2泊3日の入院 *サチュ*
娘の検査出発に間に合わなかった夫。 私が家にいないから 息子を小学校に遅刻しないよう送り出す作業を担う。 しかも火曜日は飼育委員会の飼育当番。 可愛いチャボやウサギがいる小屋のお掃除である。 生き物大好きの息子。 生き物全てに排便・排尿・餌やりの作業が伴うが 恐ろしい事にそれがイメージ出来ずに飼育委員に立候補する小学生もいる。
つまり小屋の掃除が嫌で清掃に一度も来ない子も存在する。 担当教師がそれを把握しているのか 連帯責任制度を採用しているのか分からないが 火曜日の清掃は息子と6年生の女子の二人だけでする。 4月からそれが続く。 だから不思議とママがいないと分かっていた息子は自分で目覚ましセットして起きた。 起きないと自分より小さな動物たちともう一人の6年生の女の子が困ってしまうからだという。
・・・ その責任感 ママがいる時にも発揮してよ ・・・
7時に父親を起こして 優雅に朝マックの朝食。 8時前に息子を小学校に送り届けたが 渋滞にはまり 出発に間に合わなかった。 残念! 看護師から院内周辺(駐車場)まで電波が届くPHSを渡される。 何かあれば連絡が来るそうで・・・ 娘の病室で静かに待つより自由度があった。
「あ~ コーヒー飲みたい 朝ごはんにしよう」
「俺 息子とマックで食ったから もう食べれない」
「・・・ じゃあ別行動で・・・ あなた病室かファミリールームで待ってたら?」
「いえ・・・ コーヒーなら飲めますので ご一緒します」
私は一人で行動できるけど 知り合いがいないこの病院で一人別行動はしたくない夫。 人が娘の食止めに付き合って 腹空かせてる時に何を言うかと思いきや・・・ 思い出せば過去にも 娘水分ストップ中のお見舞いに 自分用のカルピスや午後の紅茶を 娘目の前で 「俺 水分制限ないし~」 と美味そうに飲んでいた。 耐えかねて泣きだす娘を前にキレた私。 あやすのは私。 仕方がないからと娘の前で残りのペットボトル一気飲みして 「もうないからやれない」 という態度をとり 娘の辛さを 「俺も飲みたくないのに お前の為に頑張って飲んだ」 と幼児に説明。 理解できない年齢なのを 理解してない大人が一人。
・・・ 娘の前で 朝マックの話されないで良かった ・・・ なぜか安堵する私。
そんな中1時間もせずに処置室から連絡が来る。 医師から説明を受け 娘が目覚めるのを待っていた。 麻酔が覚めるや否や喉の渇きと食事を訴える娘。 コップで水分を取るには座る必要がある。 寝てれば96%前後。 酸素ついてた時は100%の数字だったサチュレーション。 フラフラしながら座る。 コップの水を飲み干せば食べれると信じて頑張る娘のサチュは93%前後だった。
「疲れた・・・ 寝たい・・・」 そんな言葉をつぶやく娘の唇は黒い。
・・・ この色が92~3%か ・・・ 何となく思った。
目覚めた娘の顔を見たのだから 仕事に向えば良いのにちんたら娘をいじる夫。
「お嬢さん。 来年も入院して検査することが決まりました」
余計な事を ・・・ と思いながら娘のポータブル心電図モニターを見るとサチュレーションが90%まで下がる。 娘は 無言。
「そんな話止めてくれる!」 思わず声を荒げた私。
「・・・ お腹空いた ・・・」
「・・・ お水飲み終えたら ご飯だね」 医師から言い渡された話題は避けたかった。
「ねぇ・・・ カメラの映像で何が見えたか知りたい?」 夫がいう。 モニター 90%まで下がる。
耐えかねた私が 夫の尻を引っぱたいた。
「あなたが その話に触れると サチュが90%まで下がるから止めてくれませんか!」 はっきりと言い渡した。
そんなことを言われれば 確認したくなるのが人間である。
「・・・ ママ・・・ 疲れた・・・」
こないご飯を待っていた娘。 同室の子は食べ始めているので匂いが充満していた。
「少し 横になりなさい・・・」
夫もモニターの数字を注目してたので 座位93% 寝転がると96%前後なのを確認。 さらに実験開始である。
「来年も入院するけど・・・ もう一人で大丈夫だよね・・・」 90%までダウン
「そんなことないよ。 来年もママが一緒だからね。 一人にはさせない!!」 そんな言葉をかけると 96%までUP
「でもね・・・ 良いニュースもあるよぉ・・・ お尻からのカメラは無しなので・・・・」 下剤の苦しさを体験&目視してない人間のセリフだと思った。 反射的に夫に蹴りを入れた妻。
「あんた! もう・・・ 仕事したら!!!」
娘のサチュが89%まで下がった。 児の精神の安定の為に付き添いを申し出た。 悪影響なら父親はいらない。
父親を追い帰し 娘の体調を見ながらコップ1杯の水を飲ませる。 もちろんモニターの数字を気にしながら・・・
食後 いや食事中 座位だとサチュが90%前後の数字だった。
「モニターの調子が悪いみたいなので・・・」 と看護師が 娘の細い血管をモニターが拾えるように テープでぐるぐる巻きにした。 娘が キツイとか痛いとか言っていたが 指先のみ色が変わるほどきつく巻いていないのを確認し しっかり止めると95%位まで座位で数字が上がるのを確認した。
ご飯を食べる娘に 「苦しい?」 と聞いてみた。 若干唇の色が悪い。
「・・・ いつもと変わらない・・・ かな」 娘の様子も いつもと変わらない。 私達には慣れた光景だった。
心臓も管理するとは言っていたが医者が一人つく訳では無く 心電図モニターを付けるという意味だったのかな・・・ となんとなく思った。 消化器専門の看護婦にこの数字は恐怖かも知れない。 でも・・・ 娘も私も普通だったので 看護師も冷静に対応してくれた。 モニターぐるぐる巻き以外は。 そんなに良い数字を出して 何もなかったことにしたいのだろうか・・・ 数字で帳尻合わせされているような 奇妙な気持ちだった。
食後 ぐで~んと寝っころがり寝息をたてた娘。 サチュは98%まで上がる。 顔色も良い。 麻酔などの薬が残っていたからなのか 満腹だから寝たのかは分からない。 ただ何事もなく平和に時間が過ぎていくのが幸せだった。
「抱っこ!」 そう言うなら 一緒に添い寝。
無駄な時間 寝てるだけで過ぎる時間に幸せを感じた。
母親が患者のベッドで眠ると看護師の処置の邪魔だと怒られる病院もある。 一晩中シモの世話をして寝不足の私。 2泊3日の入院は出口が見えているから気楽で良い。 また家に帰れる道筋がついている。 いつか来るその日まで・・・。 抱き続ける喜びを かみしめる。
ついこの前までお腹の上で うつ伏せで寝ていた娘。 いまも気持ちはあの頃のままである。 でも・・・ 肩に抱いた彼女の頭の重みが成長を感じた。 一晩抱き続けると痛い。 肩もこる。 眠ったら降ろす。 明け方抱っこして一晩中抱きしめた振りをする。 でも・・・ この日は本当に抱きしめたかった。 この温もりを忘れないように・・・。
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