山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Amazon「Kindle Paperwhite(2015)」

〜解像度が300ppiに引き上げられたKindleファミリーの普及モデル

「Kindle Paperwhite(2015)」。Amazon.co.jpの製品ページなどでは「2015年モデル」「第7世代」などの表記が見られるが、本稿では「Kindle Paperwhite(2015)」という表記で統一している

 Amazon「Kindle Paperwhite(2015)」は、6型のE-Ink電子ペーパーを搭載した読書端末だ。直販価格は14,280円から。2013年に発売された従来モデルに比べ、解像度の向上が図られたことが特徴だ。

 Kindleストアの国内サービス開始に合わせ、初代Kindle Paperwhiteが登場したのが2012年。翌2013年にはメモリ容量の増加や性能を向上させた新モデルが登場した。その際、背面ロゴなどの細部を除いて本体の形状に変更はなく、2014年にローエンドの無印KindleおよびハイエンドのKindle Voyageが登場した際も、Kindle Paperwhiteはそのまま継続販売された。

 今回のKindle Paperwhite(2015)は、この2013年モデルの本体形状や仕様を踏襲しつつ、解像度を1,072×1,448ドット(300ppi)に引き上げたモデルだ。本製品登場前までのラインナップでは、ローエンドの無印Kindleが600×800ドット(167ppi)、Kindle Paperwhiteが758×1,024ドット(212ppi)、ハイエンドのKindle Voyageが1,072×1,448ドット(300ppi)と、同じ6型ながら明確にグレードが分かれていたのだが、今回の新モデルでは解像度がKindle Voyageと並んだ格好だ。

 今回は発売されたばかりの本製品について、2013年に発売された従来モデル「Kindle Paperwhite」に加え、2014年に発売された上位モデル「Kindle Voyage」とも比較しつつチェックしていく。なお以下の写真およびスクリーンショットについては、従来モデルは機材の関係上、Wi-FiモデルではなくWi-Fi+3Gモデルを使用していることをお断りしておく。

解像度が212ppiから300ppiへと向上。価格は各モデルとも4,000円値上がり

 まずは従来モデルとスペックを比較しておこう。Amazonのヘルプ&カスタマーサービスのページでは、従来モデルを「第6世代」、本製品を「第7世代」と呼称しているが、ここでは前者を「2013」、後者を「2015」として記載している。参考までに上位モデルの「Kindle Voyage」も並べてある。

Kindle Paperwhite(2015) Kindle Paperwhite(2013) Kindle Voyage
サイズ(幅×奥行き×高さ) 169×117×9.1mm 162×117×7.6mm
重量 約205g(3Gモデルは約217g) 約206g 約180g
解像度/画面サイズ 6型/1,072×1,448ドット(300ppi) 6型/758×1,024ドット(212ppi) 6型/1,072×1,448ドット(300ppi)
ディスプレイ モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式 802.11 b/g/n、3G(3Gモデルのみ)
内蔵ストレージ 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3.1GB) 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3.1GB) 約4GB
フロントライト 内蔵(手動調整) 内蔵(自動/手動調整)
ページめくり タップ、スワイプ タップ、スワイプ、ボタン
バッテリ持続時間(メーカー公称値) 数週間(ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時) 8週間(ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時) 6週間(ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時)
価格(発売時点) 14,280円(キャンペーン情報つき) 10,280円(キャンペーン情報つき) 21,480円(キャンペーン情報つき)
16,280円(キャンペーン情報なし) 12,280円(キャンペーン情報なし) 23,480円(キャンペーン情報なし)
19,480円(3Gモデル、キャンペーン情報つき) 15,480円(3Gモデル、キャンペーン情報つき) 26,680円(3Gモデル、キャンペーン情報つき)
21,480円(3Gモデル、キャンペーン情報なし) 17,480円(3Gモデル、キャンペーン情報なし) 28,680円(3Gモデル、キャンペーン情報なし)

 大きく変わっているのは前述の解像度で、従来の212ppiが今回300ppiへと向上している。具体的な値の表記はホームページ上にはないが、ユーザーズガイドを見ると「1,448×1,072 pixels」という、Kindle Voyageと同一の値が記載されている。

