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Danas je lep dan.

2015-07-03 「あと一度だけ奇跡は起こるだろう」

[]彼らは本当は,生命なんてちっとも尊重してはいない

 イスラエル報道に接して既視感に襲われたのでメモ。

 法案が成立すれば、こうなる――。

 囚人が死に瀕していたり、自らの体に致命的なダメージを及ぼしていると判断された場合、医師が囚人に強制的に食べさせる。過去の例だと、鼻に入れたチューブで食物を流し込むのが一般的だ。

イスラエルが考え出した新たな「拷問」 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 今回の法案に対し、イスラエルとヨルダン川西岸人権運動家たちは拷問と同じだと非難。アメリカを本拠とする「人権のための医師団」は、イスラエル議会に法案否決を呼びかけ、「医療従事者を人権侵害と拷問の手先にするな」という声明を出した。

 だが、イスラエルのギラド・エルダン国内治安相は、法案は政府にとって必要な対抗手段だと主張する。「囚人たちはハンストという自爆テロでイスラエル国家に脅かしている。我々は脅迫を容認しないし、囚人を刑務所で死なせもしない」

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 普段は直接的な爆撃や砲撃で殺そうが分離壁で救急車の通行を差し止めて間接的に殺そうがまったく頓着されない生命が,ハンガーストライキの時に限って無理矢理に生かされる。これほどまでにパレスチナ人の生命を軽んじた話があるだろうか。

 このニュースを読んでわたしが想起したのは,チベットの事例だった。チベットでは未だに焼身が続いている。焼身者の家族や出身村にまで連座制適用されているほどに当局は自殺防止に懸命になっているが,それでも焼身は止まらない。

 チベット人に向けて「焼身したいやつにはガソリンを支給してやる」と言い放った中国の県長がいた。重い火傷を負った焼身者に殴る蹴るの暴行を加えた警察官もいた。当局が人命やチベット人の尊厳など欠片も気にかけていないことは誰もが知っている。パレスチナの事例と同じで,死なれては都合が悪いから死なせようとしないだけだ。ハンストを“自爆テロ”と呼び,焼身者を“治安紊乱”として糾弾する姿勢が,それをよく示している。

 だとしたらそれは,繰り返しになるが,彼らの生命を,これ以上ないほどに軽んじていることになる。軍に殺されるのはいい,だがハンストで死ぬのはまかりならん,お前をいつ殺すか死なせないかはわれわれが決める,というわけだ。殺す権力と生かす権力が剥き出しのままで結合している。

 “生命を守れ”という弾圧の形態。もちろんわたしは,ハンストするパレスチナ人や焼身するチベット人には,死なないでほしいと思う。生き続けてほしいと思う。しかしその願いは,少なくともわたしは,食事を断って死にゆく人や炎に包まれて焼かれる人にではなく,彼らをそのような死に追いやる連中にまず向けたい。パレスチナ人に,自分たちの生命の価値はかように軽いのだと日々思わせ続けているイスラエル国家に。チベット人に,もはや“平和的な”抗議手段は全て失われたのだと絶望を与え続けている中国共産党に。

 見せかけの,植民地支配に奉仕するだけの“人命尊重”ではなく,本当の意味で人命を尊重したいと願うなら,このような偽りの“人命尊重”に抗うべきだろう。だがそれは,「彼らを死なせろ」ということではない。彼らを人間として扱えということなのだ。

 関連過去エントリ:

 ほんとうに焼身自殺を止めさせたいのなら - Danas je lep dan.

 チベット人はなぜ焼身するのか――中原一博『太陽をとりもどすために』 - Danas je lep dan.

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