共通目的委員会が審議し策定する共通目的事業について、さらに説明する。
SARVHが受け取る補償金のうち、返還請求基金、管理手数料を控除した額の20%を「共通目的基金」として権利者のための事業に使うことが著作権法に定められている(第104条の八第1項)。
補償金制度では、デジタル方式の特定機器、特定記録媒体の購入者から包括的に支払われた補償金を製造業者を通じてSARVHが受け取り、権利者に分配されることになっているが、この「共通目的基金」はSARVHに不参加の個々の権利者すべてを把握し、補償金を分配することが困難であるため、権利者全体に共通する有意義な事業を行なうことを趣旨として設けられたものである。
共通目的基金から支出し実施する事業を「共通目的事業」と総称し、各事業については共通目的委員会で実施計画を審議することとしている。
(著作権等の保護に関する事業等のための支出)
第104条の八第1項
指定管理団体は、私的録音録画補償金の額の二割以内で政令で定める割合に相当する額を、著作権及び著作隣接権の保護に関する事業並びに著作物の創作の振興及び普及に資する事業のために支出しなければならない。
返還委員会は、特定機器等の購入者から補償金の返還請求があった場合の審査等を行なうが、どのような場合に返還請求ができるか説明する。
著作権法では、特定機器等の購入者はその特定機器、特定記録媒体を私的録画のために使用する可能性がきわめて高いことを前提として、あらかじめ補償金を製品購入の際に購入者が支払うことを義務づけている。しかしながら、この特定機器等を私的使用を目的とした録画には使わなかった場合には、補償金の返還を請求できることを定めている(第104条の四第2項)。返還請求ができる場合は、特定機器等購入の際の領収書、特定機器等を私的使用を目的とした録画には一切使わなかったことを証明する説明の文書を付して補償金の返還を請求できる。
返還の請求があれば、返還委員会で返還することが妥当であるかなどの審査をするが、どのような説明内容がその証明になるのか、また請求者の請求理由がおそらく一様ではないだろう、などの点から個別に審査することになる。
SARVHでは、この規定により返還請求があった場合の取り扱い基準として「私的録画補償金返還基準」を定めている(本ホームページ中に掲載)。
(私的録音録画補償金の支払の特例)
第104条の四第2項
私的録音録画補償金を支払った者は、指定管理団体に対し、その支払に係る特定機器又は特定記録媒体を専ら私的録音及び録画以外の用に供することを証明して、当該私的録音録画補償金の返還を請求することができる。
SARVHは、補償金を受ける権利を有する者のために、その権利を行使することを目的とする団体(第104条の二第1項)であり、補償金の分配はSARVHの最も重要な業務である。
購入者が支払った補償金は、返還請求対応のための基金(還付引当基金)、管理手数料(SARVH運営費)補償金収入の20%以内、共通目的基金同じく20%を除き、各権利者団体に分配される。分配される補償金を「分配基金」という。
(私的録音録画補償金を受ける権利の行使)
第104条の二第1項
第30条第2項の補償金を受ける権利は、私的録音録画補償金を受ける権利を有する者のためにその権利を行使することを目的とする団体であって、(中略)私的録音録画補償金の区分ごとに全国を通じて一個に限りその同意を得て文化庁長官が指定するものがあるときは、それぞれ当該指定管理団体によってのみ行使することができる。
分配基金から補償金の分配を受ける権利者団体とその分配割合等については、「補償金分配の流れ」で述べる。
補償金制度と補償金の額について、購入者に補償金の支払いが義務づけられていることから、広く一般に周知することがSARVHの業務上の規程に定められており、このためSARVHは制度施行当時から各メディアを通じて、制度の広報を積極的に行なっている。また、著作権情報誌「くれあとーれ」発行(無料配布、随時発行)や、テレビ雑誌を中心に週刊誌、月刊誌、地方紙等に制度と額の公示を集中的に掲載するほか、各権利者団体の協力を得てポスターの掲示、各団体の機関紙、関連出版物に記事、広告を掲載、平成19年度からは各地の映画館で制度の広報ビデオを上映している。
また、前述のように、製造業者団体にも特定機器の取扱説明書やカタログ等に、特定記録媒体の場合は製品の裏面に、それぞれ補償金制度について簡単な説明を表示するよう協力を依頼、製造業者からは「この製品には著作権法の定めにより、私的録画補償金が含まれています」、「私的録画補償金の問合せ先(SARVH電話番号)」を記載するなどの協力を得ている。