 バッテリ持続時間については「数週間」とのみ記載されている。従来モデルは、Amazonホームページの比較表では「数週間」、製品ページでは「8週間」という値が記載されていたのだが、今回はどちらも「数週間」という表記に統一され、具体的な値はざっと探した限りでは見つからない。ユーザーズガイドの表記も同様だ。

 問題なのは、同様の表示方法を採用している無印のKindle、さらにKindle Voyageは、同じ「数週間」であってもイコール8週間というわけではなく、それぞれ4週間/6週間と、具体的な値が微妙に異なることだ。つまり表記上は同じ「数週間」であっても、製品によってバッテリ持続時間は4〜8週間と大きく異なり、今回のKindle Paperwhite(2015)ではこの値が明記されなくなってしまっているのだ。バッテリ容量が増えていなければ、高解像度化によって持続時間は短くなっているはずだが、ややぼかされてしまっている格好で、ここはきちんと表示して欲しいところである。

 価格については、いずれのモデルも従来比で4,000円ずつ値上がりしているが、これは円安の影響なども考慮したいところ。ちなみに本稿執筆時点では、プライム会員は4,000円オフになるなど、従来モデルに合わせた形でのキャンペーンが複数用意されている。

外箱は厚紙製の共通梱包を、日本語のスリーブで巻いた仕様
破線部分を切り取って開封。本体は透明な袋に封入されている
同梱品は本体のほか、USBケーブル、取扱説明書など。USB-AC変換アダプタが別売りなのは従来モデルと同様
電源投入前に表示されている画面。各国語で「電源を投入」と書かれている。ちなみに従来モデル(発売時点)では10カ国語だったが、今回は13カ国に増えている

製品の外観およびセットアップ手順は大きな違いはなし

 開封からセットアップ、実際に使えるようになるまでの手順を手短にチェックしよう。本体を開封し、電源を入れるとセットアップが開始される。今回購入したのはWi-Fiモデル(キャンペーン情報なし)だが、言語を選んだ後Wi-Fiを設定し、Amazonアカウントの確認、ソーシャルアカウントの入力を経て、操作方法のチュートリアルが表示される。このフローは、従来と特に変わらない。Amazon.co.jpで購入すると、すでにアカウントが設定済みなので、IDやパスワードを入れる必要もない。

 試しに手持ちの従来モデルを初期化し、同様にセットアップを行なってみたが、細部を除いて違いは見られなかった。従来モデルも、本製品のリリース直前にソフトウェアのアップデートが行なわれているので、違いがないのはある意味で当然と言える。以下、左が本製品、右が従来モデル(のWi-Fi+3Gモデル)の画面を並べて比較している。

 ちなみに試用時点の本製品のソフトウェアのバージョンは「5.6.1.1」、従来モデルは「5.6.2.1」である。従来モデルの方が数字が大きい理由は不明だ。

冒頭のオープニング画面に続き、言語を選択する。対応言語が従来モデルから1つ増えている
おなじみのオープニング画面。言語選択の前後で計2回表示される
「はじめましょう」の画面。300ppiに進化したことが記されている。「8週間」が「数週間」に改められているのは、やはりなんらかの理由がありそうだ
Wi-Fi設定のための画面。今回比較に使っている従来モデル(右)はWi-Fi+3GモデルなのでWi-Fi設定をスキップする選択肢があるが、それ以外は同一
Wi-Fiを検索してSSIDを選択、パスワードを入力する。上段の文言が多少違っているが、それ以外に差はない
既存のAmazonアカウントを利用するか、新規に作成するかを選択する。今回はすでにアカウントが登録されていたので入力は不要だった。そのまま次に進む
SNSのアカウントの登録画面。今回は特に入力せずそのまま先に進める
ここまでで設定は完了。ここからはチュートリアルが表示される。なお従来モデルはソフトウェアアップデートが行なわれたためか、書影や文言が発売直後の状態から変更になっている
本の開き方の説明。背景に表示されている本の種類は従来と同じだが、画像は多少違っている場合もある
タップエリアに関する説明。従来モデル発売時点で一旦なくなった、EasyReachという言葉が復活している
前のページヘの戻り方の説明。特に違いはない
ツールバーの開き方の説明。こちらも特に違いはない
フォントオプションの開き方の説明。コンテンツによっては、このツールバーにはX-Rayのボタンが表示されるが、ここでは特に言及されていない
フォントは従来と同じく、明朝、ゴシック、筑紫明朝の3種類
辞書機能の説明。スクリーンショットにはないが、実際にポップアップさせる過程もある
ハイライト機能の説明。説明文の配置は異なっているが内容は同一
ハイライト機能の説明の続き。特に違いはない
ライトに関する説明。従来モデルでは光量調節のスライダを表示する過程があったが省かれたようだ
ここでチュートリアル完了。ホームアイコンをタップして移動する
ホーム画面が表示された。このあと必要に応じてコンテンツをクラウドからダウンロードする

