認知症患者の徘徊(はいかい)による行方不明を減らそうと、山形県酒田市は6月から、ITを活用した見守りシステムの実証実験を始めた。市中心部の商店や公衆トイレなどに受信機を設置し、電波を発する小型端末を持つ高齢者が前を通ると、家族に位置情報をメールする仕組み。全国初の試みで、従来型の機器より安価で手軽に使えるという。
酒田市によると、市内の認知症患者数は2013年度で2345人。65歳以上の高齢者の約6%に当たり、増加傾向だ。昨年10月には、当時70代の男性が行方不明になったまま戻らず、対策が急務とされてきた。
システムは、山形市のネット関連会社などが登山者の入山管理用に開発したものを応用。認知症患者の位置情報をサーバーに蓄積し、移動した方向を複数の受信機データから割り出す。データは機械的に処理し、個人情報漏れを防ぐという。
従来も全地球測位システム(GPS)を利用した見守りシステムはあったが、端末代金だけで数万円掛かり、利用者の負担が大きかった。
今回の場合、ペンダント型など4種類の小型端末があり、1つが2千~5千円ほど。ボタン電池1個で最長2年間作動し、維持費も安い。市や警察に家族のメールアドレスを登録し、端末と連動させればすぐに利用できる手軽さも特徴だ。
実験には12家族が参加。市内11カ所に設置した受信機が正確に機能するかを、約2カ月かけて検証する予定だ。
日本認知症グループホーム協会(東京)の宮長定男副会長は「家族が認知症だと言い出しにくい住民にとっても利用しやすく、有意義な取り組みだ。地域で症状への理解を深めるきっかけにしてほしい」と話している。〔共同〕
メール、GPS