやかさと静けさ。
繰り返し聴衆を惹きつけまた注意を引く。
後ろの君どうぞ。
山と谷が入れ代わるタイミングというのはスピーチのプレゼンテーションの序盤とないしは終盤とでその間隔の違いというのはあるんでしょうか。
それともプレゼンテーション全般を通して一定の間隔で山と谷が入れ代わるという理解でよろしいんでしょうか。
どんな間隔でも問題ないでしょう。
だが近すぎては駄目ですね。
曲線が急すぎる事になる。
だが決められた間隔とかがあるわけではない。
注意したいのはプレゼン全体が盛り上がったままにしない事。
あるいは逆にただ数字やディテールにばかり言及してつまらないものにならないように。
どうしてもプレゼンには説明的な具体的な事が含まれている事も必要ですが主張を伝えるためには生き生きとした魅力にあふれるようなプレゼンが盛り上がるような部分も必要です。
では次のポイントへ進みましょう。
「視覚的に作れ!」。
写真を見て下さい。
右側の人物が分かりますか?分かった人もいるようですね。
スティーブ・ジョブズです。
ここで登場してもらったのは彼の起業家としての功績からではありません。
個人が使えるコンピューターを世に送り出し暮らしを一変させたからでもありません。
ジョブズはプレゼンのしかたにも劇的な変化をもたらしました。
プレゼンソフトを使って文字や写真を詰め込みポインターで指しながら時には20枚ものページを見せながら読み上げるだけというのをよく見かけます。
それはひどいプレゼンになる。
コミュニケーションのとり方としても最悪ですね。
私が話している事が最も重要なのであって私そのものがここでは今重要なはず。
そうでなかったら「さあどうぞプレゼン資料ですコピーしてお持ち帰り下さい」で済んでしまうでしょう。
この点でスティーブ・ジョブズは最高の例を見せてくれる。
これはスマートフォンの端末を発表した時のものです。
この時彼はたくさん書き込まれたスライドを見せたりしませんでした。
たった5つの言葉で表現した。
「今日我が社は電話端末を再び発明しました。
新スマートフォン」。
これを読んだ聴衆は彼が何を言おうとしているか瞬時に理解し再び彼が何を言うのか耳を傾ける。
そこで告げるのは「20年にわたって行ってきた技術開発それを電話端末に注ぎ込みました」などなど。
そして次のキーワードへと続ける。
ここで伝えたいのは決して情報を詰め込み過ぎない事。
「視覚的に作れ!」です。
英語のことわざでは…いいイメージは人を別世界にまでいざない多くの事を見せてくれる。
視覚的に作るという事はあなたが言わんとする事を後押しするためだ。
再びオリンピック招致から例を見てみよう。
リオデジャネイロが2016年の開催を勝ち取った時の表現です。
そこには数々の勝利の要因があったと思います。
リーダーが良かった強いビジョンがあったなどなどあるでしょう。
ですが勝因の一つはその主張をたった一つの視覚的なものにできた事にもあるんです。
オリンピックの歴史をひもとくとヨーロッパでは30回も開催されているんです。
アジアで5回オセアニアで2回北米は12回。
ところが南米では1回たりともありませんでした。
ここに1を加えたんです。
リオデジャネイロの主張はそこにありました。
一枚のビジュアルに凝縮できた。
これまで開催しなかった大陸に五輪を。
聴衆はその主張にのみ込まれました。
たった10秒で。
この一枚で全てが伝わった。
次のテーマは…プレゼンが終わったところで聴衆が「テーマは何だったんだ?何が売りだったんだ?」とならないように。
きちんとメッセージが伝わらなくてはなりません。
これが私が皆さんにしてほしい事です。
「こうしましょう」という明確なメッセージ。
何をどう売り込もうとしているか明確に示して下さい。
スティーブ・ジョブズはこんなやり方もしました。
たくさんの製品や利点面白いものがあるがそこそこというものもある。
ですがベストなものを最後に持ってくる。
最高のものを最後まで残しておく。
