余録:米国で詐欺師の商売によく使われる商品の一つが…
毎日新聞 2015年07月02日 00時33分(最終更新 07月02日 00時34分)
米国で詐欺師の商売によく使われる商品の一つが聖書というから皮肉である。こういえば1970年代の映画「ペーパームーン」で、葬儀のあった家に故人が注文したと聖書を売りつける詐欺師と少女のコンビを思い出す方も多いだろう▲実際の手口にはこういうのもある。ある日、注文もしていない本革(ほんがわ)の装丁(そうてい)の聖書が30ドルの請求書とともに送られてくる。請求書を見ると合成皮革の廉価(れんか)版のそれで、案内書にはご希望なら革装の50ドルの豪華版と取り換えますとある。「あ、間違えて送ってきたんだ」▲これは得をしたと信心深いお客もついつい頼んでもいない聖書に30ドルを送りたくなる。むろんもともとが30ドルの革装聖書である。きまじめな客が間違いを指摘しながら50ドルを送ってくれば、詐欺師にはもっけの幸いだった▲さてもし注文もしていない商品が送りつけられたら、どうすればいいか。今月から「188」番に電話して相談できることになった。「いやや」で覚えてほしいというこの消費者ホットライン、音声案内を介し各地の消費生活センターや国民生活センターにつながる▲同じホットラインはすでに10けたの番号で運用されているが、より覚えやすく利用しやすいものにしようと3けたが新設された。それというのも高齢者からの相談が増えるなか、詐欺まがいの商法に泣き寝入りを強いられている被害者が少なくないとみられるからだ▲「ペーパームーン」では少女が貧しい家族に聖書をただにしてホッとさせるが、人の弱みにはすかさずつけ込む今日の悪徳商法である。多くの人に利用されてほしくもあり、ほしくもない188番だ。