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【社会】

政治に参加 かっこいいよ 映画「選挙フェス!」

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 自民党が圧勝した2013年の参院選に緑の党から比例代表で立候補し、落選したミュージシャン三宅洋平さん(36)の選挙活動を追ったドキュメンタリー映画「選挙フェス!」が、4日から渋谷・ユーロスペースなどで公開される。バンドとセッションしながら「国会に僕らのセンスを持ち込もう」と呼び掛ける三宅さんの訴えはネットを介して広がり、約17万7000票の獲得につながった。杉岡太樹(たいき)監督(35)は「この映画が、選挙や政治の捉え方を変えるきっかけになれば」と語る。 (増田紗苗)

 杉岡監督は公示から投開票前日まで十七日間にわたり三宅さんに密着。「選挙は壮大な集団アート」「コミュニケーションのすべを高めることが民主主義の根底。誰かだけがやっていたら疲れるから、みんなでやろう」−。マシンガンのように言葉を放つ三宅さんの演説を軸に、支持者とのあつれきや愚痴、終盤の焦りなど全てにカメラを向けた。

 「彼は体裁とか建前とか一切なく、心から言葉を発しているというのが伝わる。畑違いの新人でも臆さず、格好をつけずに『僕たちはこのままで政治に参加していこう』と訴える姿に共鳴した」と杉岡監督は明かす。

 杉岡監督が三宅さんに初めて会ったのは一一年だった。前作「沈黙しない春」で脱原発デモを追い掛けていた時、広島の原爆ドーム前でギターをかき鳴らし、声を上げる三宅さんを見て「かっこいいと思った」。

 二年後、三宅さんは参院選への立候補を表明。杉岡監督は「ミュージシャンとして好きだし尊敬していたので、色物に見られるのがもったいないというか、格好悪いところにいくのではと思った」という。しかし街頭演説にTシャツ、短パン、キャップをかぶり、ひげ面姿で現れた三宅さんを見て「面白い」と心を動かされた。

 三宅さんの宣伝映画にならないように、被写体との距離感には気を付けた。「カメラが回っていないところでは基本的には接触しないし、部外者という立場を保った。ただ彼にひかれていく自分もいて、その葛藤が作品に出ればいいなと思った」

 三宅さんは改選四十八議席の比例代表で、候補者百六十二人のうち二十六位となる約十七万七千票を獲得したが、党の総得票が議席獲得ラインに届かず、落選する。結果は得られなかったものの、ほぼ無名のミュージシャンの声は大きなうねりとなった。

 今回の作品は今年、上映を予定していた神奈川県内での映画祭で「特定の政党・政治家を取り上げた」という理由で上映が実現しなかったが、杉岡監督は「僕自身、もともと選挙に行くタイプではなかったけど、政治に関わるのは当たり前の権利だと思うようになったのは彼のおかげ。もっと自由に政治の話ができる環境をつくることが政治への関心につながると思うので、それをこの映画で伝えられたらいい」と期待を込めた。

 

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