補償金の対象となる録画機器と記録媒体は、政令(著作権法施行令)によって指定される。これらの特定機器等は、下記のとおり。
録画機器 | 記録媒体 | |
---|---|---|
(1) | DVCR (デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー) | 磁気テープ |
(2) | D-VHS (データ・ビデオ・ホーム・システム) | 磁気テープ |
(3) | MVDISC (マルチメディア・ビデオ・ディスク) | 光ディスク |
(4) | DVD-RW (デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル) | 光ディスク |
(5) | DVD+RW (デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル) | 光ディスク |
(6) | DVD-RAM (デジタル・バーサタイル・ディスク・ランダム・アクセス・メモリ) | 光ディスク |
(7) | Blu-ray (ブルーレイ・ディスク・レコーダー) | 光ディスク |
注1:(1)、(2)は平成11年(1999年)7月1日指定
注2:(3)~(6)は平成12年(2000年)7月21日指定
注3:(3)は平成12年12月末に製造中止
注4:光ディスクはDVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW、DVD-RAM、Blu-rayDiscの6種で、補償金対象の光ディスクは「録画用」または「for Video」と表示されているものに限られ、「データ用」または「for data」は指定から除外
注5:デジタル・ビデオ・カメラと撮影用媒体は指定から除外
注6:(7)は平成21年(2009年)5月22日指定
個人的に使用することを目的として録画した場合、補償金の権利者への支払い方法は次のようになる。
各製造業者が政令で指定された補償金対象製品を出荷する際、定められた計算方法で算出された補償金をあらかじめ製品に上乗せする。購入者は販売店で製品を購入することによって補償金を支払うことになる。各製造業者は製品にかけられた補償金を半期ごとに計算し、製造業者団体(電子情報技術産業協会、日本記録メディア工業会)は、補償金を集約してSARVHに支払う。製造業者は補償金の支払いの請求および受領に関して協力しなければならないことが義務付けられている(第104条の五)。
補償金は、国内製造業者の製品だけでなく、輸入製品(特定機器等と同じ機能を持つ製品)についても補償金の対象になる。この場合は、輸入業者は指定管理団体(SARVH)に補償金の支払いに協力する義務を負う。(SARVHは補償金の支払いの協力をしている輸入業者と協定を締結)
(製造業者等の協力義務)
第104条の五
指定管理団体(SARVH、sarah)が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造または輸入を業とする者は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない。
著作権法では、「補償金を受ける権利を行使できるのは、文化庁長官から指定された指定管理団体であり、指定管理団体は私的録画補償金の額を定めて文化庁長官の認可を受けなければならない。認可申請の際は、あらかじめ製造業者等の団体の代表の意見を聴かなければならない。」との趣旨を定めている(第104条の六第1項、第3項)。補償金の額を定める場合は、実際には権利者団体が製造業者団体の意見を聴き、意見調整をした上で合意を得ることが必要である。
SARVHは両者の合意を受けて、文化庁長官に認可を申請、文化庁は文化審議会著作権分科会に諮り、その承認を得て長官名で補償金の額を認可する。
(私的録音録画補償金の額)
第104条の六第1項
指定管理団体が私的録音録画補償金を受ける権利を行使する場合には、指定管理団体は、私的録音録画補償金の額を定め、文化庁長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
第104条の六第3項
指定管理団体は、(中略)支払いの請求をする私的録音録画補償金に係る第1項の認可の申請に際し、あらかじめ、製造業者等の意見を代表すると認められるものの意見を聴かなければならない。
文化庁長官により認可されている「私的録画補償金規程」では、補償金の額は特定機器、特定記録媒体ともに基準価格(製造業者、輸入業者が国内で最初に流通に供した際の価格)の1%で、備考規程で次の算出方法によることもできるとされている(いずれも場合も消費税別)。
以上の算出方法は、私的録画補償金制度施行日の平成11年(1999年)7月1日から適用されている。補償金額を改定する場合は、「今後の情勢の変化を踏まえて」SARVHは製造業者側の意見を聴くことにしている。
なお、特定機器にはオープン価格製品が増えているが、オープン価格の場合、カタログ表示価格のある自社または他社のほぼ同等の製品の価格を参考にして補償金の額を計算している。
特定記録媒体の場合は、カタログ表示価格が平成13年9月に廃止されているため、カタログ価格が設定された場合の仮の価格を想定し、それを基にして計算する方法を採用している。
因みに、平成16年度からの録画機器1台、記録媒体1枚あたりの平均補償金単価は以下のとおりである。(消費税を含む。)
(消費税を含む)
年度 | 録画機器1台あたり | 記録媒体1枚あたり | |
---|---|---|---|
平成19年度 | 上期受領分 | 342.3円 | 1.40円 |
下期受領分 | 320.9円 | 1.40円 | |
平成20年度 | 上期受領分 | 420.3円 | 1.19円 |
下期受領分 | 393.9円 | 1.19円 | |
平成21年度 | 上期受領分 | 381.4円 | 1.10円 |
下期受領分 | 386.0円 | 1.11円 | |
平成22年度 | 上期受領分 | 490.3円 | 1.05円 |
下期受領分 | 501.2円 | 1.11円 | |
平成23年度 | 上期受領分 | 478.7円 | 0.92円 |
下期受領分 | 484.8円 | 0.86円 |
録音録画を行なう人が補償金を個別に支払うことは実際にはできないため、補償金制度では、各製造業者が製品を出荷する際、先に述べた算出方法による補償金額を上乗せし、製品を販売店に卸す。購入者は販売店で補償金が含まれた価格で製品を購入、これにより購入者、権利者へ補償金を支払ったこととなる。各製造業者はあらかじめ上乗せした補償金を出荷台数ごとに集計、製造業者団体を通じてSARVHに支払い、SARVHは権利者団体に分配するとともに補償金の一部(2割)を著作権制度普及のための事業に支出している。
(私的録音録画補償金の支払いの特例)
第104条の四 第1項
第30条第2項の政令で定める機器又は記録媒体を購入する者は、その購入に当たり、指定管理団体から、当該特定機器又は特定記録媒体を用いて行う私的録音録画に係る私的録音録画補償金の一括の支払として、第104条の六第1項の規定により当該機器又は特定記録媒体について定められた額の私的録音録画補償金の支払の請求があった場合には、当該私的録音録画補償金を支払わなければならない。
SARVHは製造業者2団体に、デジタル録画機器、記録媒体の政令指定製品について、利用者が該当の製品を購入する際、価格に補償金が含まれていることを表示するよう協力を要請、加盟各製造業者の協力により製品取扱説明書、製品カタログあるいは製品パッケージには、「あなたが録画したものは個人で楽しむなどのほかは、著作権法上権利者に無断で使用できません。この商品の価格には、著作権法の定めにより私的録画補償金が含まれております」との内容が記載されている。また、補償金に関する問い合わせ先として、SARVHの電話番号も合わせて記載されている。
外国製品を輸入する業者にも同様表示の協力を要請している(補償金支払いの協力をしている輸入業者の製品には、販売業者氏名と住所、問合せ先電話番号等が記載されている)。