神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線下り「のぞみ225号」(16両編成)の車内で6月30日、火災が発生した。乗客の男性が1号車で油のような液体をかぶり、火をつけたという。男性は焼身自殺をはかったとみられている。
報道によると、油のような液体をかぶって火をつけたとみられる71歳の男性は死亡。また、乗客の50代女性も煙を吸って死亡した。そのほかに、1〜65歳の乗客ら26人も煙を吸うなどして重軽傷を負い、うち7人が入院した。新幹線の車内で火災が起きるのは初めてで、新幹線内で起きた事件・事故で最悪の被害になったという。
神奈川県警は男性が焼身自殺を図ったとみて、殺人と現住建造物等放火の疑いで捜査していることが報じられているが、周りを巻き込むような自殺は犯罪なのか。また、死亡していたとしても法的責任を問うことはできるのだろうか。刑事事件にくわしい冨本和男弁護士に聞いた。
●放火の故意があったと考えられる
「そもそも、日本では自殺を処罰する法律はありません。したがって、自殺すること自体は犯罪ではありません」
冨本弁護士はこのように述べる。では、周りを巻き込むような形で自殺をした場合、どのような罪になるのだろうか。
「走行中の新幹線の車内で火災を発生させたということですから、現住建造物等放火罪(刑法108条)にあたる可能性があります。
新幹線車両のような閉じた空間で、揮発性の高い液体を被って火を付ければ、車両に燃え移ることは想定できます。
男性がまいたとされている『油のような液体』が揮発性の高いガソリンなどであった場合、少なくとも車両に燃え移っても構わないと考えていた、つまり、放火の故意があったと考えられます。
また、火災によって、他の乗客が死亡したり、負傷したりしたという点については、少なくとも、傷害罪や傷害致死罪にあたる可能性があります。
場合によって、周囲を巻き込んで煙や火で死者が出ても構わないと認識していた、つまり殺意があったとして、殺人に問われる可能性もあると思います」
容疑者が死亡してしまった場合、どんな手続きが待っているのだろうか。
「死者に刑事罰を科すことはできませんので、容疑者が死亡している場合は、不起訴となります。
容疑者が死亡したときは、適法に刑事裁判をする条件(訴訟条件)を欠くことになるからです(刑事訴訟法339条4号参照)。
具体的には、検察官が『被疑者死亡』の主文で不起訴裁定書という文書を作成し、不起訴処分にします。
ただし、容疑者の財産を相続した遺族が民事上の賠償責任を負う可能性はあると思います」
冨本弁護士はこのように述べていた。
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