プレゼンの最後に「そうだ最後に一つ」。
この「もう一つ」というのがいつも最高のものを示していました。
この時のスマートフォンの発表では45分以上新しいソフトや機能に関して発表され最後にもう一つとしてスマートフォンが登場し我が社が再度発明すると締めくくった。
これもテクニックですね。
最後に言われた事が一番記憶に残るんです。
私はいつも大事な事は最初に途中で繰り返しそして最後にまた言って下さいとしています。
だがジョブズはなぜこのテクニックで最後に残したのか。
プレゼンは劇場のようなもの演技もしなければならない。
ふだんの慣れた領域の語り口から離れる事も必要です。
東京への招致では太田雄貴さんにこんなジェスチャーをしてもらいました。
ふだんの暮らしの中ではいくら彼でもこういったジェスチャーはしないはずですよね。
これは言葉以外のコミュニケーション手段で訴えているわけです。
言葉によらないコミュニケーションの活用も重要です。
後ろの君。
伝えるメッセージを絞り込む事にリスクは感じませんか?一つの焦点にメッセージを絞り込む事に疑いとまでは言いませんが不安に感じます。
聴衆も別の事に関心があるかもしれない。
とても興味深い指摘ですね。
私が間違っているかもしれませんがこれには文化的な背景があるのではないかと思います。
日本の伝統的な文化では何か一色に染めてしまう事を嫌うのではないでしょうか。
思い当たる事があるでしょうか?しかし世界で成功したメーカー各社を見てみると自分の製品の主張を一つに絞り込んでいます。
例えば北欧製の車を買う時それは安全性を買っているのではないでしょうか。
もちろん速い車で便利な車でもあるしもっといろいろ優れた点もあるでしょう。
しかし何と言っても安全性そこを買う。
どうでしょうはっきりとした自信が必要ですね。
自分の製品の何が売りか自信がなかったら売る事なんてできませんね。
そして次は練習する事。
プレゼンはある意味劇場だと言いましたね。
いい芝居にはいい演技が欠かせない。
演技それは練習を重ねる事でしか上達するわけがありません。
「東京2020」のプレゼンのためのリハーサルはどれほど行ったか数えきれません。
45分のプレゼンのリハーサルを45時間以上はやっています。
個別にであったりグループで行ったり。
その結果プレゼンに登場する人たち全員が最高の状態。
自分たちがプレゼンの場で何をするのか完全に理解していました。
もちろんこれは巨大なプレゼンの場です。
だからそれほどの努力も注がれる。
しかしどんな小さなプレゼンであろうとも決してリハーサルなしで臨むべきではありません。
せめて1回あるいは可能なかぎり数多くリハーサルすべきだ。
ここで「リハーサル」と私が言うのはデスクに向かってプレゼンソフトを見ながら頭の中でやる事じゃない。
実際に本番と同じにやってみる。
仕事仲間でも家族でもいい誰かの前に実際に立ってリハーサルする事だ。
理想は本当のリハーサルでプレゼンする部屋と同じような場所で行うべきだ。
視覚効果なども同じようにできる場所で。
できるかぎり本場のプレゼンに近い形でするべきなんです。
リハーサルとは観客以外は全てプレゼンの当日にあるべきものを用意してする事。
皮肉な事に私もかつて若くてまだ学校に通っていた頃はプレゼンが大嫌いだったんです。
もし私がこのクラスに参加していても手を挙げない一人だったはず。
きっと後ろの方に座ってこんな感じ。
しかし時が流れるにつれプレゼンを不快には思わなくなり何ともないと思えるようになってきたんです。
そして練習とリハーサルの重要性を身にしみて感じるようになっていったわけだ。
何度もプレゼンを練習するうちにきっとうまくなっていく。
朝身支度をしている間に鏡の前でやってみる。
昼休みなら頭の中で昼御飯を食べながらでいい。
そう。
練習すればするほどうまくなれるんだ。
後ろのシャツの人どうぞ。
練習をしすぎる事による問題点というのもあるのかなと思いまして。
