所得税:抜本改革の議論に着手 配偶者控除の見直し焦点に
毎日新聞 2015年07月02日 21時20分(最終更新 07月03日 02時20分)
◇政府税調が再開
政府税制調査会(首相の諮問機関)は2日、総会を開き、子育て世代や共働きの家庭などの支援に向け、所得税の抜本改革の議論に着手した。低所得者や若者の税負担軽減のほか、「女性の働く意欲をそいでいる」と指摘される配偶者控除の見直しなどが焦点となる。来年夏に改革案の中期答申を提出、政府は早ければ2017年度税制改正に答申の内容を反映させる考えだ。
先月末に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、所得税改革を進める方針が示されたのを受け、政府税調も8カ月ぶりに再開。税制面でも、安倍政権の経済成長路線を念頭に置いた議論を展開する。骨太の方針は、経済成長の担い手である若者に焦点を当て、低所得者が意欲を持って働きながら結婚・子育てができるような税制の見直しを進める方針を明記。総会でもこの方針を支持する意見が相次いだ。
政府税調は既に、女性登用に向けた配偶者控除見直しの議論を進めている。政府税調会長の中里実東大教授は総会後の記者会見で「配偶者控除にとどまらず、幅広く議論しながら所得税のあり方について考えたい」と説明。サラリーマンの税負担を軽減する「給与所得控除」や、家族を養う人の負担を軽減する「扶養控除」など、他の控除も一体で議論する。
低所得の子育て世帯を優遇する代わりに、高所得者に負担増を求める方向の議論が進む見通し。高所得者の控除を縮小して税負担を重くする一方、これで得た財源を低所得者向けの給付措置に振り向けるといった案が軸になりそうだ。中里会長は「若くても高齢でも、経済的に余裕のある人に負担をお願いすることがあるかもしれない」と語った。骨太の方針が、消費税10%への引き上げ以外の国民負担増を「極力抑制する」としたことを受け、減税と増税を同額にし、全体では負担が増えないようにする。
所得税を軽くする各種控除には、創設から長期間経過し、時代の変化に合わなくなっているものもある。このうち配偶者控除は、専業主婦やパートの妻がいる世帯を念頭に夫の税負担を軽くする制度。妻の年収が103万円以下の場合に適用されるため、あえて勤務を抑える人が多い。政府税調は「働き方に中立的な税制」を目指し、昨年11月に五つの見直し案をまとめている。
今後は人口動態、世帯構成、働き方などの実態を検証したり、有識者へのヒアリングを実施したりして議論を進める。国民的な理解を得るため、中期答申に先立ち、方向性を示す論点整理を今秋にまとめる方針だ。【朝日弘行】