教育現場を混乱させた中国製タブレット 製造元は“ダンマリ”
(更新 2015/6/29 07:00)
教育の現場でタブレット端末を活用しようと試みている自治体が佐賀県にある。佐賀県武雄市は、市内の全小中学校でタブレット端末を活用した授業を展開している。小学校では2014年4月から、中学校では翌年4月から取り組みを開始した。児童や生徒にタブレットを貸し出して、学校で行われる授業のみならず、家庭学習に役立てる狙いだ。
だが、革新的といえる試みも、タブレット端末の不具合が続出して危機的状況に陥っている。週刊朝日6月19日号によると、授業当日にタブレット端末が立ち上がらなかったり、ネットワークにうまく繋がらなかったりといったトラブルが続出して、教育現場が混乱していると報じた。
具体的には、どんなトラブルが起こっているのか。武雄市教育委員会に聞くと、担当者からこんな答えが返ってきた。
「液晶画面の破損にくわえて、電源が急に入らなくなったり、何度も再起動がかかったり、ネットワークに接続できなかったりするなど、タブレット端末に初期不良が起こっています。小学校で起こった不具合率は約9%にのぼっています。この割合はちょっと多い数字だと思います。授業に少なからず支障は出ていますが、代替機も常に用意しているので、授業ができなくなるわけではありません。今では、教師も子どももタブレットの扱いにだいぶ慣れたので、問題も解消されてきました」
約9%の不具合率…およそ1割のタブレット端末が使えないという数字だ。いったい、どんな使われ方をしているのか。
「端末のアプリを起動して、各学校のサーバーにデータを取りにいって、動かすことが多いです。これ以外にも、カメラ機能を使用して、写真を撮影しています」(前出の担当者)
そんなに端末に負荷を与えるような使い方はしてないようだ。ネットワークに繋がらない症状は出ているが、リカバリーを行えば元に戻るという。
武雄市によると、使われているタブレット端末は、小学校では7インチの「M716-PS」、中学校では10インチの「M1049S-PS」という製品だという。いずれも製造元は、中国製のIT製品を主に取り扱うメーカー「恵安」だ。これらの製品は、市販製品をベースにして、「武雄市専用モデル」としてカスタマイズしているという。
性能面をみると、「M716-PS」は7インチのディスプレーを採用している。OSはAndroidの4.2.2。現在主流の4.4よりも古いOSで、CPUはコアが2つしかない「Dual Core Cortex-A9」が使われている。内部容量は16GB。カメラは内側が30万画素、外側が200万画素だ。
一方「M1049S-PS」は10インチのディスプレー。OSはAndroid4.4で、CPUはコアが4つある「Cortex-A9 Quad Core」。いずれも現在主流のOSとCPUであり、スペックは古い機種とはいえない。内部容量とカメラの性能は「M716-PS」と同等である。
授業で使用するアプリは小・中学校で共通であり、OSやCPUが優れた中学校で使うタブレットには、「小学校ほどのトラブルは起こっていない」(前出の市の担当者)という。
ネット上では、なぜ、中国製のタブレット端末を採用したのかと批判の声が上がっている。「税金を投入しているのに、中国製の製品を購入して、その利益が国外に流れてしまうことに対してどう申し開きをするのか」という批判もある。確かに、国産のメーカーのタブレット端末を採用すれば、国内の企業が潤い、少なからず税金として還元される。ただ、そもそもの問題は、小学校向けのタブレット端末のスペックが低すぎる点だろう。作業内容は、小学校も中学校も大差がないのだから、小学校向けもちゃんとした性能の製品を与えるべきだろう。
武雄市は、この事業に対して、小学校だけでも約1億2000万円を投入している。このお金には、システムやサーバーの構築費が含まれている。タブレット端末一台のコストは約1万8000円で、3153台を導入している。端末の費用は約5675万円、全体の31.5%にしか満たない。安物買いの銭失いともいえるタブレット端末を購入するより、よりスペックの高い製品を導入すべきではなかったのか。
この件に関して、製造元の「恵安」に対して、どのように対応するのか、尋ねてみたが、「恐れ入りますが、ご質問にはお答えできません」とメールで回答があっただけだった。利益さえ出てしまえば、それでいいのだろうか。製造元がダンマリでは、あまりに無責任ではないのか。
(ライター・河嶌太郎)