ヘンデルのオラトリオ「サムソン」(Samson 1743年初演)は、旧約聖書の「士師記」第13〜16章に出てくる、怪力サムソンの最期を扱っています。 「士師」とは、まだイスラエルに王がいなかった時代に、イスラエルの民を導き敵から救済する、神に選ばれた指導者のことです。 やはりヘンデルがオラトリオを書いている、デボラ(←女性です!)やエフタも、士師でした。 怪力サムソンと美女デリラの恋愛、そしてその顛末は、サン=サーンスのオペラにもなっています。 しかしヘンデルの「サムソン」では、彼が怪力を失い牢に閉じ込められた所から始まります。 つまり一連の物語のうち、後半だけを扱ってるんですね。 ですがそれ以前のサムソンを知っていないと、彼の無念さも最期の大逆転!も実感しにくいので、今回は聖書一のマッチョ男・サムソンの、豪快なエピソードを紹介します。 サムソンはダン族(イスラエルの12部族の1つ)のマノアという男の息子で、生まれながらのナジル人(びと)でした。 ナジル人とは「神に捧げられ、聖別された人」・・・と書くと、さぞかし品行方正かと思いますが、それは大きな誤解。 以下、聖書によれば・・・ ★ 宿敵ペリシテ人の娘に惚れたサムソン、両親と共に彼女の家に挨拶に行く途中、襲ってきたライオンを素手で引き裂いた! ★ 婚礼の宴会で客に出したクイズで、賞品の服を調達するために、何の関係もない30人の人を殺して、服を剥ぎ取った! ★ ペリシテ娘の父親とケンカして怒り、300匹のジャッカルの尾に松明をくくりつけ、火をつけてペリシテ人の畑に送り込んで、焼け野原にした! ★ 捕らえられ、ペリシテ人に突き出された時、縄を霊力で焼き切った後、落ちていたロバの骨を振り回して、千人を打ち殺した! ・・・・・いくら当時、イスラエルがペリシテ人の支配に苦しんでいたとはいえ、これじゃサムソンて、単なる無差別殺人鬼ですよね? 当然ながらペリシテ人達は、何とかサムソンをやっつけたい、と思い始めます。 無敵のサムソンでしたが、彼にも弱点がありました。 それは女! サムソン、今度はデリラという美女に惚れます。 そこでペリシテ人の領主達はデリラに、「サムソンをたぶらかして、怪力の秘密を探り出してくれ。上手く行ったら、銀貨千百枚!」と持ちかけます。 ところがこのデリラも、顔はいいけど頭は悪いのか(笑)、直接サムソンに「あなたを縛って無力にするには、どうすればいいの?」と聞く始末。 サムソンはその度に「乾いていない新しい弓弦(ゆみづる)7本で縛れ」「髪の毛を織機の縦糸と共に織り込め」などなど、適当な嘘で答えます。 しかし、言われた通りにやっても、少しもサムソンを無力にできません。 デリラは「どうして本当のことを教えてくれないの!私を愛してるなんて嘘なんでしょう!ひどいわ!!私をこんなに苦しめて!!!」と、毎日毎夜しつこくサムソンに迫ります。 そして、愛する女の執拗な懇願に、耐え切れなくなったサムソン、ついに怪力の秘密をしゃべってしまいます。 それは・・・・・・ 神に捧げられているナジル人は、頭にカミソリを当ててはいけない約束があります。 生まれた時から伸ばし続けている、サムソンの長い髪・・・これを切れば、彼の怪力はどこへやら、並の人間になってしまうのでした。 デリラは、サムソンが膝枕で眠っている隙に、人を呼んで彼の髪を剃らせます。 そして、やって来たペリシテ人達に向かって行ったサムソンは・・・いつもの怪力を全く発揮できずに、いとも簡単に縄で縛られてしまったのでした。 しかも、両目をえぐり出されるオマケ付き! こうして盲目となったサムソンは、ペリシテ人の街ガザに連れられて行き、牢屋に放り込まれたのです。 ああ哀れ、怪力サムソン・・・以下、次回に続く♪ |
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REIKOさんの記事はほんとにいつも楽しくて面白いです〜。息子に読ませてやりたい! |
Mev 2009/10/23 15:12 |
Mevさん、 |
REIKO 2009/10/24 18:22 |
REIKOさんの語り口だと、昔の取っ付きにくお話も、とても興味深く知ることが出来ます。 |
golf130 2009/10/25 11:53 |
golf130さん、 |
REIKO 2009/10/26 12:13 |
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