日本が世界に誇る高速鉄道である新幹線。世界的に鉄道インフラの需要が急増する今、その速度や安定性、過密ダイヤでも定時運行できる信頼性の高さが、技術を輸出する上で大きな強みになると言われている。
その一方で、日本や欧州の技術を導入した「中国の新幹線」が、既に世界最速を記録。それを中国政府やメーカーは「独自技術」として海外に売り込もうとしている。
日経ビジネス2011年1月31日号の特集「急速浮上!中国エコカンパニー」では、独自技術を積み重ねてきた研究開発型の企業を中心に紹介した。今回の連載では、それとは対照的とも言える「中国的イノベーション」の吸引力と破壊力に迫る。
北京と天津を結ぶ高速鉄道「京津城際鉄路」は滑るように加速し、あっという間に時速330キロメートルに到達した。
この高速鉄道が結ぶ北京と天津の距離は約115キロメートル。東京からであれば、三島や宇都宮との距離に相当する。この距離を約30分で結ぶスピードは、日本の新幹線が営業運転で出す最高時速300キロメートルを上回る。
中国は日本より高速鉄道インフラが新しく作られ、土地が広大で平坦なので、速度を出すには有利な点が多い。速さの一方で、安全性と信頼性がどこまで保たれているのか、素人目には分からない点もある。それでも、日本の新幹線より高速で営業運転していることは、紛れもない事実だ。
「中国の新幹線」は、日本や欧州の高速鉄道技術がベースになっている。日本からは、川崎重工業が東北新幹線「はやて」の車両技術を供与し、現在は中国メーカーが現地生産している。このため、中国を走る高速鉄道車両の多くは、はやてに似ている。
「中国版新幹線」が時速487.3キロメートルの世界最高速を記録
ほかにも中国の高速鉄道は、ドイツの高速鉄道「ICE」の車両を製造する独シーメンスや、フランス「TGV」の仏アルストム、カナダのボンバルディア子会社などから技術を導入している。さながら、高速鉄道の国際博覧会といった様相だ。
だが、いずれも少しずつ手が加えられている。日本の新幹線からはとうの昔に消えた食堂車が連結されているほか、一部の外観や走行性能などが異なる。上の写真にある主力モデルの「CRH2C」型は、はやてをベースにして、ライトなどの外装を変更し、最高速度が引き上げられた。
そして今後さらに速度が引き上げられ、鉄道網は中国全土に広がっていく見通しだ。既に昨年12月には、はやて車両をベースとした最新モデル「CRH380A」型が、試験走行で時速486.1キロを記録。今年1月には独シーメンスの技術をベースにした「CRH380BL」型が、鉄道として世界最速の時速487.3キロメートルを達成した。鉄道の最高速を、中国製車両がたたき出す時代になったのだ。
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