この、潰瘍性大腸炎の治療に使用するペンタサという薬剤の先発品は錠剤ですが、あるジェネリックメーカーが“飲みやすい味の顆粒剤”を発売したので、説明の上、希望された数人の患者さんに処方したところ、全員に「効かなくて症状が悪化した」と言われました。

 おそらく、剤形を変えたために、有効成分が胃で放出されてしまい、大腸までしっかり届かなかったためと思われます。

 ペンタサは時間依存性徐放剤で、胃や十二指腸で薬剤が放出されず小腸から大腸にかけてメサラジンを放出するように、コーティングに工夫が施されています。ジェネリックも同様の工夫をしたとは思いますが、製造方法に高度な技術を要するため、簡単に先発薬の真似ができなかったということなのでしょう。

 ジェネリック認可の基準は血中濃度のみで、大腸における薬剤の成分測定が行われていません。そのため、このような事例を防ぐことはできないのです。

 つまり、届けたい場所に有効成分を届けるドラッグ・デリバリーの技術が重要な薬剤のジェネリックは「先発医薬品と同等の安全性と有効性が担保されている」とは言えないのです。

毎年の薬価改定が安定供給に影響を及ぼす理由

 もう1つ議論されているのが、薬価の毎年の改定です。

 毎年、薬剤の販売状況と取引価格に併せて薬価を改定すれば、多くの場合、薬剤の価格が下がります。取引量の多い薬剤は、他のメーカーも発売し、競争のため値引きが行われていることが多いからです。