(子どもたち)2345678…。
(織田みゆき)お疲れ様です。
第一発見者は部屋のオーナーだったようですね。
(宮下晴彦)ああ。
賃貸にして借り手を探してたらしい。
風通しに来たら知らない男が死んでたってんだから驚いたろうなあ。
どうやって入ったんでしょう…。
(富樫謙三)ここに内見用の鍵置いといたんだと。
(鑑識課員)よいしょ。
これ薄いな…。
おっ!おい!出たぞ!出た出たおい。
よしよし…。
(鑑識課員)あっこっちもだな。
よしっと。
(堂本治)腐敗の程度から死後一週間ってとこですねえ。
顔の判別も出来なくなってますが首に刃物で切られた傷が残ってました。
死因は出血性ショック死で間違いないでしょう。
(曽根武雄)よし解剖結果を待つ。
はい。
(曽根)おい糸村!遺留品の優先順位。
(糸村聡)あっはい。
まずはこれでしょうか。
「葛本工業」と会社名が書いてあります。
仕事先かもしれません。
それからこちらのマッチ箱ですね。
ご覧のとおり中は空っぽです。
だからなんだ?空のマッチ箱をとってあるなんて何か特別な思い入れのある店なのかもしれません。
ただ使い切っただけじゃないのか?そうですね。
ほかには?あっあとは指紋とDNAでしょうか。
織田君。
はい。
監視カメラは?手配してあります。
ただし死後一週間以上経っていますので…。
事件当日のものが残ってるかどうか際どいところだな。
あっそれともう一つ。
ん?なんだ?えー…。
これですはい。
ん?えー「明太子おむすび1個120円」ってこれ…。
…の裏です。
(曽根)これなんの番号だ?なんの番号だと思います?さっさと言えよ!僕もわからないから聞いてるんですけど…。
いいよ!宮下。
(宮下)はい。
この会社当たれ。
ほかは地取りだ!
(刑事たち)はい!
(宮下)行くぞ!
(宮下)お嬢まずはマンション住民への聞き込みだ。
マッチは?ん?電話ぐらいお前だってかけられるだろ。
捜査に関係のある遺留品をあげるのが科学捜査係の仕事だ。
調べてから報告しろ!…はい。
「1192」…。
(加藤典子)1か月くらい前だったかしらねえ。
いつの間にか変な人が越してきたと思ってたんですよ。
変というのは?この間ね買い物に出た帰りにここら辺ですれ違ったんです。
でこんばんはってあいさつして。
そしたらちょっと部屋の中が見えたんです。
なんにも置いてなくて!もう夕方だったのにそのあと明かりもつけないしもうなんか気持ち悪くて!
(大橋直子)ほんと怖いですよね。
こんな近くであんな事件があるなんて…。
何かご存じですか?ご存じも何も…。
みんなで怪しいねって言ってたんですよ。
怪しい…といいますと?
(子どもたち)123456…。
(吉本孝一)はい。
(大橋裕美)ありがと。
いい子だね。
写真撮ってあげようか?
(裕美)うん。
じゃ笑って。
(シャッター音)
(直子)裕美こっちおいで。
(直子の声)断りもなくうちの娘の写真撮ったりして。
勝手に撮るんですよ。
それは近所のママたちだってみんな怖がってて。
なんかいつも怪しい人が…。
(大橋正樹)おい。
まだ行かないのか?裕美待ってるぞ。
すいません。
今日出かける予定なんです。
せっかく主人が有休とってくれたんで。
すいません。
ありがとうございました。
裕美ごめんね〜!お待たせ!よしさあ行こう!
(香川恭史)ええ。
確かにうちのタオルですね。
最近連絡がとれなくなった従業員の方などいらっしゃいますか?はい。
実は吉本って男が急に連絡とれなくなって…。
ああ。
その方の住所教えて頂けますか?あっいやそれが…。
(香川の声)じゃあ身分証も持ってないの?あのすいません今住所なくて…。
でも今までこういう仕事いっぱいしてきたんでよろしくお願いします!
(香川の声)ここ何年かネットカフェだとか簡易宿泊所で寝泊まりしてるらしくてね。
最近じゃああんまり珍しくないんですが…。
(福岡渉)じゃあ身分証も確認せずに雇ったんですか?おい。
例えば同僚とのトラブルなんて事はなかったでしょうか?