というのは練習の場合には聴衆がいないで本番では聴衆がいますので本番での空気感雰囲気というものがありますのでそれに応じてしゃべり方を変えたりだとかそういった事はした方がいいのかなと思ってますのであまりガチガチに練習しすぎますともうそれしかできなくなるのではないのかなと思ってるんですがその点についてどうお考えですか?なるほど。
君の意見には全く同意できないね。
リハーサルしすぎる事は決してない。
そんな事はありえない。
リハーサルこそ全てだ。
リハーサルする理由は自分の脳を訓練する事だからだ。
ちょうどマラソンランナーなら誰でも筋肉を鍛えるだろう。
リハーサルは脳を訓練する事なんだ。
だからもし何かがうまくいかなかったとしてもそれを乗り越えてうまくやり遂げる事ができるだろう。
だからリハーサルしすぎる事はありえないと信じている。
リハーサルのしすぎはよくないという人には演技の向上という点だけでも論破できるね。
観客の有る無しという点では観客の有無は君の頭の中で処理できる。
君がプレゼンに自信を持てて脳も鍛えられていればある種観客を感じないゾーンに入れる。
観客の事は忘れられる。
リハーサルを繰り返す事で自分に自信が持てる。
自分自身でリハーサルすれば自分に自信をつけられチームでリハーサルすればチームに自信がつく。
互いに自信を身につけ互いに力を与えられる。
そうすればある日プレゼンの準備が完了するんだ。
私はリハーサルの熱烈な信者だと言わざるをえない。
後ろの女性どうぞ。
英語で話す時自分がよりシンプルに話そうとしている事に気付かされます。
細かいディテールを伝える事を諦めてより簡潔に伝えようとしてしまう。
日本語と英語の違いなのかとも思いますが…。
例えば日本語には同じ言葉でも違った意味を含む言葉がたくさんあります。
「おもてなし」もその一つです。
そんなジレンマを感じた事はありませんか?そんな時どう対処しましたか?う〜んいい質問だね。
しかも広い意味でも不可欠な質問だと言える。
質問にもあった「おもてなし」という言葉がいい例だね。
我々はその言葉について何か月もいや何年もかけたんです。
その言葉が最初に挙げられた時「それはこういう意味ですか」とそれは何度も何度も英語で説明する事を試みたんだ。
英語で説明してみると日本人の同僚や友人から「そうじゃないちょっと違う」と指摘されてばかり。
最後には諦めた。
説明する事に意味があるだろうかと。
その言葉の重要性はその正確な意味じゃないその中に含まれている感情にある。
そこにポイントがあるんじゃないかな。
君の質問に答えよう。
あまり語学や言葉にとらわれすぎないように。
あなたの話に耳を傾ける聴衆は正しい言葉を使っているかなんて事に関心なんてない。
何を伝えてくれるのかその一点に興味を持っているはずだ。
「ロンドン2012」のプレゼンの時話し手の一人がフランス語を話しました。
フランス語の程度はお世辞にもうまいとは言えないもの。
それでも聴衆のフランス人はフランス語を使ってくれたというだけで喜んでくれた。
ひどいイギリスなまりだったけれども感情に訴える事ができたんです。
ここに見落としてはならないポイントがある。
日本で仕事する時私の大のお気に入りの事なんですが皆さんが英語を話してくれる事です。
仕事で一緒になる人たちは皆すばらしい英語を話すんです。
決して完璧な英語ではないはずだが使えている。
だが皆口々に「完璧にできない。
英語を話すのは下手なんです」と言う。
私から見れば英語を話す事自体が驚きだ。
私の国の言葉で話してくれている事自体に大感謝だ。
だって私はあなた方の言葉を全く話せないのだから。
皆さんがコミュニケーションをとろうと努力している事それが重要なんです。
ですからあなたもどうぞ皆さんも「うまく話せない」なんて自分自身を縛らないでほしい。
もし英語でプレゼンしてくれるならそれだけでまず感謝の念を抱く。
こうやって英語で質問できたんだからきっとできる。
プレゼンだってできるはずだ。
自信を持って下さい。
ではいよいよプレゼンです。
