箱根山噴火:浅間山などの研究者が気象庁の対応疑問視
毎日新聞 2015年07月01日 10時30分(最終更新 07月01日 11時34分)
100年以上も噴火がなかった箱根山の大涌谷周辺で30日、「ごく小規模な噴火」が確認された。気象庁は前夜に観測した降下物を「噴火ではない」と説明しており、浅間山や草津白根山を研究対象とする群馬県内の火山学者からは、対応を疑問視する声が挙がった。【尾崎修二】
気象庁は29日夜、「大湧谷周辺で新たな噴気孔を発見し、ここから土砂が噴き上がった。現時点で噴火ではない」と発表した。大涌谷の北1・2キロで白っぽい粉状の降下物▽マグマや熱水の動きを示す火山性微動▽神奈川県箱根町湯本で震度1の地震−−などを観測。気象庁の基準では「固形物が噴出場所から水平または垂直に100〜300メートルの範囲を超えた」時を噴火と定めているが、火口外の土砂が噴き上げられたとして噴火とは認めなかった。
これに対し、浅間山にも詳しい群馬大の早川由紀夫教授(火山学)は「気象庁自らが決めた基準に反した判断だった」と批判。浅間山では16日朝、火口から約4キロ離れた施設職員が微量の降灰を確認したと通報し、気象庁は1時間以内に「噴火した模様」と第1報を打った。早川教授は「今回はあまりに慎重すぎた」と対応の違いに違和感を覚えたという。
気象庁火山課の担当者は毎日新聞の取材に対し「29日の現象は噴火だった」と認めた上で「地震計にも変化が少なく噴火ではないと判断した。今回は判断が微妙になるほどの小さな噴火だったと思ってほしい」と説明した。
今後、浅間山や草津白根山が噴火した際、気象庁と専門家の判断に大きな齟齬(そご)が生じれば、自治体や住民に混乱が生じる恐れもある。東京工業大草津白根火山観測所の寺田暁彦講師(火山物理学)は「大涌谷の『噴火』は規制区域外へ被害が及ぶものではなかった。しかし激しい群発地震が続き、火山灰が断続的に降る状況で『噴火ではない』と言われた地元住民の困惑は想像に難くない。気象庁は早く正確に把握し、伝えることも重視してほしい」と述べた。