(香川)いやあ…ないと思いますよ。
控えめな子だったけど周りが嫌がる仕事も自分から引き受けてたし…。
(大石鉄夫)こりゃダメだ落ちないな。
(大石)捜査と関係ないでしょう。
(邑上)いやいやいや係長も一緒に行ったじゃないですか!それとこれは話が別なんだよ。
いやいやいやちょっとそれはないじゃないですか係長。
(邑上)係長!「この番号は現在使われておりません」「番号をお確かめになっておかけ直しください」喫茶安里今はなき安里か…。
(横山恵一)ちょっと糸村さん。
ん?防犯カメラのチェック僕ばっかりにやらせないで手伝ってくださいよ。
目ぇチカチカしてきましたよ!だって事件当日のはもう消去されちゃってるんでしょ?だからって全く見ないわけにはいかないじゃないですか!そうだね。
(あくび)ちょっと待って。
今の何?あのあの人あの人!ちょっと巻き戻して。
なんか映ってました?えっと…。
そうそうそうそうそう…。
(横山)ああはいはいはいはい。
宅配便じゃないですか?今なんて言った?宅配便。
痛っ!えーと…。
宅配便…。
「1192‐756‐145」…。
違うか…。
なんすか?「いいくになごむひよこ」って。
ん?すごいひよこなんじゃない?なごむのにすごいひよこ…?紀藤君がよく知ってるよ。
(紀藤)え?
(横山)知ってるんですか?いや…。
横山君あとよろしくー。
え?えっ!?ありがとうございます。
ふーん不思議な写真ですねえ。
へえ〜。
ああこれなんかモノクロなのにこうやわらかな日差しを感じますね。
(笹本智子)ありがとうございます。
コントラストを抑えてあるからそのせいかもしれませんね。
コントラスト?この写真も。
撮った時はこう黒い影になってたんですけど覆い焼きといって紙焼きの時に露光を抑える事で淡く仕上げるんです。
ふんふんふんなるほど。
すいませんあんまりよくわかってません。
あああっちはまた雰囲気が違いますねえ。
(智子)それはまだ自分でも手探りだった初期の頃の作品です。
へえ〜。
いやしかし写真家の方とは知りませんでした。
しかも新人賞の中でも最高峰といわれる川村藤兵衛賞を受賞されてる。
私もまさか警察の方からお電話頂くとは思いませんでした。
あっお話ししておいた宅配便の件なんですけれど…。
これです。
あっすいません。
「吉本孝一」…差出人に心当たりはないんですね?ええまるで…。
失礼します。
写真とネガですか…。
中身はご存じなかったんですね。
ああいえ…。
あれ?なんとなくなんですけどあなたの作品とこれ似てませんか?
(智子)そうでしょうか…。
私の作品を熱心に見てくださってる方だと思うんですけど毎年年に数回送られてくるんです。
見知らぬ男から毎年…?こう言っちゃなんですけどあんまり気持ちのいいものじゃなかったでしょうね。
ええ…。
あっこれ以前のものは?以前のものは処分してしまいました。
そうですか。
あっではお借り致します。
あっすいません。
もう一つだけ。
あの…安里というお店にお聞き覚えありませんか?西池袋にあった喫茶店なんですけど。
さあ…?そうですか。
では失礼致します。
(宮下)起立!
(宮下)敬礼!着席!これから目黒区マンション殺人事件の捜査会議を行う。
まずは検案結果室田仁。
(室田仁)はい!被害者はアスベスト肺を患っていた事がわかりました。
(曽根)アスベスト肺?石綿の粉塵を吸い込んだ事で起こる塵肺の一種です。
進行すると肺がんを引き起こすといわれています。
相当劣悪な環境で働いてきたようだな。
次地取り。
織田!はい。
被害者は近隣住民から不審視されていたようです。
(上野英明)実は最近管内で同一犯と見られる婦女暴行事件が続いておりましてその不安もあったと思われます。
(佐倉涼子)はい。
(曽根)はい。
(涼子)被害に遭った女性の事情聴取を担当しましたが犯人は犯行時ゴムマスクをしていたようで顔は見られてません。
中にはその事件の犯人がガイシャだと思っていた方もいました。
念のためその線でも調べてみろ。
はい。
よし鑑取り。
宮下。
(宮下)はい。
ガイシャは吉本孝一と名乗り日雇いで働いてました。
履歴書にあった生年月日本籍等を確認しましたが同人物は存在しませんでした。
偽名の可能性が高いな。
(宮下)はい。
次遺留品。
糸村。
はい!レシート裏の数字は宅配便の追跡番号でした。
受け取ったのは写真家の笹本智子という女性で中身は写真とネガでした。
年に数回吉本孝一という名前で送られてきていたようです。
一応住所も調べてみましたがでたらめでした。
写真家だと?ええ。
有名な賞を受賞していますがその後の評価はいまいちだったようです。
んな事は聞いてない。
被害者との関係は?彼女の作品は写真雑誌などに掲載されていますからそれを見た誰かが送ってきたのではないかと言っていました。
一種のファンのようなものか。
しかし写真を見る限りでは今回の事件と関係があるようにも思えんが…。
一応画像解析に出そうと思っています。
捜査経費は限られてるんだ。
一つ調べれば別の一つが調べられなくなる。
ねえ?よく考えてからにしろ!はい。
よく考えてから調べ何かわかったら報告します。
以上です。
はい次!