 外観についてだが、2012年発売の初代Kindle Paperwhiteと、2013年発売の従来モデルは、本体の形状は同一ながら背面ロゴが「Kindle」から「Amazon」に変わっているなど、金型レベルでの違いがあったが、今回の製品はそうした相違もない。ベゼル部の質感がやや異なっていたり、電源ボタンが光沢のある仕様になっていたり、正面下のKindleロゴが反射しない印刷になったりと、細かい相違はあるにはあるが、横に並べでもしない限り見分けるのは困難だ。

初代Paperwhiteから数えて3代目になるが、外見はほぼ同じままだ
左が本製品、右が従来モデル。製品名の由来になっているフロントライトは24段階で調節可能。Voyageのような自動調節機能はなく、手動でスライダを動かして調整する
画面下の「Kindle」ロゴが、従来モデル(下)は銀色でどの方向からも目立ちやすかったが、本製品(上)は角度によってはほとんど見えないこともしばしば
本製品は電源ボタンが光沢のある仕様になっていたりもするが、重ねて比べないとまず気付かない程度の違いでしかない
背面ロゴはいずれも「Amazon」。光沢の加減が新旧モデルでかなり異なるが、ここも製品自身の機能とはなんら関係ない

 メニュー類についても、ざっと見た限り大きな違いはなく、また機能の改廃などの大きな変更も見受けられない。むしろここ1〜2年のソフトウェアアップデートで追加されたX-RayやWord Wise機能などの方が、変更としては大がかりだった印象だ。

 唯一、先日発表されたKindle専用の新フォント「Bookerly」が、本製品では英語コンテンツの標準フォントとして搭載されているのが確認できるが(従来モデルはCaeciliaのまま変更なし)、これにしても英語コンテンツを表示しない限りお目にかかれない。以下、やや蛇足になるが、主要なスクリーンショットを掲載しておく。

ホーム画面。クラウドと端末を切り替えて使用する。上段にコンテンツが、下段には月替りセールが表示される(オフにもできる)
右上のアイコンをタップするとオプションが表示される。特に相違はない
設定画面。ソフトウェアアップデートのたびに小さな変更がある箇所だが、現時点で従来モデルとの違いはないようだ
シリーズ続巻の表示オプション。かつてはなかった機能だが、新旧モデル共に搭載されている
後述するWord Wise機能も設定画面からオン/オフが可能になっている。新旧モデルで相違はない
テキストコンテンツを表示したところ。これまでと同じくフォントサイズは8段階、フォントは3種類、行間と余白もそれぞれ3種類から選べる
画面上部をタップしてメニューを表示したところ。特に相違はない
Page Filp機能を使えばぺらぺらとページをめくる感覚で前後に移動できる。これも従来と同じ機能
X-Ray機能を使えばコンテンツ内の登場人物やトピックを一覧化して表示できる。コンテンツによっては対応していない場合もある
Word Wise機能を使えば難しい英単語の上に意味が表示されるので英語コンテンツの読解に役立つ。ちなみに新モデルで使われているフォントは、Kindle専用に開発された新フォント「Bookerly」

