ヘンデルと(戦慄の右脳改革)音楽箱

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help RSS メサイアは例外?

<<   作成日時 : 2009/01/19 21:31   >>

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ヘンデルの音楽史上最大の功績は、英語によるオラトリオというジャンルを確立したことで、その最高傑作が「メサイア」とされています。
ヘンデルのオペラが、まだ作品のタイトルさえ一般的でないのと比べれば、「メサイア」1曲だけでも有名になっているヘンデルのオラトリオは、まだ恵まれていると言えるでしょう。
ですがこの「メサイア」、20曲以上あるヘンデルのオラトリオの中では、かなり異色の作品なのです。

「メサイア」が、他と違っている点は・・・・

● 台本のかなりの部分が、新約聖書から取られている
● 「物語」ではなく、「解説」になっている
● 歌手に「登場人物」が割り当てられていない
・・・・・・ことです。

逆にいうと、ヘンデルの他のオラトリオ作品は、概ね・・・・

● 旧約聖書から題材が取られている
●一応 「物語」になっている
● 各歌手は、物語中の「登場人物」になって歌う
・・・・・・という作りです。

例えばオラトリオ「ソロモン」は、旧約聖書の「列王記上」に出てくるソロモン王が主人公(←という表現は変かもしれませんが、まあそういう感じ)で、神殿を建てたソロモンの婚礼シーンや、有名な「この子の母親はどっち」の裁判、シバの女王の来訪・・・などの場面が音楽によって描かれています。
歌手はそれぞれ、ソロモン王やシバの女王など、割り当てられた役で歌います。
オラトリオなので、演技をしたり舞台をしつらえたりはしませんが、その点を除けばほとんどオペラと変わりないのですね。
むしろ、ソプラノからバスまで各声域の歌手が登場し、合唱も随所に入るので、ヘンデルのセリア様式のオペラより、ずっと「オペラらしく」聴こえるかもしれません。

「メサイア」は耳で聴いた感じでは、他のオラトリオと大差なく感じるでしょう。
ですが台本が「キリストの生誕・受難・復活」に関する語句を、聖書のあちこちから引用して「切り貼り」しているために、内容は物語というより、キリスト教の奥義の「解説」になっています。
実際、英訳の聖書では登場人物のセリフなので主語が「I(私)」となっている箇所が、台本では随所で「he(彼)」などの三人称に置き換えられています。

ある意味メサイアはこの「客観性」が、広く親しまれるようになった理由の1つなのかなぁ・・・とも思いますが、どうなんでしょうか。
少なくとも日本では、ヘンデルのオラトリオに登場するソロモン、ダビデ、サウル、イェフタなどの旧約聖書の有名キャラ(笑)は、それほど一般的ではありません。
登場人物を知らなければ、ストーリーにも興味が持てないし、だったら物語になっていない作品の方が「気楽に聴ける」のが実際のところです。
以前自治体の合唱団でメサイアを歌った時に、「メサイアってどういう意味なんでしょうね?」と無邪気に質問していたメンバーがいましたが、それは論外としても・・・(^ ^;)

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コメント(8件)

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こちらにもおじゃまします。

たしかに、オラトリオって旧約聖書から題材が取られています。その点、メサイアは新約聖書ものですね。

ところで、ヘンデルはどんな宗教観を持っていたんでしょう。

ルター派の牙城、ザクセンに生まれ、カトリックの総本山ローマで活躍(たしか)、でイギリス教会のロンドンに行き、最終的にはイギリス人になってしまいました。
pentahydroborite
URL
2009/01/20 06:54
pentahydroboriteさん、いらっしゃいませ♪

>ヘンデルはどんな宗教観を持っていたんでしょう

イタリアに行けばカトリック物、イギリスでは国教会物・・・と、結構(全然?)ポリシーないですよね。(笑)
「そこで必要とされる音楽を書く」という、実利的な考え方の持ち主だったのでは、と思います。
REIKO
2009/01/20 16:29
今でさえ、あちらの方は表面的には平和に暮らしているものの、カトリックvsプロテスタント諸派の対立はいまだ健在のように感じます。

宗教対立が現在よりはるかに強烈だったヘンデルが生きた時代に、ヘンデルはうまく立ちまわったようですね。

後半生ヘンデルの活躍したロンドンという都市は現在的な宗教的な価値観の先駆けみたいなものがあったのかもしれません。
pentahydroborite
URL
2009/01/21 06:17
>カトリックvsプロテスタント諸派の対立

そういえば子供の頃、私が通った幼稚園はプロテスタントで「イエス様」、弟はカトリックで「イエズス様」でした・・・。
一時期「(カトリックとプロテスタントの)共同訳」聖書が、両方の中間?を取って「イエスス」となっていたと思いますが、ほどなく「新共同訳」では元通り?「イエス」となっていましたね。
やっぱりあの「共同訳」は不評だったんだろうな・・・。(^ ^;)

・・・こういうのも、裏では熾烈&血みどろの議論が交わされていたのでは?と思います。
REIKO
2009/01/21 20:55
アチャー、「イエズス」がイエス様だったとは、この年(どの年じゃ)まで知りませんでした。

残念ながら日本的無神論の強烈な影響下にある私は、キリスト教については、宗教音楽から情報を仕入れるという、極めて偏った知識しかありません。もっと、体系的にキリスト教について知っていれば音楽の楽しみ方もずいぶんと違ってくるのでしょうけど。

それから、「イエスス様」ではちょっと力が入らないというかなんというか・・・。

「名前なんてモノの本質を示すには至らない些細なものでも必要なものだから大切にした方がいい」(by 蒼星石)

といったところでしょうかね。
pentahydroborite
URL
2009/01/22 15:05
>もっと、体系的にキリスト教について知っていれば

とりあえず、聖書は買って家に置いておく。(爆)
後は、わかりやすく書かれた「聖書のガイド本」みたいのがたくさん出ているので、読んで参考にする・・・くらいでしょうか。
ヨーロッパの音楽・美術は、キリスト教抜きには語れませんから。
西洋絵画で、印象派など「宗教抜き」で見れるものが日本で人気なのは、やはり宗教の壁があるからなんでしょうね。

このブログでも、いずれオラトリオに関連して「ソロモン」「サウル」「ダヴィデ」などの、旧約人気キャラ?を取り上げる予定です。
REIKO
2009/01/23 04:57
ご存知でしょうか。
今年7月ドイツのトリアーに世界のメサイア愛唱家450名を集めて「ヘンデル・メサイア世界合唱祭」が開催されます。日本から30名参加できますが、まだ空きがあります。詳細はこちらでご覧いただけます。
http://www.jointconcert.com/kojinsanka%20halleluja%20Mr%20Haendel%202009.html

よろしくお願いいたします。

ジョイントコンサート国際委員会 
垣沼佳則
垣沼佳則
URL
2009/05/01 10:34
>垣沼佳則さん、
情報ありがとうございます。
リンク先拝見しました。
没後250年ということで、夏にも特別開催するのですね。
7月のドイツなら、気持の良い気候で、楽しく歌えそうですね。

REIKO
2009/05/01 15:10

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