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「韓国とのやり取りの方が忙しい」…他国は困惑

読売新聞 7月5日(日)8時36分配信

 【ボン(ドイツ西部)=本間圭一、工藤武人】「明治日本の産業革命遺産」(8県、23資産)の世界文化遺産登録の可否についての審議は5日に先送りされ、歴史問題をめぐる日韓両国の対立の深さが浮き彫りとなった。

 遺産登録を審議する世界遺産委員会のほかの委員国からは「対立を早く収拾してほしい」との声が相次いだ。

 議長国ドイツは委員会を外交抗争の舞台にはしたくない考えで、日韓両国代表団を個別に呼ぶなどの調整を行った。韓国が委員会で朝鮮半島出身者の強制徴用について発言を求める中、日韓の妥協策を探った。ドイツ代表団の一人は4日、「合意は近い。あと24時間で解決してくれると信じる」と記者団に語った。

 委員会での意見表明は本来自由だが、反論の応酬で審議の収拾がつかなくなる事態を避けるため、審議前に当事国で内容を調整することが多い。日韓は4日、ボンの委員会会場での交渉と並行して、東京、ソウル間でも調整を続けた。

 4日、交渉の難航で日程をめぐる情報は二転三転した。ボン入りしている鹿児島県の伊藤祐一郎知事は4日朝、内閣官房から「今日の審議はない」との連絡を受けたが、その数時間後、「審議の日程が入るかもしれない」との連絡を受けて急きょ会場入りした。

 交渉の一方、日韓両国は委員会の会場で、ほかの19委員国へのロビー活動を活発化させている。韓国側は、趙兌烈(チョテヨル)外務第2次官らが各国代表を回り、韓国側の立場に理解を求めた。

 これに対し、日本側は、外務省の新美潤・国際文化交流審議官らが委員国と接触。世界遺産の申請には、日韓併合時代(1910〜45年)が含まれていない点などを強調し、ユネスコ諮問機関の勧告に沿って登録を支持するよう訴えた。

 セルビアの代表団は「自分たちの案件より日本の登録案件をめぐる韓国とのやり取りの方がよっぽど忙しい。2か国間で妥協点を見つけてほしい」と語った。レバノンの代表団は「ロビー活動が激しく、どの国も疲れている」と日韓の対立が続くことにいら立ちを隠さなかった。

 世界遺産登録は、ユネスコ諮問機関の勧告を踏まえ、21委員国が全会一致で決めるのが通例。投票に持ち込まれた場合、有効投票の3分の2の賛成で決定する。過半数の賛成で、審議を延期することも可能。その場合、審議は来年以降にずれ込むため、日本は回避したい意向だ。

最終更新:7月5日(日)8時36分

読売新聞

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