事実上破産したことを発表するのに最適なタイミングなどというものは存在しない。だが、米領プエルトリコにとっては、6月末は大半の時期よりましだった。6月28日、プエルトリコ政府は長らく計画していた経済報告書を発表した。世界銀行の元チーフエコノミスト、アン・クルーガー氏が書いた報告書は、プエルトリコが財政危機にあると宣言していた。アレハンドロ・ガルシア知事は、島が抱える720億ドルの債務は今、「支払うことができない」と話している。
だが、発表は大きな不安の種をまくどころか、債券価格が揺らいだだけだった。というのも、ギリシャが全面的な金融危機に陥り、中国市場が急落するなかで、プエルトリコが明らかにした事実はほとんど余興のように思えたからだ。
とはいえ、プエルトリコで起きていることを無視するのは間違いだ。クルーガー教授の報告書は2つの重要なポイントを浮き彫りにしているからだ。まず、過剰債務やお粗末な統治、不透明な財政と奮闘している場所はギリシャだけではないということ。次に、欧州と同様に米国もぜひとも、公的部門の過剰債務に対処するにあたって、より想像力ゆたかに(そして実際的に)なる必要があるということだ。
■債務再編の枠組みが存在しない
プエルトリコを苦しめている問題は、単に720億ドルの債務の山だけでなく、債務を再編する明確なメカニズムが存在しないという事実だ。プエルトリコは地方債市場で大荒れの時期を迎えそうだ。イリノイ州など、債務に苦しむ他の組織も近く嵐に巻き込まれるかもしれない。
これを理解するためには、プエルトリコの数字を見るといい。20年ほど前、人口350万人の米領プエルトリコは健全な成長率を謳歌していた。大規模な米軍のプレゼンスと米国本土の企業を引き寄せた優遇税制が成長の原動力となっていた。だが、その後、優遇税制が終わり、軍事予算が削減された。2005年以降、経済生産は実質ベースで10%前後縮小した。
通常であれば、この状況は債権者のパニックをもたらしたかもしれない。だが、世界市場は流動性であふれかえっており、地方債は米国人投資家に税控除を認めていることから、むしろマネーが押し寄せた。おかげでプエルトリコは手厚い福祉制度と、(ひいき目にいっても)非効率で(最悪の場合は)縁故主義がはびこる統治文化を維持することができた。
一方で、プエルトリコの経済生産に対する債務比率は100%を突破した。年金などの積み立て不足の支払い義務を含めると、債務比率は150%に達する。
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