【ソウル=加藤宏一】韓国の輸出が落ち込んでいる。原油価格が下落するなか、中国など新興国景気の減速や通貨ウォンの対円、対ユーロ相場の上昇なども影響。1~6月の輸出額は前年実績を下回り、韓国の代表産業の石油製品や自動車などが前年実績を下回った。輸出減に伴い設備投資や生産も冷え込む。国内総生産(GDP)の4割超を占める輸出の低迷は当面続くとみられている。
産業通商資源省によると、1~6月の輸出額(速報)は前年同期比5%減の2690億ドル(約33兆円)だった。アジア市場の指標となる中東産ドバイ原油のスポット価格が前年同期に比べて4割以上落ち込むなか、石油製品などを中心に輸出単価が下落。6月単月では前年同月比1.8%減と下げ幅が縮まったが、依然マイナスが続く。
中国やロシアなど世界景気の鈍化も韓国の輸出に影を落としている。国別では、輸出全体の4分の1を占める中国向けが2.5%減となり、昨年以降の鈍化傾向が続く。景気低迷が鮮明なロシアは62.9%減と大幅減。日本は18.3%減、欧州連合(EU)は14.0%減といずれも2桁減となった。
ウォンの円やユーロに対する上昇などが響き、自動車は前年同期の3.8%増から6.2%減に転落した。日欧勢が価格競争力を高めるなか、小型車の輸出比重も高まったこともあり、輸出価格が下落。現代・起亜自動車グループで目立った新車の発売が無かったことも響いた。
円安の悪影響は建設機械など機械類でもみられ、中国市場での日本勢との競争で不利に働いている。中国勢の供給過剰や鉄鉱石など原料価格の下落を受けて鉄鋼製品は6.2%減。平面ディスプレーは中国の現地生産の拡大やLGグループがプラズマパネル事業から撤退したこともあり、10.8%減。繊維類もベトナムなどの生産拡大による価格競争激化のあおりをうけて2桁減になった。
輸出の落ち込みから生産や設備投資も盛り上がりに欠ける。統計庁によると、鉱工業生産指数や設備投資は5月まで3カ月連続で前月比マイナスが続いている。企業が輸出で稼いだ金額を内部留保として積み増している。内需の伸び悩みから輸入は大きく落ち込み、1~6月の貿易収支は467億ドルの黒字と過去最大を記録した。
韓国貿易協会の6月の調査によると、7月以降も輸出の停滞が続く見通しだ。自動車は現代自などの新車発売を受けて上向く見通しだが、家電や機械類、化学製品の落ち込みが続くとみられる。
韓国政府は近く輸出の活性化策をまとめる方針だ。新たな市場に輸出する企業を念頭に、政府系銀行を通じた資金支援の検討に入った。
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