最小フォントサイズやルビ、さらにコミックなどで、解像度の違いは顕著

 さて、注目の解像度である。スペック上ではKindle Voyageに追いついた格好だが、実際はどうなのか。従来モデルとの比較を中心に見ていこう。

 最初に結論を書いてしまうと、やはり従来モデルとの違いは顕著だ。詳細は以下の画像をご覧いただきたいが、細い線や斜めに引かれた線が多いコミック、およびフォントサイズを最小にして読む場合や、本文のルビをしっかりとした線で表示したい場合などは、本製品の強みが出やすい。

テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)を、最小サイズで表示した状態でクオリティを比較した画像。上段左が本製品(300ppi)、上段右が従来モデル(212ppi)、下段左がKindle Voyage(300ppi)、下段右が無印のKindle(167ppi)。向かって左にある漢字の「縞」や、ふりがなの「あ」や「ま」などで違いが顕著に出ている
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)のクオリティを比較した画像。上段左が本製品(300ppi)、上段右が従来モデル(212ppi)、下段左がKindle Voyage(300ppi)、下段右が無印のKindle(167ppi)。口の輪郭の滑らかさのほか、頬の斜線、顎から下の斜線などのディティールで差が明らかだ

 もっともテキストコンテンツについては、あくまでフォントサイズを最小にした場合に顕著に出るというだけなので、それ以外、例えば3段階目のサイズ(デフォルト値)で表示している場合は、従来モデルと比べて多少滑らかというだけで、上記の画像ほどの違いを感じるわけではない。従来モデルからの買い替える価値があるかどうかは、このあたりの使い方によってまったく判断が変わってくるので、以上のような点を判断基準にしてほしい。このあと述べる反応速度についても考慮に入れるべきだ。

上記の比較画像の全体像。ここまで小さくして読むことがないのであれば、テキストコンテンツについては新旧モデルでそう顕著な違いはない。ただしルビなどは別だ

 ちなみに、パネルのサイズおよび解像度はKindle Voyageと同じだが、色味はかなり違う。本製品は元のE-Inkパネルのグレーイッシュな色味を維持しつつ明度だけを上げた印象で、Voyageは蛍光灯で照らしたような、やや目にきつい青白い色である。同じ製品でもロットによって部材が異なる場合があるので断定はできないが、同じ部材で照度の差によって違いが生じているのではなく、パネルないしはフロントライトの仕組みの違いに起因するように感じられる。

 このほかの違いとしては、Kindle Voyageにはページめくりボタンやフロントライトの自動調整といった独自の機能や、ベゼルと画面の間の段差がなく、その分本体が薄く軽いといった特徴がある。一方で価格差はかなりあるなど、差別化要因には事欠かず、解像度が揃ったからといって、製品購入を検討する段階で迷うことはあまりないだろう。

左が本製品、右がKindle Voyage。色味の違いは写真ではなかなか出にくいのだが、本製品の方がやや黄色がかっており、Voyageは青みが強い
Kindle Voyage(右)は本製品(左)のような、ベゼルと画面の間の段差がない。また左右ベゼル部にページめくりボタンを備えているのも、本製品にない機能だ
ベゼルと画面の間の段差がない分、Kindle Voyage(右)の方が本体は薄い

従来モデルに比べて反応速度は速い?それとも遅い?

 解像度の向上については以上の通りだが、気になるのは反応速度だ。扱うデータサイズが大きくなれば、反応速度には多少なりとも影響が出るのが普通である。特にE-Ink電子ペーパーは、解像度が高くなるとレスポンスが露骨に悪くなる傾向があり、対処法としてCPUやメモリを強化するのが一般的だが、本製品では特にスペックを向上させたというアナウンスはない。新規購入、もしくは買い替えを検討しているユーザとしては気になるところだ。

 詳細は動画をご覧いただきたいが、テキストコンテンツおよびコミックに関しては、従来モデルに比べて、タップに対する反応がわずかに出遅れる傾向があるようだ。数年前のE-Ink端末のように、タップを感知したか判断がつかないほど無応答の時間があるわけではなく、ほんのワンテンポ遅れるだけだが、従来モデルを使い慣れていると「おやっ」と感じるはずだ。もともと従来モデルはかなり応答性が高く、同じレベルを求めるのは酷なところもあるが、気になる人は気になるだろう。