今日の講義の最後だ。
いよいよ実践に進むんだね。
まずテーマを抽選で決めていこう。
みんなも私も一番楽しみにしている事プレゼンテーションの課題に取り組もう。
次回そのプレゼンに私と審査員8名がジャッジする。
課題はオリンピックの開催都市にとっては非常に重要な事膨大な数の人々が訪れるという事を考慮して選んだ。
ロンドンの場合ではオリンピックを見るためだけでも70万人が訪れた。
ここで2020年の東京を念頭に置いて訪れた海外からの人々にこの国日本の個性すばらしさその精神を体験してもらうためにどんな事をしてほしいか外国の人にプレゼンを行ってほしい。
課題は与えられた6つとします。
何のために来ていてもそれは済んだ。
一日日程が余った。
見るべきものは既に見た。
そこで日本の魅力を感じるにはどんな事をすればいいのかガイドブックには載っていないあるいは普通の観光旅行では得られないそんな体験を。
テーマはこれだ。
プレゼンは私と外国人の審査員たちに日本での最後の思い出になぜ貴重な最後の一日を使ってその体験をすべきなのかプレゼンしてほしい。
与えられたテーマがなぜふさわしいのか薦めてほしいんだ。
ではそれぞれのチームの代表に登場してもらい課題をそれぞれつかんでもらおう。
まるでFIFAの抽選みたいだな。
ここからボールを1つずつ選んでもらおう。
さあ始めよう。
箱の中に6つのテーマが入っている。
チームの代表は?123456。
私は英国紳士だからレディーファーストでいく。
これは譲れない。
最初だね。
さあテーマは何かな?デパ地下。
学生たちはそれぞれ箱の中からテーマを受け取りました。
それぞれのテーマについてプレゼンできる時間は15分間。
もちろん審査員から鋭い質問が返ってくる事も想定しなければなりません。
実際にプレゼンを行ってもらうまで学生たちに与えられた時間は僅か48時間です。
(拍手)皆さんどうもありがとう。
では最後に。
ここまで私が伝えてきた事がこのプレゼンを作っていくうえで役立つ事を願っています。
これまで説明してきたテクニックは全てこのプレゼンにも役立つものです。
きっとすばらしいプレゼンができると期待しています。
本当に楽しみにしています。
きっとこの48時間は厳しい時を過ごす事となるでしょう。
私たちが大きなプレゼンに向かう時には何週間もリハーサルに時間をかける事ができました。
皆さんに与えられた時間は決して長くありませんが頑張って下さい。
どうぞ頑張って。
ではまた次回お会いしましょう。
(拍手)
(拍手)とても難しい課題で短い時間でプレゼンを組み立てるのは厳しいでしょう。
しかしどのチームもきっと良いプレゼンを行ってくれる事と期待しています。
プレゼンで最も重要な点聴衆を理解するという事がどこまでできるか注目しましょう。
2015/07/03(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
プレゼン白熱教室「前編 そのプレゼンで未来が動く!」[二][字]
ロンドン、リオ、東京と3大会連続でオリンピック招致を成功させた「プレゼン指南の達人」ニック・バーリー氏が2回に渡り慶応ビジネススクールで特別ワークショップを開催
詳細情報
番組内容
特別ワークショップ1日目は講義スタイル。「プレゼンの相手を見極める」、「3つのポイントに絞る」、「インパクトを演出する」、など、プレゼンを成功に導くいくつもの具体的なテクニックを紹介。聞き手の心をつかむプレゼンにはどんな秘けつがあるのか。バーリー氏が国際舞台で磨いてきたノウハウを教えます。職場や学校で、明日からすぐに使えるテクニックが満載です。
出演者
【出演】ニック・バーリー
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
英語
サンプリングレート : 48kHz
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