ヘンデルと(戦慄の右脳改革)音楽箱

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help RSS ヘンデルの「魔法オペラ」

<<   作成日時 : 2009/04/17 00:03   >>

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ヘンデルには「魔法オペラ」と呼ばれる作品が、5つあります。
これは、ファンタジックな道具立てや、大掛かりな仕掛けを使った、スペクタクルな演出がウリのオペラで、魔女や魔法使いが重要な役割を果たします。
代表的な魔法オペラ、「リナルド」「オルランド」「アルチーナ」について、まとめてみました。

この3作品をひと言で比較すると

有名リナルド、曲アルチーナ、時代を先取りオルランド♪

・・・になりますかね〜♪ (^ ^;)


★ リナルド(Rinaldo)・・・1711年初演

「ヘンデルがロンドンで最初に上演し、大成功したオペラ」と、どこにでも書いてあり、アリア「私を泣かせてください」を含むので、ヘンデルについて多少「知識」はあるが、実際にはまだそれほど聴いていない・・・という人の間では有名な(人気もある?)オペラです。
多くの曲をイタリア時代の自作品から転用した、それまでの総決算とも言うべき作品ですが、ヘンデルのオペラとしてはBクラスかも?

十字軍の騎士リナルドと、彼の恋人(戦いに勝利したら結婚する約束の)アルミレーナ、敵として彼らを捕らえたのに恋愛感情を抱いてしまう、魔女アルミーダと王アルガンテのカップル・・・という筋立ては、その経緯や動機付けが安易なので、登場人物が皆浅薄に見えてしまいます。
色々な曲調のアリアを順に出すために、御都合的に人物を動かしエピソードを作る、オペラ・セリア台本の欠点がしっかり出てますね。
戦いに負けたアルミーダとアルガンテが、キリスト教に改宗するという結末も、取って付けたようで正直シラけます。(-_-;)

各アリアも、ヘンデル円熟期のものと比べるとやや硬い印象で、旋律にも練りが不足しているような気が。
なので、オペラとして総合的に見ると、何かイマイチです。
まあ、20台半ばでこれだけのオペラが書けるのはスゴイね・・・みたいな「条件付」傑作でしょうか。


★ オルランド(Orlando)・・・1733初演

台本・音楽共に実験的な部分が多い、オペラ・セリアの枠を超えた大胆な作品。
当時は聴衆がついていけず?全く不評でしたが、現在では19世紀オペラを先取りしたようなヘンデルの試みが、高く評価されています。

騎士としての職務と、愛の間で葛藤するオルランドは、失恋の絶望からついに発狂!、黄泉の国へと下る恐ろしい幻覚の中で、愛するアンジェリカを殺してしまう。
しかし、魔法使いゾロアストロの魔力と力添えで、正しい心を取り戻し、アンジェリカとその恋人の愛を認めるに至る・・・という「主人公の心の成長」に焦点を当てた台本が、すでに異色です。

音楽的には、2幕最後の「狂乱の場」での斬新な和声進行や変拍子、3幕のけだるい「眠りの場」などが印象的で、オルランド役は歌唱力だけでなく、相当の演技力も必要ですね。
劇進行と音楽の密着度が高いので、要所要所でドラマチックなオペラの面白さが味わえます。
「不思議な話」ではありますが、登場人物が5人と少なく、人間関係も単純なため、展開がわかりやすいのも長所です。


★ アルチーナ(Alcina)・・・1735初演

実際にヘンデルのオペラを、ある程度見ている(聴いている)ファンの間では、非常に人気が高いオペラです。
魔法の力で全てを意のままにできるはずなのに、愛する男の心だけは操れなかった魔女アルチーナの、あまりに「人間的な」悲劇が見どころ。
「リナルド」ではイマイチ突っ込み不足を感じる、魔女アルミーダの「女のドラマ」が、この「アルチーナ」では台本・音楽共に十二分に表現されていて、私たちの共感を誘います。

アルチーナ以外の登場人物も、「リナルド」よりずっと行動に説得力があり、人間的な存在感がしっかりしています。
その彼らに、円熟期のヘンデルが音楽を付けたのですから、傑作にならないのがおかしいかもしれません。
「この美しい光景も、アルチーナの魔法が解ければ、また元の恐ろしい姿に戻るだろう・・・」と歌う、Verdi prati を始め、伸び伸びとした旋律&深い情感をたたえた名アリアがたくさんあります。

