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help RSS 「メサイア」以外は駄作なのか?

<<   作成日時 : 2009/02/11 20:42   >>

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ヘンデルは20余のオラトリオを作曲しています。
しかしその中で「メサイア」だけが圧倒的に有名で、他の作品はかなりクラシック音楽を聴いている人でも、題名さえ知らないか、良くて「ちょっと聴いたことがある」程度なのが普通です。
この事実をもって「メサイア以外は駄作なのでは?」と思う人がいても当然でしょう。
しかし実際は、全くそうではありません。

去年の末から、メサイアの次にはどれを聴いたらいいか紹介するために、ヘンデルのオラトリオを色々聴いているのですが、どれも力作&台本にもそれぞれ個性があって、決められずに困っています。
あまりたくさん紹介したのでは、単なる作品リストになっていまい、ガイドの意味がありませんよね。
いっそ「これはやめとけ」という作品(あるかどうかは別として)をあげた方が、手っ取り早いかも?と思うくらいです。

・・・・・・で、色々聴いてみて感じたのは、現代において「メサイア」だけに演奏や録音が偏っている(それが作品の人気・知名度にもつながる)のは、曲の出来以外の要因がかなりあるのでは?ということです。

まずメサイアは・・・
★生前ヘンデルが度々改訂したため、色々なバージョンがあり、どれを採用(あるいは組み合わせ)するかで様々な解釈が可能(だから指揮者がやりたがる)
★独唱者の人数が少なくて済み、オケの編成も比較的シンプルなので、経費がかからない
★演奏時間も長すぎない
★当たり障りのない台本(物語ではないので、意味がわからなくても鑑賞には困らない・・・どのみちクリスチャン以外の人には、どうでもいい?内容)

・・・という特徴があります。
これを、当時大人気だった「サムソン」(「メサイア」の直後に作曲)と比べると、「サムソン」は・・・
★独唱者8人、オケも管楽器が多く、大編成
★演奏時間が4時間近く、長い・・・。
★物語の背景や台本の内容が、非常に重要(わかって聴くのとそうでないのとは、大違い)
★しかし、サムソンが失明の絶望感を歌うアリアや、数千人のペリシテ人を殺して終わる結末など、色んな意味で「やりにくい」部分が・・・。

「サムソン」は台本・音楽共に、非常に素晴らしい作品なのですが、現代では(おそらく)以上の理由で、なかなか演奏・録音の機会に恵まれないのだと思われます。
他にも民族間の抗争を描いた「ユダス・マカベウス」、パレスチナ問題に直結する?「ヨシュア」など、当時の聴衆は無邪気に喜んで聴けても、現代においては「ちょっと・・・」的な内容の作品があります。
一方台本にそのような問題点がない「ソロモン」は、当時それほどの人気でなくても今では録音にも恵まれ、ヘンデル・ファンの間では「サウル」と並ぶ人気オラトリオになっています。

要するにメサイアは、色んな意味で「無難な作品」なのです。
とりあえずメサイアやってれば、人は来るしCDは売れるし面倒なこともないし・・・安易な選択の結果の人気なんですね。
クラシック音楽では、作品の知名度・人気と作品の質が必ずしも一致しないことは、ちょっと詳しい人なら誰でも知っていると思います。
ヘンデルのオラトリオも、その例外ではありません。

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

メサイア突出はやはり「ハレルヤ」が大きいのではないでしょうか。現実問題としてメサイアが知られているというよりは「ハレルヤ」が知られていて、それがメサイアの一部である。というのが多くの人にとってのメサイアのイメージでしょうから。

ハレルヤの原曲を聴いてみよう、という人がたくさんいる→需要がある→録音される、みたいなパターンでしょうか。

台本が「どうでもいい」のは大きいような気がします。ただ、編成に関しては以前読んだホグウッドの伝記ではヘンデルの死後の大ブームでは作者の意図を無視した極大編成の演奏がもてはやされたみたいなんですよね。大規模なのが魅力、的な。
経費がかからない、というのが比較的最近の現象のような感じもします。

「サウル」が2枚組で済めば「メサイア」の次に最適だと思うのですが…
文房具009
2009/02/12 18:22
文房具009さん、コメントありがとうございます♪
>ハレルヤ
やっぱり「ハレルヤが入っている曲」ってことで、とりあえずCDが売れるんでしょうかね。(^ ^;)
>編成
まだ古楽演奏が普及してなかった頃は、大編成で大袈裟に盛り上がるヘンデル・・・みたいな演奏のされ方がありましたよね。
シンバルなど入れて編曲したりとか。
その頃は別として、昨今古楽演奏が普通になって、埋もれた作品もたくさん演奏されるようになったのに、ヘンデルの場合「メサイア」があるばかりに?それに集中しがちなのが残念なんですよ。
(アマチュア合唱の演奏もしかり・・・)

>サウル
ヤーコプス盤はギリギリ2枚に納まってるので、好きですが・・・ひょっとしてカットがあるんでしょうか?
私も(現状では)「メサイア」の次は、「サウル」がイチオシだと感じます。
REIKO
2009/02/13 19:45
おととい、テレビ番組でパレスチナ問題に関連するイスラエルの解説が放送されていましたが、ヘンデルの曲の件はあまり触れませんでした。
やっぱり、期待は禁物だったのかなぁ?
ことねっち
URL
2009/02/15 21:56
ことねっちさん、
>ヘンデルの曲の件はあまり触れませんでした
いわゆる「クラシック音楽」の番組以外では、ヘンデルの「メサイア」以外のオラトリオ(オペラも)に言及されることは、まずないと思いますよ。
REIKO
2009/02/16 04:45
こんにちは。
 REIKOさんのヘンデル祭を紹介する記事をブログに書こうと思い、ユーチューブの動画を色々と見てみました。使ってみたい、あるいは使える動画はほとんどありません。「ヘンデル何でも掲示板」で少し著作権について触れられていましたが、「市販CD音源に画像をくっつけただけ(?)と思われる投稿」ばかり。

 しかし、一つだけオラトリオ「エジプトのイスラエル人」のCD用の演奏録音の録画(http://www.youtube.com/watch?v=mRS-zDKaFUE&feature=channel_page)
がありました。これは権利者自身がプロモーション用にアップロードしているようなので使えるなと思いました。
しかし、考えてみると、ガザでのハマスとイスラエルの軍事衝突の直後という非常に微妙な時期ゆえ、紹介をあきらめざるをえませんでした。

 旧約聖書は、ユダヤ教徒、キリスト教徒、そしてイスラム教徒の聖典でもあります。旧約聖書は、彼ら、イスラム教徒のいうところの「経典の民」にとって、けっして数千年前のできごとではなく、現在に密接に関係し聖典でもあります。


pentahydroborite
URL
2009/02/22 17:08
↑の「経典の民」は「啓典の民」が正しい表記でした。失礼しました。
pentahydroborite
URL
2009/02/22 17:36
pentahydroboriteさん、
>ガザでのハマスとイスラエルの軍事衝突の直後という非常に微妙な時期ゆえ

そうなんですよ・・・(サムソンで)「ガザの神殿を壊して多数のペリシテ人を殺し、イスラエル万歳!」とか、(ユダス〜で)「シリアと戦ってエルサレムを奪還してイスラエル万歳!」とかって、内容的にちょっとマズイんですよね。
こういう状況だと、(ヨーロッパならなおのこと)この種のオラトリオはやりにくいと思います。
実演が少なければ、レコーディングも増えません。
「メサイア」が、当たり障りなく便利なのは確かですね。
REIKO
2009/02/23 01:13

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