 また、スワイプで延々とページめくりを繰り返すと、だいたい十数ページにつき1ページほど取りこぼしが発生し、従来モデルであればきちんとスワイプした回数だけめくられているところ、本製品は1ページ手前で止まるという現象がよく起こる。正しい使い方としては、ページの連続めくりはPage Flip機能を使うべきなので、こうした操作そのものが頻繁に発生するわけではないが、例えば大判のコマが連続しているコミックで、ページの内容を把握しつつ速いスピードでめくる場合などは、スワイプしたはずがページがついてこないことが起こりうる。懸念されたように、解像度の向上が影響していると考えるのが自然だろう。

テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)で、タップおよびスワイプによるページめくりの速度を比較している様子。左が本製品、右が従来モデルだが、右の方が反応がワンテンポ速いことが分かる
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)で、タップおよびスワイプによるページめくりの速度を比較している様子。左が本製品、右が従来モデルで、こちらもテキストコンテンツと同じく右の方が反応が一瞬速い

 ただ、実はこうした挙動の特徴は、上位モデルのKindle Voyageでも発生しており、本製品とKindle Voyageを並べて同じ操作をすると、差は全くといっていいほど感じられない。もともとタップに対する反応は、Kindle Voyageよりも従来のKindle Paperwhiteの方が速い(さらに言うとエントリーモデルの無印Kindleはそれに輪をかけて速い)。解像度が高くなったことで、本製品の反応がKindle Voyage相当になったというだけで、耐えられないほど重くなったわけではない。

 そればかりか、操作によってはむしろ速くなっている箇所もある。ストアにアクセスし、さまざまなジャンルや特集を読み込む際のスピードがそれで、ストアアイコンをタップしてストアトップページが表示されるまでの時間や、リンクをタップしてさまざまな特集ページに遷移する際の反応は、従来モデルと比較しても明らかに速くなっている(念のためKindle Voyageとも比較してみたが、本製品の方が高速化されているようだ)。

ストアにアクセスし、さまざまなジャンルや特集にアクセスしている様子。左が本製品、右が従来モデルだが、こちらは左の方が表示完了までの時間が短いことが分かる

 このあたりはネットワークに絡む箇所だけに、前述のバックグラウンドでの処理とは関係なく、先読みでキャッシュしている可能性もあるが、技術的な理由の推測はともかくとして、前述のスワイプで連続してページをめくる操作に比べ、ストアにアクセスして本を探す操作の方が日常頻繁に発生する人も多いはずで、そういった場合なら差し引きで考えるとむしろプラスだろう。「新しいKindle Paperwhiteは以前よりも遅い」というのは、ある意味ではイエスであり、ある意味ではノーというわけだ。

 ちなみに、これらの現象と関係があるかどうかは不明だが、スクリーンショットを撮る際、フォントサイズ変更などのダイアログが表示された状態の画面を撮ろうとしても、そのダイアログが消えた直後の画面ばかりが撮影されてしまう。

 試しに同じ手順で従来モデルと交互に撮影してみたが、従来モデルだと問題なく撮れるので、なんらかの仕様が変更になっているようだ。開発者や筆者のようなユーザ向けの機能であり読書にはなんら問題ないが、念のため書き留めておきたい。ちなみにスクリーンショットは従来と同じく、対角線上の両隅を同時にタップすることで取得できる。

300ppiへの引き上げの影に「Kobo Glo HD」あり?

