(2015年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

【AFP記者コラム】「シムシティ」支局へようこそ ─ ドーハ

カタールの首都ドーハを上空から写した写真〔AFPBB News

 2022年のサッカー・ワールドカップ(W杯)招致に関連した汚職や強制労働の疑惑を受けてカタールの名前が苦しい立場に置かれる中、W杯の開催権を剥奪されるリスクは、すでに神経を尖らせている実業界に一段と大きなプレッシャーをかけている。

 国際サッカー連盟(FIFA)を飲み込んだ汚職スキャンダルが発覚したのは、シェイク・タミム・ビン・ハマド・アール・サーニ新首長が着手した財政緊縮の真っ只中のことだ。

 2013年に父親が退位した後に権力を握って以来、新首長は財布の紐を固く締めてきた。

 この痛みに追い討ちをかけるように、過去1年間の世界的な石油価格下落がさらなる予算削減をもたらしている。

 シティグループの予想によると、カタール政府の歳入は今年3割強縮小する見込みで、プロジェクトの遅れや余剰人員の解雇を一段と悪化させ、外国企業を取り巻く環境を変えることになるという。

まるでパーフェクトストーム

 「パーフェクトストームだった」。ドーハを拠点とするクライアントを大勢抱える西側のある弁護士はこう言う。「まず(政治的な)移行の後に予算の削減があり、次に石油価格が下がり、今度はW杯開催が危うくなっている」

 カタールの政府当局はW杯開催権を守る決意を固めており、贈賄容疑を否定、カタールの労働法を改善するという意味で大会開催は変化をもたらす力になると主張している。当局は労働監督官を増員し、労働者に対する給与自動振込制度を導入し、悪用される危険があると批判されている「カファラ*1」と呼ばれる労働規制の改革を誓っている。

*1=雇用主が保証人となり、契約期間中の従業員の経済的・法的責任を負う制度。外国人労働者は、この制度のため、雇用主の許可なく転職も出国もできない