日本会議を「陰謀論」的に語らせてしまうもの――シリーズ【草の根保守の蠢動】特別企画「宗教と政治の交わるところ」第一回【後編】
宗教情報リテラシーの問題
塚田:そうすると、「日本会議とその周辺の論じ方」という問題になってきますね。
菅野:フライデーが書いた記事や、朝日新聞が去年書いた記事や、東京新聞が何度か書いてる記事など読んでて思うのは、メジャーなメディアが日本会議について書くと、やっぱりどうしても、「いろんな宗教団体がいるぞ!気持ち悪いな!」という浅いノリになってしまうんですよね。それは違うぞと。そういう議論の進め方はダメだろうと。これは先生も『宗教と政治の転轍点』のなかで書いてらっしゃいますけど、「神社の氏子であり、どこかの寺の檀家であり、新宗教の信者であり、自民党の後援者である」みたいな、自分のおじいちゃん、おばあちゃんかもわからないような普通の人々が、日本会議的なものの下支えをしてるわけですよね。「宗教だ!気持ち悪い!」という見方は、そういう側面を見逃してしまう。
また、これも先生は問題意識としてお書きになってらっしゃいますけど、アメリカの宗教右翼って概念をそのまま神社本庁にもっていくのもちょっと違うと思うんですよね。
塚田:神社本庁や神道政治連盟は、「見えやすい」ですからね。それに神社本庁は結構オープンなんで。『神社新報』紙も日本会議関連でやっているのと同じようなことをちゃんと記事で書くわけです。自分たちから出す資料が多いですからね。『神社本庁六十年誌』『神政連四十年史』みたいな年史は5年ごと、歴史的な資料も多く記録して表に出している。それでどうも、矢面に立たされる。本庁の人たちとか神社界の人たちには、「いや、あれは別にうちが全部やっているわけじゃないんだけど…」と思う人もいると思います。
菅野:共産党員の神職さんもいらっしゃいますからね。田舎にいくと、ちょいちょいいらっしゃいます。
塚田:全国にある8万ほどの神社が総力をあげてやっているわけじゃないですよね。文化庁編の『宗教年鑑』(平成26年版)によれば、神社本庁の神職は2万2千人ほどとある。しかし、それだって「せーの」で一斉に右にならえとなるわけではない。
よくね、ネット記事なんかで「神社神道の信者9000万人がー」みたいな書き方もありますけども……。
菅野:そうそう、9000万人も一糸乱れぬ動きを見せる宗教団体なんて、世界にもない。
塚田:そんなにいるんだったら本当にただの全体主義だ(笑)。
菅野:あの9000万人って、おそらくお正月になったらニュースになる「明治神宮の初詣客は◯◯万人でした」ってやつの合計なんだと思いますよ。うちの社務所で売れた神宮大麻はこれだけです、うちの破魔矢はこれだけ売れましたっていうのの合計でしょうね。
塚田:どんぶり勘定でしょうね。最新版では8200万人くらいになっています。だからそうした陰謀論的なというか、ありもしない勢力を一枚岩的に見せるような間違った実態把握と情報発信は弊害しかない。
そういうのを踏まえると、研究者あるいは大学教員としては、やっぱり、宗教に関するリテラシー、宗教の情報に関する世のなかのリテラシーに不安を感じることがあります。「えっ、その言説に乗っかっちゃうんだ」「そんなふうに見ちゃうんだ」と。このリテラシーの問題に対して何かできないかというのはありますし、本書もそれに資するところはあると思います。
先ほどの話にも関係しますが、「宗教が絡んでいるから気持ちわるい」で思考停止してはダメなんです。世のなか、どこだって関わってきます。宗教団体とそのメンバーだって「国民」「市民」なんだから。問題は、その宗教の社会進出なり関与の内容や質や方法。そういった意味でも、日本会議を分析する際に、日本青年協議会に注目された菅野さんの連載の意義は大きいと思います。
以下、第二回に続く。
<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>
塚田穂高●1980年、長野市生。國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所助教。専門は宗教社会学で、新宗教運動・政教問題・カルト問題などの研究に取り組む。ちなみに、取材活動などがあるため残念ながら近影はNGとのこと。Twitter ID:@hotaka_tsukada
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『宗教と政治の転轍点―保守合同と政教一致の宗教社会学―』 戦後日本の宗教運動は、どのように、そしてなぜ、政治に関わってきたのか |
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