カレーはいつでもおいしいですが、暑くなるとよりカレーが食べたくなります。
本格的なカレーを作ろうとすれば、「玉ねぎを炒める」という作業は必須でしょう。玉ねぎをあめ色になるまで炒めると、甘さと独特の香りが生まれます。
しかし、玉ねぎをしっかりとあめ色になる炒めるのはなかなか大変な作業です。
あめ色になる反応は、食品学や調理学において超大切な「メーラード反応」です。糖とアミノ酸が反応する反応で、褐色のメラノイジンや独特の香気成分が生じます。
メーラード反応のスタートの反応では、還元糖とアミノ酸が反応してシッフ塩基と呼ばれる化合物が生じます。そしてそのシッフ塩基がアマドリ転位を起こしアマドリ化合物となり、次の複雑な反応へと進んでいきます。
この初期反応はpH依存性であり、アルカリ性にすることでメイラード反応はより促進します。つまり、玉ねぎをアルカリ性側に傾かせれば、あめ色化がスピードアップする“はず”です。
やってみましょう。
- 対照区:玉ねぎ1個、サラダ油少々
玉ねぎをスライスして、サラダ油で炒めます。
程よい色になるまで炒めます。10分後はこのように。
トータル15分後加熱でストップ。
- 実験区:玉ねぎ1個、サラダ油少々、重曹小さじ1杯
玉ねぎをスライスしたものに、アルカリ性の塩である重曹(炭酸水素ナトリウム)を加えて、対照区と同様に炒めます。
重曹を加えると、炒め始めて1分後に玉ねぎが褐色化するのと同時に、玉ねぎの形が次第に崩れていきました。
約7分でこのように。
左:対照区(重曹なし、15分加熱)と右:実験区(重曹あり、7分加熱)を見比べると次のような写真になりました。
褐変の程度は、同じように作りましたが、加熱時間は重曹ありがなしの約半分の時間で色付いています。
形状は、重曹なしはまだ玉ねぎの質感が残っていますが、重曹ありは重曹を入れすぎたのか、玉ねぎの組織構造の崩壊によってねっとり感がありました。
試食してみると、圧倒的に重曹なしの方が強い甘味がありました。加熱時間が長いため、水分が飛んで甘味が濃縮されたのでしょう。重曹なしは香りは遜色ないのですが、甘味が圧倒的に物足りない感じでした。
重曹によるメイラード反応の時短化には、甘味の濃縮不足というトレードオフがありそうです。
どちらのあめ色玉ねぎもカレーにして食べました。
あめ色玉ねぎのやさしい甘さのカレーはいいものですね。