目を楽しませるバレエ・シーンもありますが、この作品の「魔法オペラ」としての側面を、素直に味わわせてくれる正統派の演出が、あまりないのが残念です。
魔法の島、美しい森や草原、魔女の住む宮殿・・・・・ファンタジックな舞台仕立ての中でこそ、アルチーナの悲劇がリアリティを持って迫ってくると思うのですが。

◆ 次回は残り2つの魔法オペラ、「テゼオ」と「ガウラのアマディージ」について、紹介します。

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コメント(8件)

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ヘンデルのオペラ聴いてみたいとずっと思いつつ、なかなか手が(というかお金が(笑))廻っておりません。セット物などのお買得CD見付けて聴いてみたいと思います。その時の参考にさせて頂きます。
golf130
2009/04/18 22:08
golf130さん、
>なかなか手が(というかお金が(笑))廻っておりません
まあ、ヘンデルを本格的に聴くには、そこが一番ネックかもしれません。

>セット物などのお買得CD
この記事の作品だと、「アルチーナ」「オルランド」のセットがクリスティ盤で出ています。
私はこれ、どちらも以前ハイライト盤で買ってしまって・・・。
「オルランド」は良い演奏ですよ。
「アルチーナ」はイマイチかなあ・・・(「アルチーナ」は意外と演奏に恵まれてない気がしますね)
REIKO
2009/04/20 07:07
「オルランド」って、もう少しでアメリカ合衆国やニュージーランドにある「オーランド」に似てましたね…惜しい !!
「アンジェリカ」って、どこかで聞いた名前…と思ったら、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー作品の映画を上映している「シネマ・アンジェリカ」(東京都渋谷区)と似てます…
参照 http://www.gojyu.com/(シネマ・アンジェリカ)
http://www.ghibli-museum.jp/library(ジブリ美術館ライブラリー)
「アンジェリカ」と似ている地名は、フランスにある「アンジェ」が惜しかったです。
ことねっち
URL
2009/04/20 22:30
ことねっちさん、
>オーランド
ひょっとして関係があるのかもしれませんよ。
オルランドはフランス語だと「ロラン」になるそうですが、オルランドの英語読み→オーランドかも!?
ちなみにロランはRolandと綴りますが、日本の電子楽器メーカーと同じですね。
REIKO
2009/04/21 12:03
オーランド(英語読み)と似てる人名や地名を確認した所、オーランド・ブルーム(映画『カリブの海賊』に出演)の他、「オーランド」がファーストネームの野球選手が数名いました。
イタリアのコムーネ(日本の町村?)に、「フィレンツオーラ・ダルダ」と「オーラ」があったので、群馬県邑楽【おうら】町(太田市が編入を申し込んでる…)が姉妹都市の協定を結んで欲しい!!
参照 http://wpedia.goo.ne.jp/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%AB%E3%83%80(フィレンツオーラ・ダルダ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%A9_(%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2)(イタリアのオーラ)
ことねっち
URL
2009/04/21 18:25
ことねっちさん、
「邑楽【おうら】町」って、確かにイタリア語っぽいので、姉妹都市になったら面白いかも、ですね♪
REIKO
2009/04/23 09:24
こんにちは。「リナルド」と「オルランド」は聴いたことありますが「アルチーナ」はまだです。ヘンデルのオペラは台本は「なんじゃこりゃ!」というものもありますが、そんな台本でも立派な音楽をつけられるヘンデルってやっぱり偉大ですね。
きゆう
2009/04/25 16:33
きゆうさん、
>アルチーナ
この作品、現状では人気のわりに良いCD&DVDに恵まれてない感じがして、それが残念です。
あわてて聴かなくても、少し待った方がいいかもですよ。

>そんな台本でも立派な音楽をつけられるヘンデル
言えてます!(笑)
一般にバロック期の作曲家って、環境が悪くても?それにめげない屈強なタイプが多いですよね。

REIKO
2009/04/26 14:06

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