毎年5月から6月にかけて発表される高校の進学状況。各校が大学別の合格者数や進学者数をホームページなどで公開する。この進学状況が、数年前から徐々に様変わりをしていることをご存じだろうか。新たに「海外大学」という欄を設ける学校が増えているのだ。
その状況は、特に東京の進学校で顕著だ。例えば、開成学園の場合。2013年から海外大学の進学者数を発表し、年々進学者数は増えている。渋谷教育学園渋谷中学高等学校の場合は、毎年の進学者数こそ公開していないが、2007年以降に進学した海外大学名をずらりと並べている。それまで2~3人だった海外大学への進学者数は、2年前から10人前後と一気に増えているという。
開成学園で海外大学へのサポートを担当する柴田威氏は、「Facebookなどによって海外にいる卒業生や海外大学に進学した学生と交流が可能になったり、大学の頃の仲間と起業をしたという米国の起業家が現れたり、といった影響が大きいのかもしれません」という。
実際なぜ高校生が海外にその目を向けるのか。2014年にハーバード大学に進学した開成高校出身の大柴行人氏に話を聞いた。
なぜ日本の大学ではなく、海外を志向したのでしょうか。
高校2年生の頃、友人に数合わせ的に誘われたディベート大会でたまたま世界大会に行けたのですが、そこでぼろ負けしたんですね。そのときに、悔しいと思った経験が、後々の行動につながった気がします。そのときは、すぐに海外の大学という考えはなかったのですが、「頑張らなくては」という気持ちが芽生えたのは確かです。
その後、ハーバード学部生が日本で講演などを行う「HLAB(エイチラボ)」や模擬国連に積極的に参加するようになりました。そうすると、例えば、参加している人の英語力や考えていることを言語化する技術の高さに触れたり、日本人の中にも海外に行くと言っている学生がいたりして、徐々に海外の大学というのを意識するようになりました。
開成はそこまで英語に力を入れていたり、帰国子女がたくさんいたりする学校ではないのですが、開成からも行っている人がいると聞き、遠かった「海外大学」が一気に近づきました。開成からでもいけるんだ、と(笑)。
受かるまでは、完全に海外一本になっていたかというとそうではありません。進学校でしたし、学校では東大に入るための勉強をさせてもらっていたということもあったので、東大以上に行きたいと思える大学でなければ、行くつもりはありませんでした。人によっては日本の大学を捨てて、海外にフォーカスする人もいますが、僕はそこまで勇気がなかったんです。
ただ、漠然とでしたが、東大とハーバード両方に受かったら、ハーバードかなとは思っていました。勉強の質、施設、人の多様性、英語を日常的に使うという側面から、どれをとっても、東大に軍配が上がるとは思えなかったのです。