政府は3日、2015年版の通商白書を閣議に報告した。日本企業の海外で稼ぐ力が欧米企業などに比べて弱く、事業の多角化が収益の向上につながっていないと指摘。中国などの有望市場で成長分野への進出が遅れているとも分析し、日本企業に対応を促した。
白書は、日米欧とアジアのグローバル企業計160社について事業部門別の売上高を分析した。
売上高に対する営業利益率を事業部門ごとにみると、日本企業は全部門の91%で売上高営業利益率が10%を下回った。
営業利益率が10%を下回った部門の割合は米企業で28%、アジア企業で59%、欧州企業で66%だった。白書は日本企業の事業多角化が成長分野に的を絞れていないことが利益率の低さにつながっていると指摘。選択と集中の必要性を訴えた。
欧米や中国など主要市場に向けた輸出の動向も品目ごとに分析した。
例えば中国市場向けの輸出では、日本企業とドイツ企業を比較。量と単価が同時に伸びた「成長性の高い品目」が輸出全体に占める割合は、日本企業では14.5%にとどまったが、ドイツ企業では39%に達した。
需要が高まる医療機器や航空機部品といった分野での取り組みに差が出たためとみられる。
輸出全体でみて輸出量が増えている品目のシェアも、日本(47%)より米国(74%)やドイツ(71%)、中国(89%)の方が高い。日本企業が付加価値の引き上げと数量拡大の両面で問題を抱えている構図だ。
白書はグローバル企業の本社誘致や、外国人留学生・労働者の受け入れに積極的なスイス、ハイテク企業への投資を政府が積極支援しているイスラエルなどの政策も紹介。日本でも海外からの投資や人材を呼び込む対策の強化が必要だと指摘している。
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