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十 ピエロ男事件
「出川少年を誘拐した岡田の行方を、目下全力を挙げて捜査中であります」
勝村警視は織田原に説明した。
「岡田がどこに住んでいたのか、知っている人間はいないのですか?」
「それが誰にもわからないのです。岡田は週に一度、古田家の脇に古ぼけた軽トラックを停め、ピエロの仮装をしてクマの形をしたピンクの風船と綿菓子を配っていました。風船を膨らませるときに眼を見開いて変な顔をしてみせるので、岡田は子供たちに大変人気がありました。この間の水曜日、いつものように岡田はやって来て、帰っていきました―いや、正確に言うと、帰ったかのように見せかけたようです。その午後の夕方頃、古田家の近所の相馬家の裏庭には、相馬とテッド牧師がいたのですが、相馬が庭の木のてっぺんに岡田の風船が引っかかっていることに気づきました。風のない穏やかな日だったので、自然に飛んでいかないだろうと、相馬はアルミ脚立をとってきて木によじ登りました。ゆうに五メートル以上の高さがある木のてっぺんまで登ると、古田家の三・五メートルの堀越しに隣家を見渡せます。その風船をようやく枝からはずしたときに、相馬がチラリと古田家の庭を見たら、そのピエロ男が出川少年を軽トラックに乗せて走り去るのを目撃したそうです。相馬はテッド牧師に今見たことを話しましたが、出川少年が行方不明だと知るまで、二人ともそれがたいして重大な事件だとは思っていなかったそうです。そして昨日のことです。出川少年を身代金目的に誘拐犯から、また連絡するという電話を、出川少年の父親が受けました」
勝村警視は説明を終えた。
「んー、今聞いた説明から推理すると、誘拐されたのは……出川少年とピエロ男の二人でしょう! 間違いありませーん」
名探偵織田原は言った。
問十 どうして織田原は二人とも誘拐されたと推理したのでしょうか?
(制限時間1分間の推理をして下さい。答えは下記の通り)
正解十
何も起こっていない誘拐事件現場の目撃情報の信憑性を高めている。
相馬が何も知らないテッド牧師を利用していることに織田原は気づいたのです。
木によじ登る口実をつくるために、木のてっぺんに風船を引っかけたのは、明らかに相馬の仕業です。
風のない穏やかな日に、息で膨らませた風船が五メートル以上の高い木のてっぺんまで飛んでいくはずはありません。
織田原任三郎でした……。
「えー読者の皆さん。果たして何問正解できましたでしょうか? 私はいつもこんな事件現場に遭遇します。正直、少し疲れました…。読者の皆さん、しばしのお別れです……。織田原任三郎でした……」
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