(村木繁)うーんこれどこもおかしいとこないんじゃないですか?諦めずに歩みを止めなかった者だけがゴールを踏む事が出来る。
…って誰かが言ってました。
歩み止めてるわけじゃないですよ。
いいですか?急ぎの仕事後回しにして無理矢理やってんだからちょっとは空気読みなさいよ!ああもう…!
(村木のため息)なんかここに変なもの写ってません?ちょっとここもうちょっとガッと大きくしてもらえます?もう一つこうガッと。
はい。
暗いですねえ。
明るくして頂けますか。
はいはい。
はいうんうんうんそうもっと。
もうだーっ…!それじゃあ全体に当たるから…。
ああもううるさい!うるさい!いいですか?これ元の写真が黒つぶれしてるんだから今いくら明るくしても見えないの!じゃどうすればいいんですか…。
一つだけ手があります。
さすが村木さん。
どんな手ですか?順番を守るという手だ!もういっつもこっちの順番守らず…。
いいですか?科捜研あなただけのためにあるわけじゃないんだから!その手があった!えっ!?
(ドアが開く音)ああ!もう光は…!もう上手くいってたのに…!もう閉めて閉めて!
(横山)あっああああああ…。
ああ〜もう…。
(横山)何してんですか?一体。
覆い焼きだよ覆い焼き。
ああもうそんな事してる場合じゃないですよ!DNAの分析結果が出たんですけど…。
ああそうなんだ。
じゃあ代わりに持ってっといてくれる?はあ?露光だけじゃなくて現像液の調合も関係してくるから難しいんだよなあ…。
ちょっとこれ嗅いでみ?きついな…。
(横山)あっ係長。
おお糸村どうした?なんか写真を現像してました。
あの馬鹿が…。
まあどうでもいいや。
それで?ああ被害者のDNAの分析結果です。
警視庁のデータベースに一致するものがありました。
失踪者か?いえそれが…。
(曽根)DNA鑑定の結果死んだ男は7年前に殺人を犯し逃亡していた桐原俊一だという事がわかった。
(加賀見享)うちの特別捜査一係で継続捜査を担当している神崎君に事件について説明をしてもらう。
頼む。
(神崎徹)神崎です。
(神崎)えー2004年12月13日豊島区にある明成美術大学のスタジオで遺体が発見されました。
(神崎)死亡したのは写真学科教授藤岡嘉一。
当時44歳。
死因は頭を強く打った事による頭蓋骨底部骨折です。
現場にあった照明用機材が傷口と一致。
機材からは指紋等は検出されませんでしたが爪から被害者のものではない皮膚片が見つかったため藤岡教授は何者かともみ合った末頭を殴られて殺害されたものと思われます。
聞き込みの結果同じ写真学科の学生桐原俊一が現場から逃げるのを見たという複数の証言がとれたため捜査員が桐原のアパートへ向かいましたがすでに逃亡したあとでした。
この時桐原の部屋からDNAを採取。
遺体の爪に残された皮膚片と照合したところ完全に一致しました。
(加賀見)動機はなんだ?あとの調べで遺体の周りに散乱していた写真が桐原のものだという事がわかりました。
藤岡教授は学生の作品に対して評価が厳しい事で有名でしたので…。
(加賀見)自分の写真を否定されて衝動的に殺したってわけか?
(神崎)桐原は高校時代にもいじめから遺書を残して家出し捜索願を出された事などがありました。
内向的な反面思いつめると極端な行動に出るところがあったと思われます。
殺人であればなおさら今回の事件との関連は否定出来ん。
7年前の関係者のリストを配布しておいた。
各自洗い直せ!
