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三宅洋平「選挙フェス」とは何だったのか? 密着した監督が語る
インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:永峰拓也(2015/06/29)
2013年7月に行われた参議院選挙に立候補し、音楽と演説を融合させた街頭ライブ型政治演説、「選挙フェス」が大きな話題を呼んだミュージシャン・三宅洋平。彼の選挙戦に密着したドキュメンタリー映画、その名も『選挙フェス!』が7月4日より公開される。17日間26か所に及ぶ過酷な選挙戦を記録したのは映画監督・杉岡太樹。三宅の音楽のファンでありながらも、「なぜ政治の世界へ向かうのか理解できなかった」と一度は撮影の依頼を断り、あらためて資金援助を一切受けないアウトサイダーとして映画製作を申し込んだ。
同作をじっくり見れば、三宅が最も訴えたかったのは政策的な主張よりも、異なる考えを持つ人同士のコミュニケーションの問題だということが見えてくるだろう。三宅は、なぜ音楽家として選挙活動に参加するほどの強いモチベーションを持つようになったのか? そして杉岡は、ときに煩悶しながらもなぜ三宅を最後まで撮り続けようと思ったのか? 杉岡に話を聞くうちに、二人が自らに課したアーティストとしての責任と、思想も職業もとっぱらった直感的な哲学が浮かび上がってきた。
杉岡太樹(すぎおか たいき)
1980年神奈川県生まれ。01年より渡米、School of Visual Arts(ニューヨーク)にて映画製作を学ぶ。第84回アカデミー賞ノミネート作品の『もしもぼくらが木を失ったら』や、日米で異例のヒットとなった『ハーブ&ドロシー』などの制作・配給に参加。2010年より拠点を東京に移し、”脱原発デモ”の萌芽を追ったドキュメンタリー『沈黙しない春』で2012年に長編映画デビュー。現在、ブラインドサッカー日本代表チームを追った次回作を制作中。
「三宅洋平の出馬は、正直ちょっと嫌だった」。それなのに映画を撮った理由
2013年7月の参議院選挙。東日本大震災から2年が経過し、「原発再稼働」が大きな争点となったあの選挙において、一人のミュージシャンが立候補し、大きな話題を呼んだことを覚えている人は少なくないだろう。三宅洋平、当時34歳。バンド「犬式」のボーカルとして、『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演するなど活躍し、2010年からは「(仮)ALBATRUS」で活動している三宅は、緑の党からの推薦を受け、全国比例区より立候補。音楽と演説を融合させた街頭ライブ型政治演説を「選挙フェス」と称し、全国ツアーを敢行した。あれから2年、三宅の選挙戦に密着したドキュメンタリー映画『選挙フェス!』が公開される。この作品の最大のポイントは、「三宅洋平のPRのために撮影された映画ではない」ということだ。
本作で監督・撮影・編集を務めたのは、三宅より1歳年下の杉岡太樹。2001年より渡米し、ニューヨークで映画製作を学んでいた杉岡は、もともと音楽好きだったということもあり、YouTubeで見た犬式のライブ映像で三宅の熱さに衝撃を受け、ファンになったのだという。2010年に拠点を東京に移すと、脱原発デモを追った長編デビュー作『沈黙しない春』を2012年に劇場公開。この撮影の途中で偶然三宅と出会い、親交を深めていた彼のもとに、三宅から「選挙戦をドキュメントしてほしい」という依頼が届く。
杉岡:もともと三宅さんの音楽が好きだったので、自分を必要としてくれたことに関しては、素直に嬉しく思いました。ただ、三宅さんの出馬に関しては、正直ちょっと嫌だなって思ったんです。せっかく音楽がいいのに、つまんなくなっちゃうんじゃない? とも感じて。僕自身も脱原発デモの映画(『沈黙しない春』)を撮った後だったし、できれば次は政治から離れて、エンターテイメント的な作品を撮りたかったんですよね。
政治に関わると、がっかりすることばかりなのか?
そもそも杉岡はこれまで政治自体に深くコミットしていたわけではなく、今回の撮影をする以前は、比例代表の仕組みも、衆院選と参院選の明確な違いすらわかっていなかったという。日本に帰国した直後に自民党から民主党への政権交代が起こるも、すぐにバッシングにさらされ、元に戻ってしまうという一連の流れを見て、日本人の政治意識に絶望したという経験も大きかったそうだ。
杉岡:政治に関わると、がっかりすることばっかりなんですよね。原発デモの映像を撮ってるときも、石原(慎太郎)さんが都知事選で圧勝したり。でも、僕はそういうときに怒れないんですよ。みんなは「FUCK石原」とか言ってたけど、僕は彼を支持してる人がいるっていう事実をまずは受け入れないとダメだと思った。その人たちとも関わって、自分が見えてない部分を見て、彼らが見えてない部分を見せる作業をしないと、何も変わらないから。
―1つの方向を主張するんじゃなくて、いろんな声を聞いて繋ぎ合わせて、調和させていくことが大事だと。
杉岡:そういう態度って歯切れが悪いし、何も考えてないって思われがちなんですけどね。でもそれが自分の譲れないところだし、三宅洋平と一致するところでもあったんです。彼は、主張が相反するとしても「安倍(晋三)さんのことも否定したくはない」って平気で言っちゃう。それはかっこいいなって思った。だから、彼をPRするわけじゃなくて、あくまで自分らしい映画を作ることで、彼を「応援」できればいいなって思ったんです。
これを見て、「やっぱり三宅洋平のことが嫌いだ」と思うならそれはそれでいい
結果的に杉岡は「チームの一員として記録映像を撮ってほしい」というオファーを断り、「資金援助は一切受けずに、アウトサイダーとして選挙に密着させてほしい。どんなにカッコ悪くても、都合の悪いことでも、それが事実なら撮らせてもらいたい」と代替案を提示した。
杉岡:そもそも「選挙をフェスにするってどうなの?」とか、彼に対する批判ってすごく多いわけじゃないですか? 僕も彼のTwitterやFacebookを見ると、「またこんなこと言ってるよ」って理解に苦しむこともよくあるんですけど、実際に接する三宅洋平はなんて言ったらいいか、もっとチャーミングだから、SNSの三宅洋平像とかなりギャップがあるんですよね。だから、僕が映画を作ることで、そこをいい方向に持っていけるんじゃないかと思ったんです。僕は三宅洋平のことを嫌いな人の気持ちもわかるし、誤解されてる姿もわかるから、そういう自分が「これが『選挙フェス』だったんだ」ってありのままに提示して残すことには意味があるなって。これを見て、「やっぱり三宅洋平のことが嫌いだ」と思うならそれはそれでいい。でも、彼を嫌いになって、彼のしたことを忘れてしまう前に、僕が映像で関わる余地があるなって思ったんですよね。
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