 この1年ほど、筆者の周囲で何度となく耳にしたのが「Kindle Voyageを一度使うと、もうPaperwhiteに戻れない」という感想である。その主たる理由は解像度の高さ、そして本体の軽さにあると筆者は見ているが、今回のモデルで、少なくとも前半分のユーザは、Paperwhiteを候補の1つとして加えられるようになったことになる。重量こそVoyageにかなりの差を付けられているが、そもそも価格が約7,000円も違うので、差別化要因としては妥当だろう。やや重いが安価なPaperwhiteを選ぶか、その逆でVoyageを選ぶか、というわけである。

 さて、本製品の登場により、今年の夏以降、国内で300ppiを超える電子ペーパー端末が3製品揃うことになった。本製品とKindle Voyage、そしてすでに海外では発売され、近日中の国内投入が予告されている楽天Kobo Glo HDである。画面が一回り大きいため300ppiには届かないが、楽天Kobo Aura H2Oも同じグループに加えてよいだろう。これらをざっと比較して、本稿のまとめとしたい。

Kindle Paperwhite(2015) Kindle Voyage Kobo Glo HD Kobo Aura H2O
販売元 Amazon Amazon Rakuten Kobo Inc. Rakuten Kobo Inc.
発売 2015年7月 2014年11月 2015年夏発売予定 2014年10月
サイズ(幅×奥行き×高さ) 169×117×9.1mm 162×117×7.6mm 157×115×9.2mm 179×129×9.7mm
重量 約205g(3Gモデルは約217g) 約180g 約180g 約233g
解像度/画面サイズ 6型/1,072×1,448ドット(300ppi) 6.8型/1,080×1,430ドット(265ppi)
ディスプレイ モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式 802.11 b/g/n、3G(3Gモデルのみ) 802.11 b/g/n
内蔵ストレージ 約4GB(ユーザー使用可能領域: 約3.1GB) 約4GB 約4GB(ユーザー使用可能領域: 約3GB)
フロントライト 内蔵(手動調整) 内蔵(自動/手動調整) 内蔵(手動調整)
ページめくり タップ、スワイプ タップ、スワイプ、ボタン タップ、スワイプ
メモリカードスロット - - - microSD
バッテリ持続時間(メーカー公称値) 数週間(ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時) 6週間(ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時) 2ヶ月 約7週間(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時)
価格(発売時点) 14,280円(キャンペーン情報つき) 21,480円(キャンペーン情報つき) 国内未発売 19,980円
16,280円(キャンペーン情報なし) 23,480円(キャンペーン情報なし)
19,480円(3Gモデル、キャンペーン情報つき) 26,680円(3Gモデル、キャンペーン情報つき)
21,480円(3Gモデル、キャンペーン情報なし) 28,680円(3Gモデル、キャンペーン情報なし)
備考 - - - IP67規格準拠の防水・防塵機能搭載

 今年夏の発売が予定されているKobo Glo HDは、従来のKoboシリーズにあったmicroSDスロットこそ省かれているものの、解像度300ppiで重さ180gと、Kindle Voyageに迫るスペックである。かつ、Voyageよりは安価で発売されることが予想されるので、ボタンなどの付加機能はあるにせよ、300ppiという解像度と価格だけにフォーカスするならば、Voyageはやや分が悪い。そこに割って入るのが今回のKindle Paperwhite(2015)で、重量はややあるものの同じ300ppiであり、かつ価格競争力もあると予想される。

 Kindleファミリーの3製品(無印Kindle、Kindle Paperwhite、Kindle Voyage)が、スペック的にも価格的にも、ちょうどバランスが取れた状態にあったにもかかわらず、今回敢えてKindle PaperwhiteのスペックをVoyage側に寄せてきたのは、パネルの調達を一本化できるといった生産上のメリットもあるかもしれないが、Kobo Glo HDに対抗するためという狙いも相応に大きいと思われる。製品設計を根本的に変えている余裕はないので、パネルだけをスペックアップさせたと考えれば、同じ筐体デザインのまま4年目に突入するのも説明がつくというわけだ。

左から無印のKindle、本製品、Kindle Voyage。今回のモデルチェンジで、解像度に関しては、無印のKindleと上位2モデルの間にかなりの差が付いてしまったことになる

 ともあれ、コミックの占める割合が大きい日本の電子書籍市場で、300ppiクラスの高解像度端末が増えるのは歓迎すべきことである。従来モデルから4,000円ほど価格が上がっているとはいえ、円安の影響によるところも大きく、値頃感は相応にある。価格的にVoyageは手が届かないというユーザーにとっては、新たな選択肢として検討する価値はありそうだ。

(山口 真弘)