北朝鮮が日本人拉致問題再調査結果の報告延期を伝えてきた。特別調査委員会設置から1年の節目を迎える直前のことだ。
調査期間は1年程度とされていたがこの間、北朝鮮は、日朝合意に盛り込まれた調査状況の報告すらしていない。先送りを続ける姿勢は、不誠実極まりない。
帰りを待つ家族からは「振り回されただけの1年だった」という声が上がっている。怒りといらだちを募らせるのはもっともだ。
拉致被害者は年齢を重ね、家族の高齢化も進む。残された時間は多くない。これ以上、家族を失望させてはならない。
政府は圧力の強化を視野に入れながら粘り強く交渉を続け、一日も早い安否確認と帰国へつながるよう全力を尽くすべきだ。
北朝鮮は日朝合意に基づいて昨年7月、拉致被害者を含むすべての日本人について再調査する特別調査委員会を設置した。被害者の安否情報を握るとされる国家安全保衛部も参加しており、今度こそ解決につながるのでは、という期待を抱かせた。
ところが安否情報は示されないどころか、「今しばらく時間がかかる」と延期を通告してきた。
政府は外交ルートで遺憾の意を伝え、迅速な調査と通報を要求した。裏切られた家族の気持ちを考えれば当然である。
政府は「秋口」の報告受け取りを目指す。北朝鮮が昨年9月、調査期間を「全体で1年程度」としたことも理由だ。しかし、情報がもたらされる確証はない。
北朝鮮は合意そのものを覆してきたわけではない。対米関係打開の見通しはたたず、中国との関係も冷え込んだままだ。厳しい環境のなか、日本の制裁解除や人道支援を引き出したい思惑もあるとみられる。
自民党拉致問題対策本部は6月下旬、北朝鮮への制裁強化を求める提言を行ったが、政府は当面見送るとした。対話の窓口を閉ざしてはならないが、拉致問題で誠実な態度を取らない限り、一部解除した制裁の復活や、強化もあることをあらためて示すべきだ。
安倍晋三首相はおととい、「すべての拉致被害者の帰国を実現すべく全力を尽くす」と述べた。言葉通りの結果が求められていることを心してほしい。
横田めぐみさんの母早紀江さんは「国民が被害者を自分の子どもと思って、完全に取り返すという気持ちを一つにしてもらえればありがたい」と訴えている。
拉致問題の解決には、日本政府の覚悟と国民の後押しが欠かせない。
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