(刑事たち)はい!本部からも捜査員を増員する。
以上だ。
(刑事たち)はい!みんな労を惜しむな!
(刑事たち)はい!上野さん。
(上野)はい。
笹本智子ってこの間名前出ましたよね?出ました。
行きましょう。
きた…。
(村木)覆い焼きですか?ええ。
現像の時にこうやって露光を遮る事でコントラストを抑える事が出来るんです。
知ってるよ。
でここまでやったんですけどどうします?仰せのとおり。
ったく本当にもう…はい閉めて!はい。
うん。
これ何か持ってますねえ。
解析よろしく。
(2人)猿?まさか桐原君だったなんて…。
桐原が7年前に事件を起こして逃亡していたのはご存じですよね?はい…。
事件当時あなたは明成美大の大学院にいて藤岡教授のゼミ生だった。
そしてなぜか桐原はあなたに写真を送り続けていた。
桐原との関係を聞かせて頂けますか?当時もお話しした事ですけど大学生の時教員免許をとるために教育実習を受けた事があるんです。
(智子の声)学校の先生になるつもりなんてまるでなかったんですけど美大に行かせてもらった親の手前もあって…。
あまり気が乗らなかったんで実習中もカメラを持ち込んで休み時間に撮影してたんです。
ちょっと君。
(智子)一枚撮らせてもらっていいかな?いくよ。
(智子の声)それが桐原君でした。
これぐらいの明かりだと多分…。
(智子の声)それから時々写真の事を教えてあげたりして…。
はい撮ってみて。
(シャッター音)でも所詮は実習が終わる4週間の事です。
それからは特別彼の事を思い出す事もなくなってました。
でも桐原も同じ美大に入学したんですよね?2年程あとの事です。
(智子の声)その頃時々学部の授業を手伝ったりしてたんですが…。
みんな準備出来た?
(学生たち)はい。
じゃあそれぞれのテーマについてどういう風に撮るか考えといてね。
(学生たち)はい。
(桐原俊一)あの…先生。
覚えてますか?英徳高校の桐原です。
あ…。
高校を卒業してからもずっと写真を続けてたみたいで。
あなたに会うために大学に入ったんでしょうか。
それはないと思います。
そのあとも私とは偶然見かけた時に少し写真の話をするぐらいでしたから。
そんな時にあの事件が起きて…。
私のところにも警察の方が来ました。
桐原君が…?
(山下)おおご存じなんですね。
そういえば…藤岡先生のところに写真を見せに行くって言ってました。
警察の方に話を聞かれるなんて初めてだったしその時は何も考えずに答えてしまったんですが…。
もしかして写真を送ってきてたのは私の事を恨んでたからじゃないでしょうか。
恨んでいたというと?どこかで私が証言した事を知ったとか。
考え過ぎです。
少なくとも警察が情報提供者を犯人に伝える事はありません。
そうですか。
(携帯電話の振動音)すいません。
失礼します。
はい織田です。
糸村さんが?写真を解析したところ妙なものが写り込んでいましたので報告します。
この部分です。
拡大したのがこれです。
(曽根)ん…?なんだこれは?マスクです。
猿の。
マスク?ゴムで出来たお面ですよ。
確か管内で起きた連続婦女暴行犯もマスクを被っていたんですよね?
(涼子)え…?ええ。
あっちょっと失礼します。
ああマスクの形状もこういったものだったと聞いてます。
ですって。
ん〜?犯行現場から出て来たところを偶然撮影してしまったという事か。
殺人の動機となりえますね。
よし。
まずは付近をしらみ潰しに当たれ!この人確か…。
なんだよ。
彼です。
(ため息)警視庁捜査一課の織田と申します。
お話をお伺いしたいので署までご同行願えますか?
(大橋)なんですか?こんな大勢で。
この部分を拡大したのがこっちだ。
これあんただよな。
違う。
違います。
へえ〜。
じゃあ柵乗り越えてるのはこれ誰だよ?手に持ってるのはなんだよこれ!被害者に確認したところこのマスクに間違いないとの事でした。
なんだったらもう少し裏取りましょうか?周囲の方々に事情を聞く事になりますが…。
なんであんなとこで写真なんか撮ってんだよ。
「写真を取り返しに行っただけで殺す気なんかなかったんです」「本当です。
殺す気なんかなかった」
(大橋)写真どうした?
