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地球環境にも優しくない話だ。民主党が、せっかく50万部を刷ったあるパンフレットを、すべて破棄することになったというのだから。
問題になったのは、現在審議が続いている安全保障関連法案に関するパンフだ。「いつかは徴兵制?」――そんな刺激的なフレーズで法案反対を呼びかけようとしたものの、内外からの批判に、わずか1日で撤回を余儀なくされたという。
「ママたちへ 子どもたちの未来のために...。」と題されたこのパンフは、2015年7月3日に登場した。党広報委員会が、主に子育て中の女性をターゲットに制作したもので、朝日新聞の記事によれば50万部が印刷されたという。
注目したいのはその中身だ。
「いつかは徴兵制? 募る不安。」
タイトルの下、軍服姿で敬礼する少年と、「○△君入営」と書かれた旗を持つ母親が、絵本のようなタッチで描かれている。文章は、安倍政権の集団的自衛権行使容認をめぐる憲法解釈変更に触れ、次のように訴える。
「そのようなことが許されるなら......。徴兵制も同じです。憲法は『苦役』を禁止しているだけで、『徴兵制を禁止する』とは書いていません。徴兵制が禁止されてきたのは、あくまでも政府の憲法解釈によるものです。今回と同じように憲法解釈を閣議決定で変更し徴兵制は可能である、と時々の政権によって解釈が変更される可能性も、論理的には否定できないのです」
旧社会党を思わせるようなその論旨に、ネット上では公開当初から「時代錯誤」などと失笑が相次いでいた。党内でもさすがに異論が噴出した様子で、保守系の主張で知られる長島昭久衆院議員は公開翌日の4日昼、ツイッターで問題のパンフがすべて破棄されることに決まったと「報告」した。
「徴兵制云々のビラは、内容的にも問題多く、何よりも党政調のチェックもないまま各総支部に郵送されてしまったプロセスの問題もあり、全部破棄した上で改めて内容を再検討することとなりました」
民主党ウェブサイトでは、問題のパンフに関するページは削除され、公式ツイッターに掲載されていた画像も5日時点で閲覧不可能になっている。正式な発表はないが、少なくともわずか1日でこのパンフは「なかったこと」になったのは間違いない。相変わらずのまとまりのなさを、またしても露呈した形だ。
ところで長島議員は「党政調のチェックもないまま」作られたパンフだ、としているが、民主幹部からはここのところ、このパンフと似たり寄ったりの発言が相次いでいる。
岡田克也代表は6月17日の党首討論で、
「総理ご自身、集団的自衛権の行使という今まで歴代内閣が認めてこなかったことを、国会での議論もなく、国民の理解もなく、内閣の判断だけで閣議決定した。将来の総理大臣が、徴兵制は憲法に合致していると判断して閣議決定する、そのリスクを私は考えたときに、総理のやったことは罪が重いと思うんですよ」
と安倍晋三首相を批判したが、その内容は上記のパンフほぼそのままだ。枝野幸男幹事長も街頭演説などで同様の発言をしているほか、細野豪志政調会長もブログで「将来のことを考えると真剣に警戒する必要がありそうだ」との見方を示している。岡田代表らとしては、上記のパンフはあくまで大真面目な話のようだ。そうなるとなぜ廃棄なのか、こちらも疑問が残る。
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