英語圏のニュースで歌舞伎という言葉が使われている理由
英語圏のニュースでは、This is now political kabuki theater. などのフレーズを耳にします。タイトルを見れば分かる通り、この kabuki は日本語の「歌舞伎」からきています。実は、英語圏で kabuki は比喩としても使われているのです。
英語圏の人の多くは本物の歌舞伎を観たことがありませんが、彼らにとってのイメージは、不思議な化粧をした俳優が舞台の上で叫んだりオーバーな動きをしているというものでしょう。化粧こそしていないものの、アメリカの議会では情熱的な演説をしている議員が多くいるので、これらが当てはまります。演説の内容が重要なことや納得出来ることならば良いのですが、そうでない場合よく political kabuki といわれます。つまり、 political kabuki は「芝居がかった政治」といったニュアンスでしょう。
たとえば、昨年アメリカとカナダを結ぶ「キーストンXL」という石油パイプラインを作るかどうかという議論がありました。アメリカの共和党の議員はキーストンXL建設計画を承認する法案を成立させたかったのですが、政治的抵抗が大きすぎたので拒否権が行使されました。それなのに、その後もキーストンXLについて情熱的に演説をした議員たちがいたので、彼らの演説は political kabuki と言われたのです。
政治についてのサイト Politico には、民主党のある議員が述べた以下のことが書かれていました。
Now that President Obama has said he will veto the latest attempt by Republicans to approve the Keystone pipeline, Keystone is now just political Kabuki theater.
オバマ氏は共和党がキーストン・パイプラインの法案を通過させることに対して拒否権を行使すると言いましたので、もうキーストンについての論議はただの歌舞伎です。
また、リーマンショックの時期には、ニュースなどで It’s like kabuki theatre! という表現をよく耳にしました。今回のギリシャの債務危機問題でも、kabuki が使われています。先日CNBCのニュースで、経済学者はギリシャの債務危機について以下のことを述べていました。
This is not a Greek tragedy. It’s Kabuki.
これはギリシャ悲劇ではなく、歌舞伎だ。
みなさんは、この kabuki という英語の使い方に対してどう思いますか?歌舞伎が好きな方も興味のない方もいると思いますが、これは日本の伝統芸能の歌舞伎に対して侮辱的な英語だと思う方もいるでしょう。しかし実際に歌舞伎が好きなネイティブは、この表現を使わなそうですね。
コメント
私の印象ですが、英語圏の人って日本語をネガティブな意味で使うことが多い気がします。ポジティブなのは「カワイイ」くらい…?
「ニンジャ」もネット上でアメリカ人が使ってるのを見ていると、「変わった人」という意味で使われていたりします。
今回の「歌舞伎」もそうですが、
まぁどうぜ日本語が分からない外国人同士で使う分には
「勝手に使ってればいいんじゃない?」と思う反面、
「まともに知りもしない単語を堂々と使うなよ」と、微妙に不愉快という何とも中途半端な感情を抱いてしまいました(笑)