(桐原)えっ写真?
(大橋)ああ写真だよ!公園で撮ってただろお前!
(桐原)写真…?
(大橋)お前どこやったんだよ!
(桐原)写真…写真…!
(大橋)金か?金か?
(大橋)いくらならいいんだよおい!いくらならいいんだ!あ?
(桐原)違います!
(大橋)これだな?
(桐原)それ違う…!
(大橋)なんだよお前は!
(桐原)ちょっと待ってください!ちょっと待って…!
(大橋)うるせえって言ってんだろこの野郎!
(桐原)違う。
違う。
違う…!
(大橋)おらーっ!
(刺す音)
(桐原)ああーっ!あっ!で中を開けたらフィルムが入ってなかったってわけだ。
無駄な罪を犯したもんだな。
待ってください。
僕ほんとは真面目な人間なんですよ。
営業成績だって悪くないし家族だって大事にしてる。
ご近所さんもみんないい旦那さんだって言ってるんですよ。
ゆっくり聞いてやる。
お前にはまだ話してもらいたい事がたっぷりあるからな。
(ため息)そういう事か…。
お疲れ様です。
ああ織田君!ちょうどいいところに。
ちょっと付き合って。
どこへですか?いいからいいから。
早く。
どこ行くんですか?
(智子)じゃあとは私がやっておきますから。
わかりました。
じゃあお先に失礼します。
(智子)お疲れ様です。
(智子)すみませんもう閉めましたので。
桐原さんを殺害した犯人が捕まりました。
え?犯人は現場付近で暴行事件を繰り返していた男のようです。
どうしてそんな男が桐原君を…。
この写真…。
あなたに送るために撮ったこの写真に偶然犯人が写り込んでしまったんです。
犯人は取り返そうとしましたが写真はすでにあなたに送られたあとだった。
その結果事件が起こってしまったんです。
だとしたら…責任を感じます。
もっと早く写真の送り主が桐原君だって気づいてれば何か出来る事があったかもしれないのに。
いいえ。
あなたは知っていたはずです。
あなたが写真に不安を感じていたのは見知らぬ男から送られてきたからではありません。
7年前の事件のせいです。
7年前?藤岡さんを殺したのは桐原さんではなく…あなたですね?藤岡さんを殺したのは桐原さんではなく…あなたですね?突然何をおっしゃるんですか?織田君ちょっと。
はい。
それは…。
桐原さんを殺した犯人が現場から持ち去ったものです。
ここに…あなたの名前が書かれています。
なぜあなたのカメラを桐原さんが持っていたんでしょうか。
僕の考えた答えは一つです。
7年前あなたが殺害現場に忘れていったこのカメラを桐原さんが持っていった。
つまり桐原さんはあなたの代わりに殺人犯として逃げ続けていたんです。
違います私は…!智子さん。
桐原さんがこの7年間どういう生活をしていたかわかりますか?
(桐原の咳)
(咳)
(咳)うるせえ!すいません…。
ひたすら身分を隠してどこへも帰れない生活を続けていた。
それは全てあなたのためだったんです。
あの時…。
どうしていいかわからなくなって…。
(藤岡嘉一)笹本君。
はい。
川村賞最終選考に残ったみたいだね。
教授のご指導のおかげです。
僕が審査員長なのは知ってるよね。
はい。
取引しないか。
取引?いつもはいくらか包んでもらってるんだが…。
お金なんてありません。
だったら…。
いいだろ?教授やめ…やめてください!いやっ…いやです!いいだろ?来ないで!いやだ!賞を獲ったら人生が変わる。
いやーっ!いやーっ!やめ…やめてください!いやだ!来ないでーっ!
(藤岡)ああっ!教授?教授…。
いやっ。
あっ…。
先生?いや…。
逃げるところも見られカメラも置いてきてしまった。
捕まるのは時間の問題だと思ってました。
(山下)笹本智子さんですね?警視庁捜査一課の山下といいます。
亡くなられた藤岡先生の事で伺いたい事があるんですが…。
はあ…。
桐原俊一という男ご存じないですか?え…?
