大幅な会期延長で、与党が今国会での成立を目指す安全保障関連法案について、兵庫県内の4議会が6月定例会で「廃案」や「慎重な審議」を求める意見書を可決したことが、神戸新聞社の取材で分かった。意見書は、衆院憲法審査会で3人の憲法学者全員が「憲法違反」と指摘したことを踏まえ、「このような重大な法案は、世論の疑問や不安を真摯に受け止め、国民の間で深い議論を経ることが不可欠」などとしている。意見書は計9議会で提出され、1票差で否決されたケースもあった。
地方議会は「公益に関する意見書を国会に提出することができる」と地方自治法に定められ、地方の民意を国政に反映させる手段として活用できる。
安保関連法案について、「廃案」を求める意見書を可決したのは新温泉町議会。「慎重な審議」を可決したのは尼崎、加西、豊岡の3市議会。意見書が提出されたが、否決したのは高砂、丹波、南あわじ、香美の4市町議会で、丹波、南あわじは1票差だった。
佐用町議会は継続審査とし、西宮市議会は10日の本会議に提出される見通し。法案の「成立」を求める意見書はなかった。
新温泉町議会の意見書は「政府の姿勢は憲法9条1項を逸脱している」と指摘し、「国民的合意のない法案の廃案を強く求める」とした。
尼崎、加西、豊岡の3市議会の意見書も、憲法の解釈変更による集団的自衛権の行使容認に懸念を表明。各種世論調査の結果などから「国民の理解は不十分」とし、「国民的合意に向け、なお多くの観点からの議論が必要」(豊岡市議会)などとした。
意見書の多くは共産の議員らが提出したが、文言の修正を経て自民系、公明の議員が賛成に回ったケースも。全会一致で可決した豊岡市議会の升田勝義議長は「国防、外交について市議会が意見を具申するのはそぐわないという意見もあったが、慎重審議で国民が理解、合意できるようにしてほしい、との思いは全会派、議員が賛同できた」と話す。
安保法案の廃案などを求める住民からの請願、陳情は少なくとも17議会で出され、いずれも不採択か継続審査になった。
安倍内閣が昨年7月に閣議決定した集団的自衛権の行使容認について、加古川市議会は昨年5月、「慎重審議を求める意見書」を、香美町議会は同6月、「反対する意見書」を可決している。
可決された意見書は衆参両院議長と安倍晋三首相に提出される。