SARVH [社団法人 私的録画補償金管理協会]



私的録画補償金制度のすべて

2. なぜデジタルが対象なのか

では、アナログ方式が無償なのに、なぜデジタル方式では有償なのか。

文化庁は、私的録音録画補償金をデジタル方式の録音録画機器と記録媒体を用いて行なう場合に限定した理由について、著作物の利用という観点から理論上デジタルとアナログを区別する理由はないが、

  1. デジタルは、アナログに比べ高品質の録音録画が可能であり、また複製しても劣化が少ないことから、権利者の被る不利益が大きいこと
  2. 著作権審議会第10小委員会の報告書において、ユーザーや製造業者等の理解や協力を得て制度を導入することを考慮し、デジタル方式のものに限定することが望ましいとしていること
  3. 平成3年(1991年)12月以来行なわれていた関係者の協議においても、デジタル方式のものに限り制度を導入することが了承されていたことから、現行の制度が導入されたところである

との見解を述べている。

つまり、デジタル方式の技術は優れた特性を有し、複製してもオリジナルと同様の著作物をつくることができるため、アナログのように「自由かつ無償」のままであれば権利者の権利保護の観点から見過ごすことはできない、そのために私的録音録画補償金制度を定めたというものである。この制度により権利保護と録音録画の私的使用とのバランスを図ろうという趣旨である。

また、著作物を利用する上では、アナログについても理論上補償金の対象になり得るとしても、現実的な観点から言って、すでにアナログ方式の録音録画機器、記録媒体が広く一般に普及していることから、アナログの録音録画機器、記録媒体を補償金の対象に入れることは、社会的影響が大きいことも対象をデジタルに限定した理由であっただろう。

3. 私的録画補償金対象の著作物はテレビ番組

私的録画補償金は、映像の著作物が録画されることを前提として権利者に支払われる。一般的に個人が映像の著作物を録画する場合の対象は、通常テレビ番組であり、もう一つはDVD等のビデオソフトである。しかし、DVDソフト等は、ソフトを製作する関係権利者団体が作品を保護するために「コピーガード」、つまり録画されないよう技術的措置を施しているので、観る(再生する)だけである。このため、個人が私的使用を目的として録画する著作物の対象は事実上テレビ番組になり、したがって、テレビ番組にかかわる権利者に対して補償金が支払われることになる。前に述べたように、テレビ番組については、だれの許諾を得ずに録画することができるが、この意味で「自由」であり、補償金の支払いにより「有償」である。

平成18年(2006年)6月~7月にかけてSARVHが国内一般ユーザーを対象に、DVDレコーダーなどデジタル録画機器を使って最近1年間にテレビ番組をどの程度録画しているかについて実態調査を行ったが、それによると、調査対象の約96%が録画経験ありと答え、その録画頻度は「ほとんど毎日」が約32%と最も多く、「週に2~3回ぐらい」(約30%)、「週に1回ぐらい」(約20%)までの回答を合わせると約82%、「1ヶ月に1回ぐらい」を含めると、録画する人は約93%になる(有効回答2,378)。
この数字は、毎日のテレビ番組の録画が日常的に行なわれ、同時にテレビ番組が身近な存在になっていることを示しているといえる。

一方、この調査でデジタル方式の録画に権利者への補償金支払いの必要性についてたずねたところ、全体の約48%が必要と回答、補償金の支払い方法では【1】「購入する製品(機器・媒体)価格に比例した額を支払う仕組み」が72%と最も多く、【2】「録画時間に比例した額を支払う仕組み」が34%、【3】「番組単位で支払う仕組み」が約45%で、現行制度が支持されている(複数回答での順位)。

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