(斉藤)事件直後現場から逃げるところが目撃されています。
桐原君が…?おおご存じなんですね。
そういえば…藤岡先生のところに写真を見せに行くって言ってました。
なぜあんな事を言ってしまったのか自分でもわかりません。
翌日の新聞には事件の事が書かれていて警察は桐原君を容疑者として見ていると…。
それからです。
数か月ごとに彼から写真が送られてくるようになったのは…。
見る度恐ろしくなって…写真も手につかなくなりました。
…というと?だってそうでしょう?私は罪を押しつけたんですよ。
その彼から毎年写真が送られてくる。
あなたが押しつけるまでもなく桐原さんは初めからあなたの身代わりになるつもりだったんですよ。
え?現場からは桐原さんの写真と彼のDNAが採取されました。
どうしてそんな事…!うーん思い当たる事があるとすれば…。
恩返しでしょうか。
恩返し?9年前の9月でしたよねあなたが教育実習に行ったのは。
…ええ。
ちょうどその頃なんですよ。
桐原さんの捜索願が出されたのは。
捜索願?記録にも残ってました。
いじめに悩んで家に遺書を残して出て行ったんです。
自分をいじめた生徒やそれに気づかなかった先生たち…。
復讐のために学校を死に場所に選んでもおかしくはありません。
ちょっと君。
一枚撮らせてもらっていいかな?いくよ。
(シャッター音)ありがとう。
あなたにはそんなつもりはなかったのかもしれません。
でもその一瞬が彼の命を救ったんだとしたら…。
そんな話今まで一度も…。
一度は捨てた命だ。
しかも恩人であるあなたは当時川村賞を獲るかどうかの大事な時期だった。
今度は自分があなたを守る番だ。
そんな思いでもなければ殺人の身代わりなんて出来ないと思いませんか?そんなはずありません。
どうしてそう思うんですか?あの写真です。
彼はいつも同じような写真を撮って送ってきました。
(智子の声)あんな事件に巻き込まれなければ今頃奥さんや子どものいる普通の暮らしをしてたかもしれません。
彼は私のせいで失ったものを撮り続けていたんです。
その重みを忘れさせないために毎年毎年私に…。
それはあなたの心がそう見せているだけではないでしょうか。
私の?桐原さんはあなたに純粋に写真を見てもらいたかった。
あなたの作品を手本にした写真を。
それは彼の唯一の救いであり楽しみだった。
違います。
彼は私を憎んで恨みながら死んでいったんです。
もういいでしょうか。
あとは警察でお話ししますから。
これに見覚えありませんか?空のマッチ箱を取っておくなんて最初はこのお店に意味があるのかと思ったんですけどいや…全然違いました。
よく見てください。
ここに小さな穴が開いてるんですよ。
そうなんです。
これカメラなんですよ。
ピンホールカメラ。
あなたのこの初期の作品も同じ方法で撮られたんですよね?恐らくあなたが桐原さんに教えたんでしょう。
このピンホールカメラというのは光を増幅させるレンズがない分撮影するのにとっても時間がかかるんだそうですね。
この小さな穴を通り抜けてくるほんのわずかな光が像を結んでくれるまでこうやってじーっと待ってなくちゃならない。
いくよ〜。
せーの…。
123…。
(2人)456…。
7…。
(2人)8910…11…12…。
でも桐原さんにとってその時間はあなたと一緒にいられるかけがえのない時間だった。
勝手な想像かもしれません。
でも苦しい毎日の中彼は時々それを隣に置いてかつての日々を思い出していたんじゃないでしょうか。
なんの話ですか?刑事さんにはそんな事関係ない事でしょう?そうですね。
僕にも捜査にもなんの関係もありません。
でも…死んだ人はもう何も言えません。
だから出来るだけ正しく伝えたいんです。
なぜ報告を怠った?もしも犯人を逃がしていたらどう責任を取るつもりだったんだ?申し訳ありませんでした。
言っとくがあいつとつるむとお前の身のためにならんぞ。
何してるんですか?散らかさないでくださいよ。
探し物。
なんすか?これ。
笹本智子の自宅押収物。
ちょっと見ておきたいものがあってね。
やっぱり…捨ててなかったんだ。
僕には信じられませんよ。
恋人でもない女のために何もない人生を送るなんて。
案外何もない人生じゃなかったのかもしれないよ。
2015/07/03(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
遺留捜査[再][字]
「空のマッチ箱」
詳細情報
◇番組内容
警視庁捜査一課・科学捜査係を舞台に、遺留品から真実に迫る新たな刑事ドラマ誕生!主演・上川隆也演じる刑事・糸村が明らかにする被害者たちの伝えられなかった想いとは?
◇出演者
上川隆也、貫地谷しほり、佐野史郎 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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